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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

勝俣元会長ら東京電力の経営陣3人強制起訴。その有罪の可能性は。

2015年08月01日 | 福島原発事故

 

 東京電力福島第1原発の事故をめぐり、東京第五検察審査会は2015年7月31日、東電の勝俣恒久元会長(75)ら3人について、業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴すべきだとする2度目の議決を公表しました。

 今後、裁判所が指定する検察官役の弁護士が3人を起訴し、いよいよ刑事裁判が始まります。

 もちろん、福島原発事故の責任が、刑事裁判で問われるのは初めてです。

 これまで刑事的には不問に付されてきた東電に司法のメスが入ることに快哉を叫んだ方も多かったのではないでしょうか。

 東電・勝俣元会長ら幹部3人「原発事故」で強制起訴 「市民の正義が勝ち取った」

 

 

 日本の刑事訴訟法では、検察庁に起訴するかどうかを判断する絶対的権限を与え(起訴独占主義)、しかも、被疑者に嫌疑があっても起訴しないという不起訴の権限を与えています(起訴便宜主義)。

 これは人民裁判を避け、また刑事裁判にかけられること自体が非常に重い負担なので、起訴まではしないという判断を検察に委ねるものです。

 ところが、これに例外を設けたのが強制起訴制度です。

 強制起訴制度と言うのは検察官の不起訴処分に対し、11人の市民からなる検察審査会が、

「起訴すべきだ」

と2度にわたって議決した場合、被疑者が強制的に起訴される制度です。

 起訴すべきだと議決するには、審査員11人のうち8人以上の賛成が必要で、助言役として弁護士が立ち会います。

 市民感覚を反映させる司法制度改革の一環で2009年5月に始まりました。

 ちなみに起訴するのは、裁判所から選任された「指定弁護士」で、裁判ではこの弁護士らが検察官役として立証も担います。

 

 

 私はと言えば。

 そもそも、検察審査会の強制起訴制度には基本的に反対です。

 これまで強制起訴された12件の刑事裁判で有罪になったのはわずか2件。検察でも起訴しない事件が有罪になることはまれです。10件もの無実の人が刑事裁判にかけられた事実は重いです。

 また、まさに内閣総理大臣に手がかかっていた小沢一郎元民主党代表が、奇しくも同じ東京第五検察審査会強制起訴されて、事実上政治家生命を絶たれたのと同じように(これも後に無罪)、政治的陰謀によるものや、市民による人民裁判の様相を呈することもあります。

 ですから、検察庁が起訴すべきものは起訴し、起訴すべきでないものは起訴しないと信頼できれば、検察審査会の強制起訴制度は有害無益です。

小沢氏無罪確定 「国民の生活が第一」は石原・橋下新党「俺様が第一」よりは2万パーセントましだ

 

 

 しかし、そんな信頼ができるのか。

 今回の東電の歴代経営者たちの起訴を見ると、強制起訴制度が有用な場合もあるのかなと、正直迷いが出てきました。

 東京地検は市民らの告発に対して、2013年9月に3人を不起訴としましたが、2014年7月に審査会が「起訴相当」と議決し、2015年1月に地検が再び不起訴としたため、審査会が2度目の審査をしてきました。

 あれだけの事故を起こし、福島を日本を世界を汚染し、何兆円、何十兆円と言う損害を与え、故郷を追われて今も福島県民だけで11万人もの人が避難しているのに、東電は我々の税金で生きながらえています。

 これについて誰も刑事責任を取らないのはおかしすぎるという感覚も、また常識的なものだと感じるからです。

南相馬市の93歳の女性 原発事故悲観して自殺 「さようなら 私はお墓にひなんします ごめんなさい」

原子力損害賠償支援機構法成立 国民が電気料金と税金で東電の賠償金を支払う最悪のシナリオ 

原子力損害賠償支援機構に東電24億円、全電力会社で70億円出資 いずれは10兆円を全国民が負担

東京電力は損害賠償を消費者に肩代わりさせて資産を出し惜しみしている

東電の第三者調査委員会報告書の結論は「原発再稼働・電気代値上げしてでも東電・メガバンクを救済せよ」

 

 

 今回の検察審査会の議決は

「原発事故は取り返しがつかない。勝俣元会長らは『万が一』にも備えておかなければならない高度な注意義務を負っていた」

と指摘し、東電が事故前に15・7メートルの津波を試算していたことを

「絶対に無視できないもの」

として、原発事故は予測できたとしています。

 そのうえで、審査会は試算をもとに

「原発の運転停止を含めた対策を講じていれば、事故は回避できた」

と結論づけました。

 また審査会は議決で

「安全より経済合理性を優先させ、発生する可能性のある災害に目をつぶって、何ら対策を講じようとしなかった東電元幹部らの姿勢について、適正な法的評価を下すべきではないか」

とも言っています。

 

 

 では、今回の刑事裁判で、3人の経営者に対して有罪判決が出るかというと、なかなか微妙です。

 確かに、東日本大震災で起きた津波以上の津波を、東電が震災の3年前に試算していたのは事実で、これに対処しなかったのは完全に東電の怠慢、ミスです。

 私もこのことは原発事故直後から何度も書いてきました。

 そして、世間では一般に津波で福島原発の全電源が喪失し、これによって冷却機能が停止し、水素爆発を起こしたり、原子炉がメルトダウンしたのだと思われていますが、本当は津波が来る前に大地震の揺れだけで全電源が喪失した可能性が高いことが知られています。

 地震が原因なら全国の全原発が危険なことがはっきりするので、電力会社・保安院・原子力安全委員会がこのことをひた隠しに隠したのです。

福島原発事故 冷却機能停止→炉心溶融・メルトダウン 原因は津波ではなく地震 受電鉄塔倒壊と復水器停止

東日本大震災 福島原発事故は天災じゃなくて人災1 官業癒着 原子力安全保安院幹部まで天下り

東日本大震災 福島原発事故は天災じゃなくて人災2 東京電力・経産省も知っていた大津波

東京電力 15メートルの津波を2008年に試算 「想定外」ではない 福島原発事故は天災じゃなくて人災3

 

 

 

 しかし、勝俣元会長ら経営者3人が問われるのは、東京電力と言う会社全体の過失責任ではなく、あくまで個人の過失です。

 すると、彼ら個人が、

1 地震や津波で今回の原発事故を予測できたこと(予測可能性)

2 その結果を自分の努力で回避できたこと(結果回避可能性)

という条件があったのに、予測せず、結果を回避しなかったということが過失=注意義務違反の前提として必要になります。

 結果回避可能性の要件クリアの方がまだできそうです。地震や津波が来ても大丈夫なように対策を練ること、それが無理なら原発を停止させ、廃炉にすればよかったとさえいえるからです。

 しかし、あの地震や津波が来ることや、それであの事故が起こることを具体的に予見することが可能だったか。。。。

 この予見というのは、何か事故が起こるかもしれないという抽象的な恐れの気持ち(危惧感)では足りず、実際に起きた「あの事故」を具体的に予想できたかという要件とされているので、ここの立証が難関です。

 

 

 

 私が個人的に思うのは、事故後の対応に過失があったという方が、立証が容易ではないかということです。

 それも、東電・保安院・原子力安全委員会・経産省・文科省・菅首相や枝野官房長官などの官邸に、事故処理の過失があるのではないかと思うのです。

 たとえば、東電が正確な情報を官邸に上げなかったこと、その後の放射能漏れも隠したこと、文科省が放射性物質が飛ぶ方向がわかっているのにその情報を住民に伝えなかったとか、保安院らが用意していたヨウ素を配布しなかったことなど、もうめちゃめちゃ「ミス」(むしろ、故意に近い重過失)があったと思うのですよ。

 これらの件をあわせて起訴したらいいのにと思います。

 それでも有罪に出来るかは予断を許しませんが、これくらい嫌疑濃厚なら不当起訴とは到底言えません。

 検察官役の指定弁護士が有罪判決を取り切るのも非常に難しいけれども、不可能ではありません。

 是非、刑事裁判の舞台で彼らの悪行を暴いてほしいものです。

政府は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算結果を米軍だけに伝えていた!

原子力安全委員会と保安院の犯罪 90万人分のヨウ素剤が使われないまま福島の子ども達に甲状腺ガンの危険

福島原発事故の放射能で国民を殺すのは官邸ではなく官僚だ 米国の放射線実測図を文科省と保安院が放置

この人の責任も重い。

 

 

全電源喪失の記憶――証言・福島第1原発――1000日の真実
共同通信社原発事故取材班 (著), 高橋 秀樹(編著) (著)
祥伝社

最新刊。

震災から4年が経過し、災害の記憶が風化しつつある今こそ、事故を振り返る証言資料を残す作業が必要だ。
本書では、事故対応にあたった当事者たちの貴重な実名証言によって、3月11日から15日にかけて福島第1原発が全交流電源を喪失した、緊迫の5日間の様子を明らかにしてゆく。
朝日新聞「吉田調書報道」を打ち砕いた、現場記者の綿密な取材による詳細な事実の描写は、他の類書の追随を許さない、本書最大の特色である。


東電株主代表訴訟 原発事故の経営責任を問う
河合 弘之 (著), 小石 勝朗  (著), 木村 結 (著), 浅田 正文 (著)
現代人文社

福島原発事故に関して、経営陣は大事故に結びつく多くの警告を無視した。
しかし、誰一人としてその責任をとっていない。
東電株主が、5兆5045億円の賠償を経営陣に求める株主代表訴訟を提起した。
本書は、その訴訟の内容や狙い、背景を紹介する。 

 

 

時効になる前に、保安院や経産省などの役人も告発したらどうかな。

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毎日新聞 2015年07月31日 20時54分(最終更新 08月01日 00時55分)

 東京電力福島第1原発事故を巡り、東京第5検察審査会が東京電力の旧経営陣3人を「起訴すべきだ」とした議決の要旨は次の通り。

 ◆予見可能性

 原発事故が深刻な重大事故、過酷事故に発展する危険性があることに鑑み、その設計においては当初の想定を大きく上回る災害が発生する可能性があることまで考え、「万が一にも」「まれではあるが」津波、災害が発生する場合まで考慮して備えておかなければならない。このことは原子力発電に関わる責任ある地位にある者にとって、重要な責務といわなければならない。

 政府の地震調査研究推進本部(推本)の長期評価が、大規模な津波地震が発生する一定程度の可能性を示している以上、それを考慮しなければならないことは当然である。それに基づきグループ会社の東電設計が算出した最大値で高さ15.7メートルという津波の試算結果は、原子力発電に関わる者としては絶対に無視できない。

 試算結果は少なくとも福島第1原発の建屋が設置された敷地を超えて浸水する巨大な津波が発生する可能性が一定程度あることを示している。そして東京電力自体が過去に2回の浸水、水没事故を起こしている。推本の長期評価、東電設計の試算結果を認識する者にとっては、巨大な津波が発生し、重大で過酷な事故につながることについて具体的な予見可能性があったというべきである。

 2008年3月18日に東電設計の試算結果が出され、その後も地震対応打ち合わせが回を重ね実施されていることからすれば、勝俣恒久・元会長と武藤栄、武黒一郎の両元副社長の3人は同日以降のいずれかの時点で、推本の長期評価とそれに基づく試算結果について報告を受けていることが強く推認される。

 勝俣元会長は報告を受けていない旨供述するが、地震対応打ち合わせは勝俣元会長への説明を行う「御前会議」とも言われ、津波対策を講じるには少なくとも数百億円以上かかる可能性があり、最高責任者である勝俣元会長に説明しないことは考えられない。

 3人には報告を踏まえ、敷地を大きく超える津波が「万が一にも」「まれではあるが」発生することについて具体的な予見可能性があり、最悪の場合、重大事故、過酷事故が発生することについて具体的な予見可能性があったというべきである。

 ◆結果回避可能性

 推本の長期評価に基づき東電設計で試算結果が出されて以降、福島第1原発では何らかの津波対策を検討する必要性が生じていた。適切な津波対策を検討している間に、福島第1原発の敷地を大きく超える津波が発生して原発が浸水してしまう可能性が一定程度あったといえる以上、被害を避けるために適切な津波対策を検討している間だけでも福島第1原発の運転を停止することを含めたあらゆる結果回避措置を講じるべきだった。

 福島第1原発は日本で最も津波に対する余裕が少ない原発だった。東京電力では推本の長期評価、それに基づく試算結果を踏まえ、既に敷地から約10メートルとなる防潮堤を設置する対策案は上がっており、今回のような規模の地震、津波についても浸水を回避することは十分可能だった。

 当時の東京電力には今回の事故のような非常時に対応するマニュアル等が存在しなかった。大きな地震やそれに伴う大きな津波が発生する可能性が一定程度あったにもかかわらず、それに目をつぶって無視していたに等しい状況である。

 適切な安全対策を検討し、その間だけでも運転停止を含めた合理的かつ適切な津波対策が講じられていれば、いつ今回の地震と同規模の地震、津波が発生しても今回の事故のような重大事故、過酷事故の発生は十分に回避することができた。3人には結果回避可能性があり、結果回避義務が認められる。

 検察官は当時の状況で運転停止はできなかったと考えているようである。しかし、ひとたび発生すると取り返しのつかない事態になる原発事故では何の説得力も感じられない。

 運転停止を含めた対策を講じることはできなかったとの主張は、津波によりひとたび原発に重大事故が発生すると、放射性物質の大量排出による周辺地域への放射能汚染を招き、ついには人類の種の保存にも悪影響を及ぼしかねない事態に至ってしまうという事柄の重大さを忘れた、誤った考えに基づくものと言わざるを得ない。

 甚大な被害を及ぼした結果から振り返って思うのは、安全対策よりも経済合理性を優先させ「万が一にも」「まれではあるが」発生する可能性のある災害について予見可能性があったにもかかわらず、それに目をつぶって何ら効果的な対策を講じようとはしなかった東京電力の3人の姿勢について適正な法的評価を下すべきではないかということである。

 ◆被害者

 建屋の爆発によりがれきに接触するなどして負傷した東京電力の関係者及び自衛官等13名の負傷は事故との因果関係が認められる。双葉病院に入院していた患者44人は、長時間の搬送、待機等を伴う避難を余儀なくされ、既往症を悪化させ死亡したと認められ、被害者とするのが相当。

 

東電元会長ら3人強制起訴へ 検察審査会議決

7月31日 17時55分 NHK
 
東電元会長ら3人強制起訴へ 検察審査会議決
 
福島第一原子力発電所の事故を巡って、検察が不起訴にした東京電力の元会長ら旧経営陣3人について、東京第五検察審査会は「大きな地震や津波の可能性があったのに目をつぶって何ら効果的な対策を講じようとしなかった」などとして2回目の審査でも「起訴すべきだ」と議決しました。
 
これによって元会長ら3人は業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになり、未曽有の被害をもたらした原発事故の刑事責任について今後、裁判で争われることになります。
 
福島第一原発の事故を巡って、東京地方検察庁はおととし、福島県の住民グループなどから告訴・告発を受けた東京電力の旧経営陣など30人余りについて、全員を不起訴にしました。

これに対し、東京第五検察審査会は去年7月、東京電力の旧経営陣のうち、勝俣恒久元会長(75)、武黒一郎元副社長(69)、武藤栄元副社長(65)の3人について、「起訴すべきだ」と議決しましたが、東京地検が再び不起訴にしたため、強制的に起訴すべきかどうか改めて審査を進めてきました。

その結果、市民から選ばれた11人の審査員のうち、8人以上が賛成し、勝俣元会長ら3人を「起訴すべきだ」と議決しました。議決の中で検察審査会は「元会長ら3人は原発の安全対策に関わるものとして津波による事故が『万が一にも』『まれではあるが』発生した場合にも備えなければならない責務がある」としています。

そのうえで「平成20年に東京電力が15.7メートルの高さの津波をみずから試算していたことは絶対に無視することはできず、災害が発生する危険を具体的に予測できたはずだ」と指摘しました。

そして「大きな地震や津波の可能性が一定程度あったのに、目をつぶって無視していたのに等しい状況だった。適切な対策を取っていれば、今回のような重大で過酷な事故の発生を十分に避けることが可能だった」と結論づけました。

また、今回の議決では当時の東京電力の姿勢について「安全対策よりも経済合理性を優先させ何ら効果的な対策を講じようとはしなかった」と批判しています。

この議決によって元会長ら3人は検察官役の指定弁護士により業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されることになりました。未曽有の被害をもたらした原発事故の刑事責任について、今後、裁判で争われることになります。

東電社長「コメントは差し控えたい」

東京電力の廣瀬直己社長は「原発事故によって多くの皆さまにご迷惑、ご心配、ご不便をかけ、大変申し訳なく思っています。検察審査会の議決に私どもからコメントすることは差し控えたい。東京電力としては、引き続き福島の復興に向けて廃炉や汚染水対策、賠償や除染などの取り組みを全力で進めていきたい」と述べました。

福島県知事「当時の状況など後世に残すべき」

福島県の内堀知事は「検察審査会の判断なので、コメントは差し控えたい。ただ、福島県は原子力災害の影響で、今も復興に向けて多くの課題を抱えている。東京電力は廃炉や汚染水対策をしっかりと進め、県民の安全と安心を最優先に対応してもらいたい」と述べました。

そのうえで内堀知事は3人の旧経営陣について、「原発事故当時の状況やそれまでの安全対策がどうだったのか、後世に残すことが重要だ」と述べました。そして「2度と福島第一原発のような事故を起こさないように、東京電力は事故の責任者として、しっかりとした対応を今後ともしていく必要がある」と述べました。

検察幹部「過失に対する考え方違う」

捜査に関わった検察幹部は「1回目の議決があったので、今回の議決に特に驚きはない。津波の予見可能性など過失に対する考え方が検察審査会と検察では全く違うと感じた。『万が一』や『まれではあるが』発生するものにまで備えておく必要があるならすべての重大な事故で責任者の過失が認められることになるのではないか」と話しています。

別の検察幹部は、
「検察審査会の判断は尊重されるべきだが、災害をきっかけにした原発事故で個人の刑事責任が問われることには違和感を感じる。過失が問われた裁判ではこれまでも具体的な予見可能性が必要とされ検察としてすべき捜査は尽くしたが、震災後の市民の判断はそれとは違うのだろうと感じた」
と話しています。

また、別の検察幹部は「市民感覚ではあれだけの被害をもたらした原発事故にここでピリオドを打つわけにはいかないという受け止めなのだろう。検察審査会が市民を代表して判断した以上裁判の行方を見守るしかない」と話しています。

 

 

毎日新聞 2015年07月31日 22時21分(最終更新 07月31日 22時27分)

東京電力の旧経営陣3人について「起訴すべきだ」とした東京第5検察審査会の議決を受け、記者会見する告訴団の(左から)河合弘之弁護士、武藤類子団長、海渡雄一弁護士=東京都千代田区で2015年7月31日午後2時32分、喜屋武真之介撮影
東京電力の旧経営陣3人について「起訴すべきだ」とした東京第5検察審査会の議決を受け、記者会見する告訴団の(左から)河合弘之弁護士、武藤類子団長、海渡雄一弁護士=東京都千代田区で2015年7月31日午後2時32分、喜屋武真之介撮影
 

 2011年の東京電力福島第1原発事故を巡り、東京第5検察審査会は31日、東京地検が2度にわたって容疑不十分で不起訴とした東京電力の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣3人を、業務上過失致死傷罪で起訴すべきだとする「起訴議決」を公表した。審査を申し立てた「福島原発告訴団」の被災者らメンバーは午後2時過ぎ、検察審査会の入る東京・霞が関の東京地裁前で「市民の正義」と書かれた旗を掲げ「やっとここまで来た」と喜んだ。

 武藤類子団長(61)は続いて開いた記者会見で「裁判で事故の真実が明らかにされ、正当な裁きが下されることを信じている」と声明を発表。「今も仮設住宅から家に帰れない人がいる。(旧経営陣には)裁判で包み隠さず真実を語ってほしい」と力を込めた。

 弁護団の河合弘之弁護士は「事故がなぜ起きたのか。検察の不起訴で永久に闇に葬られるところを、何とか市民の正義感が防いだ」と強調した。海渡雄一弁護士は東電が経済事情から津波対策を先送りにしたと議決が指摘した点などを「非常に論理的」と評価した。

 福島県庁でも告訴団のメンバー8人が会見した。副団長の佐藤和良さん(61)が議決要旨を読み上げると、涙を流す人もいた。佐藤さんは「事故から4年半たち、ようやく事故の原因と責任を特定するための土俵に立てた」と感慨深げに話した。自営業の人見やよいさん(54)は「原発を再稼働しようとしている電力会社は、事故を起こせば刑事責任を問われるという覚悟を持ってほしい」と訴えた。【平塚雄太、近松仁太郎、土江洋範】

 ◇検察審査会は社会常識に照らして適切な認定

 元検事で原発事故捜査を研究している古川元晴弁護士の話 検察は「原子力ムラ」の論理で旧経営陣の過失を否定したが、検察審査会は社会常識に照らして判断し、適切な認定をした。10メートルを大きく超える津波の対策を講じなかった経緯について、当時の科学的知見を踏まえ詳細に認定しており説得力もある。原発事故では取り返しのつかない被害が発生する。万が一を想定して対策を講じるのが当然で、検察は市民の判断を重く受け止めるべきだ。命に関わる重大事故では、責任の所在を曖昧にしてはならない。国民が納得する判決を期待したい。

 ◇無罪判決が言い渡される可能性も

 過失論に詳しい池田良彦東海大教授(刑事法)の話 刑法上の責任を問うには、津波による重大事故の予測がどこで具体的になったかを立証しなければならない。福島で起きたことは誰も経験したことがない未知の事故だった。後付けの理屈で起訴議決が導かれた感は否めず、無罪判決が言い渡される可能性もあるのではないか。日本では事故原因を解明する調査と、刑事責任を問う捜査が同時並行で進むが、組織の幹部に刑事罰を科すことが社会の安全につながるとは思えない。手厚い民事賠償で責任を取らせる制度の創設を検討すべきだ。

 ◇妥当な判断、司法の場で真相や証言を明らかに

 福島第1原発事故で政府の事故調査・検証委員会メンバーだった吉岡斉・九州大教授(科学史)の話 (強制起訴は)妥当な判断だ。政府事故調の時は、東電社内の詳細なやりとりは不明のままで、もっといろいろな幹部が関与している可能性もある。司法の場でそうした真相や証言が明らかにされることを期待する。

 

 

2015.7.31 22:12

【東電旧経営陣強制起訴へ】
有罪は高いハードル

東京電力の勝俣恒久・元会長、武藤栄・元副社長、武黒一郎・元フェロー(左から)

東京電力の勝俣恒久・元会長、武藤栄・元副社長、武黒一郎・元フェロー(左から)


 検審の起訴議決により、東電旧経営陣3人の刑事責任の有無は法廷で審理されることになった。ただ、強制起訴の有罪率は検察官による起訴に比べ低い上、多くの人が死傷した大型の過失事件では無罪が相次いでおり、有罪へのハードルは高いとみられる。

 過去に強制起訴された事例は8件。有罪となったのはうち2件のみで、兵庫県明石市の歩道橋事故や尼崎市のJR福知山線脱線事故などの過失事件では無罪や免訴が相次いでいる。

 強制起訴で無罪が相次ぐ理由は、起訴の基準が、プロである検察官と、一般国民からなる検審とで異なるためだ。検察官は「高度の有罪が見込まれる場合」にのみ起訴するのに対し、検審は「少しでも有罪の可能性があれば起訴して裁判で判断されるべきだ」と考える傾向がある。

「刑事裁判でこそ真相解明がなされる」との考え方も起訴議決の背景にあるとみられるが、一方で、「検察官が起訴を見送った人をいたずらに刑事被告人とし、負担を与えている」「刑事裁判の目的は個人責任追及であり、真相解明効果は限定的だ」などとの批判的な指摘もある。

 

 

東電強制起訴へ 「法を守ってきた」勝俣元会長ら経緯陣の事故責任とは?

産経新聞 7月31日(金)22時21分配信 

 強制起訴により東京地裁で行われる東電旧経営陣の裁判では、福島第1原発を襲った津波被害を予見できたか否かが最大の争点となる。

 「私も会社も法を守り、地震などの知見にも目を光らせてきた。あれだけの津波が来ることは想定していなかった。規制や安全対策を深めていく考え方が足りなかったのが反省材料だ」

 勝俣恒久元会長は3年前に会長を退任する際、産経新聞のインタビューにこう答えていた。

 想定を超える津波への対策については「さまざまな情報があり、科学者によって考え方も違う。すべてを設備に反映していくのは無理だった」と主張した。

 しかし、平成23年3月の原発事故後、相次いで公表された政府、国会、民間などの事故調査委員会の各報告書では、経営陣の安全対策の不十分さを糾弾する記述が並んだ。

 国会事故調は、事故原因を「何度も地震・津波のリスクに警鐘が鳴らされ、対応する機会があったのにもかかわらず、東電が対策をおろそかにしてきた点にある」と指摘した。

 事故は、海面から高さ10メートル地点にあった福島第1原発が、想定していた5・7メートルをはるかに超える14~15メートルの津波に襲われ起きた。全交流電源を喪失し、燃料の冷却ができず、発生した水素で建屋が爆発、放射性物質をまき散らした。

 ただ大津波が「想定外」とまで言い切れるかどうか。

 国の地震調査研究推進本部は14年、「三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8・2前後の地震が発生する可能性がある」との知見を公表。これを受け、東電内部では20年の時点ですでに「福島沖で同規模の地震が発生した場合、福島第1原発に15・7メートルの津波が到来する」との試算を得ていた。

 14年から20年まで社長を務めた勝俣氏に、こうした津波の予見可能性や安全対策に責任があるかどうか。国会事故調の聴取には「対応は図れたかもしれない。その情報が止まっていた」と強調。津波対応については土木学会に検討を依頼していたことなどを明らかにしており、こうした対応の正当性が裁判で問われることになる。(原子力取材班)

 

 

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2 コメント

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うーん、難しい…(困) (リベラ・メ)
2015-08-01 16:25:53
有罪判決の可能性は、正直微妙だと私も思います。僅かな可能性に賭けるとしたら、“事故後の”対応でしょう。ただ、その賭けも勝ち目は…。ちょっと…。
返信する
微妙 (たも)
2015-08-02 14:12:58
有罪判決は微妙ですねえ。
でも勝俣をはじめとした東電の歴代の取締役たちは全員私財を今も避難生活を強いられている被災者の方達に差し出すべきだと思います。
返信する

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