黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

軍艦島の建築的装飾 #05

2021-08-09 22:37:54 | 軍艦島(端島)
ほとんど建築的な装飾がみあたらない軍艦島の建物の中で、
かろうじて散見する時代を伝える建築装飾を、
シリーズでお送りしています。



前回は、軍艦島の炭鉱施設に残る建築的な装飾をお伝えしましたが、
炭鉱施設にはもう一つ、顕著な建築的装飾がありました。
それが、新旧の積込桟橋です。

積込桟橋は、接岸した石炭運搬船に、
出来上がった石炭を積み込むためのベルトコンベアの支柱で、
画像の○で囲んだ上のものが、閉山まで使用していた新積込桟橋。
下の○で囲んだものが旧積込桟橋の橋脚です。



旧積込桟橋は1931(昭和6)年に改築されたもので、
新積込桟橋は、戦中に新たに建造されています。
短い期間での造り直しは、
戦時増産による運搬船の大型化や、
規模の拡大によるものだったのではないでしょうか。

いずれにせよ、
両方とも昭和初期から戦中にかけて建造されているので、
似たような装飾が施されています。



画像は、下の○で囲った位置にある旧積込桟橋。
アーチ状に施行された部分の中央に、
太い畝と細い畝の2種類の幅で調子をつけた、
幾何学的なレリーフが見て取れます。



そしてこちらは上の○で囲った位置にある新積込桟橋。
旧桟橋とほぼ同じレリーフで、その数だけが違います。
柱の太さを比べてもおわかりのように、
新桟橋のほうがやや大きなサイズで建造されているようで、
アーチ幅も少し広いので、レリーフの数も多めです。

新旧ともに一見小さそうに見えますが、
右端に写る埋め込み梯子のサイズからおわかりのように、
上部1/3で人の身長くらいの高さがあり、
レリーフも目の前で見るとかなり迫力があります。



現在は、桟橋の基礎がよく見えますが、
操業時は桟橋の上にベルトコンベアがあり、
さらに石炭を運搬船へ積み込む巨大なディストリビューターが載っていて、
桟橋の基礎はほとんど見えませんでした。
そんな目立たない位置にも装飾的なアプローチをしているのを見ると、
やはりこの時代、ちょっとした飾りを施すことが、
いかに習慣のようになっていたかがわかります。


最新の画像もっと見る

post a comment