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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

東日本大震災 福島原発事故は天災じゃなくて人災2 東京電力・経産省も知っていた大津波

2011年04月26日 | 福島原発事故

 

「想定外」という言葉ほど、最近、いらつくものの言い方もありませんよね。「ただちに」健康に影響を及ぼすものではない、といい勝負です。

想定していなかったことが起こったから自分の責任じゃないといいたいのでしょうが、そもそも、現実に起こってしまった、起こりうる事態を、想定していなかったこと自体が重大な過失だとは思わないのでしょうか。

まして、実際には「想定外」の事態が、予測され、想定されていたとしたら。

地震のエネルギーに関しては1万年単位で起こった地震を想定していると豪語する東電が、1000年単位で起こっている大津波を知っていながら備えをしていなかったとは。

燃料や廃棄物の積み卸し、冷却水の処理などさまざまな事情から海岸地帯に集中している日本の原発。どうして、大津波に備える設備投資くらいしなかったのか。東海大地震が予想されている静岡県にある浜岡原発など、対策が不十分であることは当然「想定」しうるところです。

 


 

浜岡原発で中部電力の想定を上回る津波の恐れ

2011年4月20日 日経BPネット

中部電力は、想定・東海地震、東南海地震、南海地震が3連動する場合、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)における想定・津波高を8m程度としてきた。しかし、その一方で、「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクト」が、すでに、「3つの地震が数分~数十分の時間差を置いて連動発生した場合には、浜岡原発付近の想定・津波高が11m程度に達する」という研究結果を公表していた事実が明らかになった。


 

想定外の大津波「50年以内に10%」 東電06年発表

2011年4月24日8時5分 朝日新聞

 東京電力は、福島第一原発に、設計の想定を超える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、2006年に国際会議で発表していた。東電は「試算の段階なので、対策にどうつなげるかは今後の課題だった」と説明している。東電原子力・立地本部の安全担当らの研究チームは福島原発を襲う津波の高さを「確率論的リスク評価」という方法で調べ、06年7月、米国であった原子力工学の国際会議で報告した。

 その報告書は「津波の影響を評価する時に、『想定外』の現象を予想することは重要である」と書き始められている。

 報告書によると、東電は慶長三陸津波(1611年)や延宝房総津波(1677年)などの過去の大津波を調査。予想される最大の地震をマグニチュード8.5と見積もり、地震断層の位置や傾き、原発からの距離などを変えて計1075通りを計算。津波の高さがどうなるか調べた。

 東電によると、福島第一原発は5.4~5.7メートルの津波を想定している。だが報告書によると、今後50年以内にこの想定を超える確率が約10%あり、10メートルを超える確率も約1%弱あった。報告書は「想定を超える可能性が依然としてある」と指摘。「津波について知識が限られていることや、地震のような自然現象にはばらつきがある」ことを理由にあげている。

 確率で原発の危険度を評価する方法は、地震の揺れが原因になるものは実用化されているが、津波についてはまだ基準が決まっていない。一方で、東電は、地震の規模を最大でも東日本大震災の約5分の1として予測しており、「10%」でも過小評価だった可能性がある。報告書について東電は「津波の評価法を検討するための試算段階のもの。まだ広く認められた方法ではないので、公表は考えていない」と説明する。

 また、設計の想定を最大5.7メートルと決めた根拠について、東電は「社内で経緯などを整理しているところ」として明らかにしていない。(木村俊介)

 

 

レベル7の「原発震災」 予想された「想定外」 科学技術過信の果て  

 毎日新聞 2011年4月18日 東京夕刊

(前略)石橋氏は旧建設省建築研究所室長などを経て、阪神大震災の翌96年から08年まで神戸大で教えた。地震に伴う原発事故と通常の震災が複合する「原発震災」を97年から警告し続け、07年の新潟県中越沖地震で東電柏崎刈羽原発が被災してからは、「原発震災の危険性が一層高まった」と指摘していた。しかし、その主張は聞き入れられず、「原子力村」の住人らが「仮想事故」と呼んでいた事態は「現実」となってしまった。(中略)

 

東北沖の巨大地震については、実は2年前の09年夏、原発の耐震・構造設計に関する経済産業省の審議会で、取り上げられていたのだ。独立行政法人・産業技術総合研究所は、869年に起きた貞観地震について調査・研究し、M8級以上で津波による浸水も宮城から福島まで広範囲に及んだことなどが分かった。審議会では産総研活断層・地震研究センター長の岡村行信氏が、貞観地震の「再来」を考慮すべきだと主張したが、「まだ十分な情報がない」とする東電側の反応は鈍く、実際に対策に生かされることはなかった(後略)

 

 

巨大津波を予測していた男-活断層・地震研究センターの宍倉博士

ウォールストリートジャーナル日本版 2011年 4月 11日  9:21 JST         

(前略)

西暦869年の貞観地震に伴い発生した津波は死者1000人を出したとされる。宍倉博士は、同じ地域で後年もう一つの津波が発生した有力な痕跡を発見した。恐らく西暦1300年と1500年の間に発生した津波だ。 そこで宍倉博士と同僚らは2010年8月、論文を発表し、「近い将来に再び(同様の津波が)起きる可能性を否定できない」と警告した。この論文は同氏の勤務する独立行政法人産業技術総合研究所・活断層・地震研究センター(つくば市)の発行する機関誌に掲載された。 

 宍倉博士はこれを警告するための広報活動を始めていた。活断層・地震研究センターでは、どの地域が津波リスクがあるかを人々に理解させるため地図を配布する計画が立案されていた。3月23日には、福島県の当局者を前に研究成果を説明する予定だった。 宍倉氏の上司で活断層・地震研究センター長の岡村行信博士は09年、福島原発の安全性を討議する公式委員会の席上、この研究結果に言及していた。岡村博士によれば、津波対策強化の考え方は実行に移されなかったという。  

(後略)

 


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4 コメント

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役に立ちました!!! (学生)
2011-08-23 21:47:50
夏休みの課題作文に引用させて頂きました

本当に役に立ちました。

ありがとうございました。
返信する
重要なテーマなので一筆、補足まで (cafe核事故の天災人災論)
2011-08-24 00:07:11
 この天災か、又は人災かというテーマは、天災と人災をそのように定義づけるかによって、異なった解釈が生じてくるので、先ず定義づけを要する課題です。そして、その定義を科学的に行った後で、科学的は論理と方法を、確かめる必要がある。

 なぜなら、科学的検証も、所詮は経験と実験を必須とすうるから、一定の長い年月と体験、及び科学実験を経過しなければ、一定の成果を期待できない。当たり前ですが、科学技術、その社会的な応用工学は、人間社会の公益に利して、人と社会に役立つツール、道具でなければならない。

 すなわち、倫理道徳を前提とするので、この哲学的、歴史的試練を経なければ、人道主義の視点から見て、逆転した発想の結果を齎す。要するに、人間に仇を成すところの、悪魔的な社会的基盤を、成立させることにならざるを得ない。

 福島原発事故の核エネルギー溶融、メルトダウン現象は、将に、この逆転した歴史的、思想的発想の非人道であった。人道、すなわちヒューマニズムに立つ、倫理道徳に基づかないところの、核・原子力・テクノロジー導入を経緯した、不幸な人的ミスの結果でした。

 日本人、日本の学界が、この点について疎かにして来た。

 この度の重大事故の原因でしたが、一般に、この視点を、未だに論議していない。

 このような事故検証を経ないで、依拠する原因の事実関係を、確認できない場合には、再び原発を稼動する時に、次の同じ事故原因に基づく、同様な被曝結果を免れない。

 よって、この間の人災経過を、しっかり捉えて間違いがない再稼動を、次には心掛けることが、絶対条件となるのです。

 このような問題点は、3.11以降、今まで論じられなかった重要事項であり、本件の要件に不可欠なので、念のため一筆まで、、、
返信する
光栄です。 (ray)
2011-08-24 10:17:07
オリンピックは参加することに意義がある。

夏休みの宿題は提出することに意味がある、ということで、もし先生からいい点がもらえなくても、お許しください。
返信する
原発安全性フェールセーフ・コンピューター・ソフトのプログラム検証を従来公表していない! (cafe)
2011-08-24 14:37:26
 原発の稼動には、コンピューターのフェールセーフ、安全性プログラム・ソフト、及びハードの安全装置があって、その上に技術的な安全設計、技術訓練のプログラムを、組み込まれています。

 さらに、このコンピューター・ソフトには、バックアップデータで運転事故を、必ずプログラムに保存する安全体制を採っており、万全を期するので、事故発生と同時に安全性の事故対応措置が、直ちに指揮命令システムに表示されるのです。

 このような安全性の品質管理状況を、実際のデータ資料に基づいて、検証する必要があるけれども、未だに日本の政府、東電などは、故意に公表を阻んで来た。

 この情報未公開に、問題点があるものと考えられまして、その公開を国家賠償法訴訟の公判で、政府、東電に対し開示請求して行くつもりです。

 従来の原発訴訟経緯を調べると、この観点から重要なデータ資料開示を、文書提出命令して来なかった。これでは、安全性の審理に欠陥が生じて、安全管理の違法性を事実認定ができない。
返信する

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