若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

広報紙廃止論 ~ 読まれてるかどうか、分からないじゃない ~

2011年07月11日 | 政治
全国広報コンクールで総理大臣賞などを数多く受賞し、


「広報の西の神様」
「鬼才広報マン」
「広報紙をビジュアル化させた男」

と名高い、福智町職員の長野士郎氏。
(鬼才なうえに、醤油顔のイケメン。天は二物を与えた・・・というのは余談)

先日、この長野氏の講演を聴く機会があった。

魅力的な特集、見事な写真の配置。
ありふれた行政のお知らせでもつい読んでしまう。
技術力、センス、情熱、どれをとっても一流。
長野氏が手がけた広報紙を見て、ど素人の私もそう思った。
ここでは、広報紙の作成方法、技術論については触れない。
門外漢の私に論じる資格は無いだろう。



この講演の中で、私を捉えた一言があった。


「住民に読まれない広報紙は、税金の無駄」


広報紙の発行には、多額の税金が投じられている。
編集機器の購入、印刷、製本、配送などの費用と、職員の人件費。
こうした費用を税金から支出しておいて、読まれることがない広報紙。
確かにそうだ、税金の無駄だ。

これを聴いた他の受講生は、きっと
「よし、読まれる広報紙にしよう!」
と思ったことだろう。



ところが私は、例によって逆のことを考えた。
「広報紙は廃止すべきじゃないか?」
・・・と。

雑誌であれば、買ってもらわなければ、売り上げは無い。
そのまま放置すると、会社の経営は悪くなる。
廃刊という選択肢も、当然視野に入るはずだ。
編集担当の首が切られる、という事態もあろう。

最近良く見かけるフリーペーパーも、多くの人が手にとってくれなければ意味が無い。
広告収入が下がってしまう。
読み手が減り続ければ、いつかは廃刊となる。

ところが、
見辛い、面白くない、でも発行され続ける。
そんな媒体が存在する。

自治体の広報紙だ。

仮に、広報担当部署に編集能力ゼロの職員しかいなくても、
「行政情報を広く住民に提供しなければならない」
「行政の活動を身近なものとしてアピールする必要がある」
といった公益性・公共性を強調すれば、予算は通ってしまう。

しかも、編集能力ゼロの職員が広報紙を作成、発行し続けても、処分されることはない。
「編集が下手過ぎるから、お前を減給処分!懲戒免職!」
なんて事例は、おそらく存在しないだろう。

雑誌やフリーペーパーなら、売り上げ、発行部数、どれだけの人が手にとってくれたか、で評価することができる。

ところが、自治体が発行する広報紙は、そうではない。
役所から各個人の自宅へ、好むと好まざるとにかかわらず配送される。
配送された広報紙は、果たして手にとって読まれたのか、他のチラシと一緒に即ゴミ箱行きとなったのか?
これを自治体側から知る術は無い。

魅力的でない自治体の広報紙は、そう簡単には淘汰されない。
「予算が厳しくなってきたから発行回数を減らす」
という判断をする自治体はあるだろうが、
「広報紙が魅力的でないから発行を止める」
という判断をした自治体はおそらく存在しないだろう。
魅力的かどうかを判断する客観的な物差しが無いからだ。

読まれない広報紙は税金の無駄だ。
しかし、自宅に送られた広報紙を住民が読んでいる、読んでいないを測るのは難しい。
雑誌やフリーペーパーであれば、
「経営が継続できている=魅力的な、読む価値のあるものを発行できている」
と判断できるのに。

そこで。

長野氏のような優れた広報マンが独立開業し、行政情報を役所から提供を受ける。
これを見やすい記事、惹きつける記事に仕立て上げる。
広告主を募り、駅や公民館、飲食店などで設置し、配布する。
自治体が直営で発行する広報紙を廃止し、自治体広報紙をフリーペーパー化するのだ。

行政情報には、知らないと痛い目に遭う、知らないと損をする情報がある。
税の納期限や予防接種の実施時期などがそうだ。
それなりに、情報としての価値はあるはずだ。


このビジネスモデルは、自治体から既存の広報紙が発行されている限り成立しない。
あるいは、そもそもビジネスモデルとして成立し得ない夢物語なのかもしれない。
私の見込みが甘すぎるのかもしれない。

しかし、

「読まれない広報紙は税金の無駄」

なのだ。
情報伝達のために【紙媒体で】【各戸へ送付する】という高コスト構造で、
これで読まれない冊子なんて、目も当てられないじゃない。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2022-02-20 19:22:24
正しくそのとおり。
効果がないから止めるではなく、効果があるように改善させる(その能力がある人員も追加予算も無いものとする)ってのが公務員広報の在り方だから。
ユーチューブのショート動画でもなく、Twitter媒体で文字と画像だけ乗っけて、ミリオタやOBの固定層が400人ほど いいね するだけの自衛隊の各部隊の広報とか見ているとセンスの無さに笑いも出なくなる。

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