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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

東電の第三者調査委員会報告書の結論は「原発再稼働・電気代値上げしてでも東電・メガバンクを救済せよ」

2011年10月04日 | 福島原発事故

 

 

 東京電力の経営を調査していた政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」(下河辺和彦委員長)は10月3日、委員会報告書を野田首相に提出しました。

 この委員会報告書の言いたいことは

1 原発は再稼働せよ

2 電気代は10%値上げせよ

3 その上、原子力損害賠償支援機構経由で税金も投入せよ

4 その結果、東電は債務超過にならないので東電の株主(メガバンク・生保)と債権者(メガバンク・生保)は損しなくて良い

というものです。

 この人達、誰のために第三者として調査したんでしょうか。

二重ローン問題解決最大の障害は三井住友 東電賠償スキームはメガバンク救済より送電・発電分割で資産売却


 


 委員会報告書では、福島第一原子力発電所事故の賠償額が今後2年間で約4兆5000億円、毎年9000億円、廃炉費用は1兆1500億円(もっとかかるよ)に上ると試算しました。

 このため、東電は人件費削減と保有不動産などの売却で総額3兆2500億円を捻出し、国の原子力損害賠償支援機構も増資(全国の電気代値上げのお金と税金投入のことです)で東電を公的管理下に置いて支援する方向です。

 報告書は、電気料金の値上げと原発の再稼働がともにできないと2012年度に2931億円の債務超過に転落、その後もできない最悪のケースで(最悪というか、そうすべきでしょう)、東電が8兆6000億円の資金不足となり、今から7年後の2018年度には1兆9800億円もの債務超過になる可能性があると指摘しました(だから原発再稼働して、電気代も値上げせよと言っているも同然です)。

 さらに、電気料金を10%値上げし、原発が再稼働した場合も、2018年度に約7900億円の資金が不足するとしています(だから、もうだめなんじゃん)。

 このため、支援機構からの増資、資金貸し付けなどの資金援助が必要としています(さらに税金投入)。

東京電力3年間値上げを画策 ふざけるな! 悪あがきする東電は破綻処理しかない

東京電力とメガバンクの救済のために、世界一高い電気代がさらに上がることを我慢するべきではない!


(日本の電気代はもう十分高い)

 

 


 ところが、2011年3月末時点では、廃炉費用の上積みなどを考慮に入れても1兆2922億円の資産超過になるため、金融機関への債権放棄要請は「困難」としました。

 下河辺委員長は最後の記者会見要旨にあるように、なぜ銀行に債権放棄を求めないのか、という質問に対して

「委員会の調査で、東電が形式上、債務超過になっていないことを認識せざるを得ない。委員会は正義論を展開するところではない。政府や党が「けじめをつけろ」「道義的な責任を果たせ」と言ったとしても、金融機関だって株主がいるのだから、法律的に最低限の理屈も通らないような話に応じることはできない」

と答えたのですが、正義論や道義論じゃなくて、論理的に言っていることがおかしくないですか?


 

 

 だって、2011年3月末時点って、原発事故起きたばかりなんですから、そんときに債務超過になってるわけないでしょう。逆に、もうそこで経営破綻していたら驚くわ(笑)。それは過去のことじゃないですか。今の経営判断が大事なんです。

 問題はそのあと、東電はどんどん資金繰りが苦しくなり、来年には3000億円も債務超過になることが今からわかっているのに、それを経営破綻と言わずして、「形式的には債務超過ではないから債権放棄は求められない」って、この裁判官出身の委員長は何を言っているんですかね。

 結局、論理的にも法的にもおかしな話になってしまっています。


 この報告書の言っているのは、このまま行けば東電は来年にも債務超過だけど、無理矢理原発再稼働して、電気代値上げして、おまけに国税も投入して、東電が債務超過しないということに無理矢理して、銀行には損はさせないようにいたします、って事でしょう?

 まるっきり、議論が逆さまですよ。メガバンクを救うために債務超過はないという結論にすることが先に決まってしまっています。

  こっちは被曝してるのに、なぜまだ無理な理屈で、電気代や税金で金を出してまで、東電やそこで儲けてきた人たちを救わねばならないんですか。

 


 まず、原発事故を起こした当事者会社なんだから、もう原発は再稼働しないようにするのが大前提。

 しかも、一般消費者に原発事故のつけを払わせるのはおかしいから電気代値上げは絶対避けるべきだし、全国民の血税投入も電気代値上げも論外。

 すると、東電は債務超過になるから、法的整理に入らざるを得ず、これまで東電に投資して儲けてきた株主や債権者には泣いてもらうことになります、というのが筋ではないですか?!

 それは東電や債権者に制裁を科することが目的ではなくて、資本主義や会社法の基本に沿った解決をしようと言うだけの話です。

福島原発事故 賠償基準公表 東電賠償資金は賠償支援機構頼み→全国民の電気代値上げ、税金負担

(国民に対して本当に悪いことをしたと思うなら、これ以上の負担をかけるべきではない)

 


 東電以外の第三者とは銀行のことなのかと思うような、メガバンク救済と原発再稼働という結論ありきの調査報告書で、こんな国民に背を向けて無理を通そうとする第三者機関は有害無益です。

 最初から、原発賠償スキームがメガバンク救済志向で間違っているからこういうことになるんです。

 電気代は上がるわ、増税にはなるわ、原発は再稼働するわ、東電とメガバンクだけ助かるわなんて、馬鹿げた議論は白紙に戻して、すでに経営破綻している会社は粛々と整理したら良いのです。

 そうすれば、発電・配電・送電を分離して売却し賠償金にあてれば、結局、全国における電力自由化、再生可能エネルギーによる発電へのシフトを始められます。

原子力損害賠償支援機構に東電24億円、全電力会社で70億円出資 いずれは10兆円を全国民が負担

(破綻処理しても飛行機は飛び、物は売っている。電力の供給もできる)



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東京電力に関する経営・財務調査委員会の最終会合後、会見する下河辺和彦委員長=内閣府で2011年10月3日午後4時20分、久保玲撮影
東京電力に関する経営・財務調査委員会の最終会合後、会見する下河辺和彦委員長=内閣府で2011年10月3日午後4時20分、久保玲撮影

 東京電力に関する経営・財務調査委員会の下河辺和彦委員長の3日の会見要旨は以下の通り。

 --電気料金についての認識は。

 ◆電気料金を算定する「総括原価方式」は、料金を認可する経済産業省が、これまで審査に(十分に)当たってこなかったことが、結果的に(東電の高 コスト体質として)大きな影響を及ぼしている。原価に盛り込む内容や、その数量が適正かどうかなど、極めて大きな問題を抱えたままだ。

 --委員会報告にあるようなリストラが実行されるなら、政府の支援が可能になるということか。

 ◆報告書に盛り込んだリストラ、資産売却は最低限だ。しかしこれを実現すれば公的支援に道筋はつく。報告書は原子力損害賠償支援機構と東電が共同 で作成する特別事業計画のたたき台となるもので、事業計画ではさらに深掘り、上積みすることで、国民負担を最小化してもらいたい。

 --報告書は原発再稼働を前提にしている。再稼働がなければ電気の安定供給や賠償金支払いは難しいのか。

 ◆報告書は事実を淡々と述べているだけで、再稼働の評価はしていない。

 --なぜ銀行に債権放棄を求めないのか。

 ◆委員会の調査で、東電が形式上、債務超過になっていないことを認識せざるを得ない。委員会は正義論を展開するところではない。政府や党が「けじ めをつけろ」「道義的な責任を果たせ」と言ったとしても、金融機関だって株主がいるのだから、法律的に最低限の理屈も通らないような話に応じることはでき ない。

 --東電に求めることは。

 ◆東電は、我が国の産業経済の根幹を担う電力会社だ。まず、自らが持っているすべての資源を使って、自社のリストラ、効率化にまい進してもらいたい。これまでの地域独占や電気料金制度などを考えれば、東電にはもっと(リストラを)頑張ってもらいたい。

毎日新聞 2011年10月3日 22時57分(最終更新 10月3日 23時01分)

 

 

 

 東京電力に関する経営・財務調査委員会の報告書の要旨は次の通り。

 ◇調査分析結果を受けての意見

 委員会の経費削減では巨額の損害賠償に対応できないため、将来見通しができるまでは東電の経営は原子力損害賠償支援機構の一定の管理下におかれ る。総括原価方式や地域独占の在り方、発送電分離などは見直しが必要。電気料金引き上げ問題については、国民負担の最小化をふまえて検討すべきだ。

 ◇コスト削減

 2020年度までのコスト削減額は約2兆5455億円。人員は13年度末までにグループ全体で約7400人を削減。現役・OBを含めた企業年金の保証利回りの引き下げについては3案を提示し、東電が現在検討中。

 ◇資産売却

 不動産で2472億円、有価証券で3301億円、事業・関係会社では1301億円の売却を見込み、計7074億円。

 ◇廃炉費用

 現時点で算定される福島第1原発1号機から4号機の廃炉費用は総額1兆1510億円。

 ◇賠償額

 現時点で見積もりが可能な賠償額は、13年3月末で約4兆5000億円。

 ◇今後10年の事業計画シミュレーション

 柏崎刈羽原発が再稼働しない場合、約4兆2000億円から8兆6000億円の資金調達が必要で、著しい値上げなしでは事業計画の策定は極めて困難。

 ◇金融機関への協力要請

 資産超過の状態にあり、債権放棄または債務の株式化を要請することは困難。要請の内容が十分かどうかは今後、機構が検討すべきだ。

 ◇経営責任

 法的責任の成立の行方にかかわらず、経営陣は辞任、退職金の放棄、保有株式の返上などで経営責任を果たすことが望ましい。

 ◇電気料金制度の検証と見直し

 届け出時と実績の原価では直近10年間の累計で5926億円の乖離(かいり)があり、大きな要因は修繕費。現行の料金制度では、原価が規制当局に 適正に届けられ、把握された上で設定された料金にはなっていない。原価対象の再検討や料金ガイドラインの見直し、第三者による適正性の確認などが行われる ようにすべきだ。

 ◇今後の東電の姿

 短期的にはコスト削減策に加えて、資金繰りに留意することが必要。中期的には、柏崎刈羽原発の再稼働時期が一つのポイントになり、需給・収支面の大きな鍵を握る。

毎日新聞 2011年10月3日 22時55分

 


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2 コメント

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国民不在の第三者ならぬ原発推進の政府・経済産業省な野田な、期待するだけ野暮だから第二原発爆発の事故を心配 (cafe今後の電力行政に誤り;政府が東電を支える構図の理由は原発再稼動政策に原因アリ)
2011-10-05 08:06:25
 政府の今回、東電の経営・財務調査報告書は、原発再稼動を主たる再建の柱に据えて、経済産業省の新たな政策に基づくものであることを、示した。
 まー予想通りだったから、そもそも、期待する国民の用が野暮かな?
 Fukushima原発事故の爆破と核燃料溶融、メルトダウンを、未だに収束できないままに、一般の全国民は東電フクシマ放射性物質の汚染によって、「被曝者者」となった状態を放置したマンマ。
 ドゼウ総理大臣は、よくぞ原発再推進の筋書きを、この調査報告書によって、発表してくれたも野田な!
 ところで、農薬の散布で、田の堰、田んぼの中に必ずいた泥鰌も、今は全然いなくなってしまった。したがって、同様に、放射性物質汚染の放射能を、今のように原発事故の再発によって、日本国中を被曝地帯化すれば、ドゼウと同じく日本人が皆、いなくなってしまう野田。
 「田んぼのドゼウ種が全滅」の野田君、「原発による放射能被曝は直接影響しないので冷静に」を、官房長官公式記者会見で、三千回も繰り返した枝野君等よ!
 日本民族、人種、その文化を、「絶滅種にして広島、長崎原爆被爆、フクシマ被曝の被害にめげず、第二の原発被爆を惹き起こす原発の再稼動を、東電債権の柱として、「東電債権者の救済、国民負担税金の増税、電気代大幅値上げ」なんかで、誤魔化すのだけは、御免を被りたい。
 これって、政府の第三者調査委員会ではなくて、”東電債権に相乗りの原発を再稼動して、「負んぶに抱っこ」”だから、”政府と東電合体の国民不在裏口会談”に過ぎない野田!
 この程度の大甘でチョロマカスして、一般国民をアホに見下すなよ!先ず、東電株式会社の地域独占体を、全面的に解体して、出直す野田。
 どうする?
返信する
名無しさん (Unknown)
2011-10-08 01:11:05
http://news.nicovideo.jp/watch/nw124384

>。賠償支援機構法自体がゆがんでいる。
>そのことが今日、明らかになった

との事ですので、「裁判官出身の委員長」さんもどうしようも無いと思います。

私なら「役員全員死刑」とか言っちゃいますが、論理と法律を守る方達であれば有るほど、こういう結果になるんじゃないでしょうか

そしてその法律を作った当時の与党とその有権者の出来が悪かったという事で、今後も変わらないんだと思います
返信する

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