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米朝艶笑噺(三) 【めす馬】

2015年08月01日 | 落語・民話

【めす馬】
 も一つ似たよぉな噺ですが、やはりある人が山の中で道に迷よぉた。
で、麓へ出よぉと思うのに、段々だんだん奥へ入って辺りは黄昏てくる。
どぉしよ~と思ぉて見ますと、そこに一軒の家(うち)が。

 あばら家ですけれども、入り口に馬が繋いである。
割りと手入れの行き届いた艶々としたメス馬です
「ははぁ~、馬が繋いであるねやさかい、人間がおるに違いない」
訪れてみますと一人の男が出て来て、

■あんた、どこをどぉこんな所へ入って来なはった? 
普通の人間の来るよぉな所やおまへんで

◆せやけど、道に迷よぉたもんで……、何とか里へ出たいんですが

■よろしぃ、今日は日が暮れたし、ここで一夜を明かして、
わたしが道を教えてあげます。あした帰んなはれ。

 「ほなら、ご厄介になります」
といぅので、まぁ夜(よ)と共に色々と物語をする。

◆けどあんた、馬と一緒にこんなとこに住んでなはる?

■えぇまぁ、こんなとこですのでなぁ、馬ぐらいおってもらわんと困りまんねん

◆せやけど、あんたお一人で?

■はい

◆どぉいぅわけでこんな山奥へ引きこもりなはった?

■はい……、めったに人が訪れるといぅこともない山中でございますし、
まぁよくよくのご縁でこんなとこへ、あんた来てもらいましたが、
懺悔ばなしといぅことでもないが、夜もすがらお話いたしましょ……、
実はわたしは、人交わりのならぬ体でございまして。

◆どぉいぅわけで?

■人に言ぅてもろたら困りますが……

 「これを見てください」と、裾をパッとまくりますとビックリした。

大ぉきぃのなんのて、足が三本あるかと思た。

◆これわッ?

■はい、これでございますので。まぁ、嫁をもらうこともできず、
風呂へも行けませんし、もぉ世間にいて人と付き合うといぅことが、
ほとほと嫌んなりまして、まぁこんな所で、
身の因果を託(かこ)ちながら一生終わろぉ、といぅ気になったよぉなわけで。

「あぁさいですか。お気の毒なことですなぁ」と、物語るうちに東が白んだ。
麓へ出る道を教えてもらいまして、別れを告げて家へ帰って来る。
で、家の嫁はんに
「実は夕べ、何とも不思議なことを体験した。こぉこぉこぉいぅわけやねん」

●へぇ~ッ!

◆でまぁ、道教えてもろて帰って来てんけどな、世の中にはえらい人がおるもんやなぁ

●どれぐらい大きかったん?

◆そぉやなぁ、まぁあの床の間の花活けぐらいはあったなぁ

●まぁ、さよか……

 といぅんで、その晩は寝ました。次の朝目を覚ましてみると女房がおらん。

子どもに聞ぃてみると
「お母ちゃん、朝からあの床の間の花活け持って考えてたけど、
どっかへ出てってしもた」

 さては……、といぅので、また、きのう帰った道を逆に辿って行ってみると、
やっぱり馬が繋いであって佇まいは前と変わってない。

◆わたくしの女房が、こちらへ来ませんでしたやろか?

■お越しになりました

◆さよか……、いや無理もないと思います。
常からあいつはもぉ「物足らん、物足らん」言ぅてたんでんねん。

◆まぁこぉなったんが因果やとあきらめて、
わたしのほぉはそれで思い切りますが、子どももあるし話もちょっとあるので、
一目だけ会わしとくなはれ。
ひとこと話をしたら、すぐ帰ります

■はい、それがその……、お会わせ申すことがでけん、
といぅのがお気の毒に、お亡くなりになったんです。

◆えッ! あれが死んだ! どぉいぅわけで?

■入り口のメス馬に、蹴り殺されましたんで。

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