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★つくる会会長「南京事件あった」―杉原誠四郎の歴史観〈1〉

河村たかし名古屋市長の発言を機に南京攻略をめぐる出来事についての議論が再燃しています。私たちは「新しい歴史教科書をつくる会」の自由社版中学校歴史教科書が「なお、この事件の犠牲者数などの実態については資料の上で疑問点が出され、今日でも研究が続いている」という南京事件への疑問を削除したことを1年前に紹介しました。
 
 ★南京事件への疑問を削除した自由社版教科書-記述検証〈1〉
 
そのとき藤岡信勝の言い訳を次のように予測しました。
 
<「ああ言えばこう言う」の藤岡信勝客員教授のことですから、こう反論するかもしれません。「虐殺はなかったのだから、疑問の余地はなく、もう研究することはない。だから削除した。これは画期的な記述なのだ」と>
 
その予測通りのことを藤岡信勝は「WiLL」6月号に書いています。それなら「南京占領の際に、日本軍によって中国の軍民に多数の死傷者が出た(南京事件)」という記述自体が不要です。
 
ところで、「振り込め」口座名義が「新しい歴史教科書をつくる会」事務局長、越後俊太郎になっている「河村発言を支持し『南京』の真実を究明する国民運動」ですが、「つくる会」会長、杉原誠四郎(本名・平田誠四郎)は消極的に見えます。3月6日の「緊急国民集会」での杉原のあいさつの歯切れの悪さに気付いた人も多いでしょう。
 
皆さんは杉原誠四郎にどんなイメージを持っていますか? 「教育基本法などを研究する教育学者で、日米開戦などに関する本も書いている保守系の学者」と思っている人が多いでしょう。
 
大きな誤解です。杉原誠四郎はこれまで「(30万人は殺していないが)南京事件はあった」「昭和天皇に戦争責任がある」「韓国併合は暴挙だった」などと自虐的な見解を示し続けてきました。また、自由社の加瀬英明社長の父君で日本を守る国民会議(今の日本会議)議長だった加瀬俊一氏を「犯罪的」と非難しています。そうした杉原誠四郎の歴史観を連載でお届けします。
 
南京攻略について杉原誠四郎は著書で次のように書いています。 
ドイツのユダヤ人虐殺に比較されるものとして、昭和12年(1937年)に起きた南京事件があるが、この場合、日本軍兵士の乱暴狼藉、それゆえの中国兵や中国民間人に対する不法殺害がまったくないわけではなかったが、(杉原誠四郎『杉原千畝と日本の外務省』p57)

たしかに、1937年(昭和12年)日中戦争のさなか、日本軍の南京攻略において、不法殺害された中国の兵士、一般市民がまったくなかったとは言えない。(中略)
日本軍には、捕虜を収容する準備がほとんどなく、戦闘行為のなかでの中国兵の大量殺害に対して無遠慮で過酷であったことはたしかである。また、いったん捕えた捕虜に対して日中双方で殺害する例がひんぱんにあったようだから、このときも捕虜で殺害された者もいることは想像できる。
計画をこえて多くの日本兵が南京城内に入り、軍紀が乱れ婦女子暴行、窃盗などの不祥事が多く起こったことも事実である。司令官松井石根が泣いて怒ったというエピソードがあるぐらいだから相当のものだったようだ。東京の参謀本部から本間雅晴少将が、1938年(昭和13年)2月日本軍の暴行を問題にして南京に出張したというのであるから、日本軍の不祥事件があったことはたしかだ。(杉原誠四郎『日米開戦以降の日本外交の研究』p191~194)

この後、板倉由明ら「中虐殺派」が依拠するスミス(スマイス)報告の「日本軍および日本兵によって不法に殺害された民間人」の数と南京衛戍戦史話の「日本軍および日本兵によって殺害された兵士」の数を挙げて、次のように書きます。
しかしそれにしてもこれだけの人数の民間人や兵士が殺害されたのだから、そのなかに日本兵によって不法に、かつ残虐に殺害された者がいるであろうことは想像に難くない。日本軍は明治の建軍以来、勇敢で軍律のきびしいことでは世界的に高く評価されてきた軍隊であったが、その日本軍にとっても、この南京事件は、不名誉な事件であったと言わなければならないのである。(杉原誠四郎『日米開戦以降の日本外交の研究』p200)

大虐殺はなかったものの「不法殺害された中国の兵士、一般市民がまったくなかったとはいえない」「中国兵の大量殺害に対して無遠慮で過酷であった」「捕虜で殺害された者もいる」「婦女子暴行、窃盗などの不祥事が多く起こった」「相当のものだったようだ」「日本兵によって不法に、かつ残虐に殺害された者がいるであろう」「南京事件は、不名誉な事件であった」…つまり、南京事件はあった、日本軍による戦時国際法違反の不法殺害はあった―というのが「新しい歴史教科書をつくる会」会長、杉原誠四郎の見解です
 
杉原誠四郎はこの『日米開戦以降の日本外交の研究』を、ご苦労なことに英語や支那語(繁体字)に翻訳して出版しています。「日本軍にとっても、この南京事件は、不名誉な事件であったと言わなければならないのである」の部分は次の通りです。
Therefore, it must be noted that the Nanking incident brought great discredit upon the Japanese army.(杉原誠四郎『Between Incompetence and Culpability: Assessing the Diplomacy of Japan's Foreign Ministry from Pearl Harbor to Potsdam』p121)

所以南京事件的發生對日本軍而言,是很不光彩的事。(杉原誠四郎『搞垮日本的日本外交:二次大戰的日本外交情結』p193)

杉原誠四郎は、南京事件は「great discredit」で「很不光彩」だと世界に発信しているのです。
 
杉原誠四郎は、対華二十一か条要求さえなければ日本と中国様はずっと仲良くできたのに…という支那迎合史観をいろんな本に書いています。
大正4年(1915年)、第一次世界大戦の最中、誕生したばかりの新生中国に対して、日本外交は何ら軍部から圧力があったわけでもないのに二十一か条の要求を突き付けた。第一次世界大戦は、それまでの世界各国が推し進めてきた帝国主義政策の終焉という意味を持っているのであるが、そのとこが分からなかったとしても、日本として新生中国を助ければ、中国は日本に恩義を感じ、半永久的な極めて良好な日中関係を築けるということがなぜ分からなかったのか。
この大切な時機に、欧米諸国が中国問題に関心を寄せる余裕がなくなっていることを逆に契機として、日中関係を半永久的に悪くするようなことをしたのである。これも、日本の外務省が本当の意味での世界情勢の分析ができず、長期的な構想を持つことができなかったことを意味する。新生中国を助ければ、中国が安定した国になって、東アジアで戦争の火種がなくなり、それは日本にとっても中国にとっても、否、世界にとってよいことだという極めて、単純な計算が、日本の外務省において認識されえなかったのである。(杉原誠四郎『民主党は今こそ存在感を示す時』p46~47。『日米開戦以降の日本外交の研究』p219、『杉原千畝と日本の外務省』p114~115にも同様の記述)

かつて半分、欧米の植民地と化した清王朝を廃して近代国家が生まれようとしたとき、それを助けるための日本の有志は多数いた。しかしそれが外交として一貫していなかった。日本はこれを助けるどころか、苦しめる側で行動したといってよかろう。このとき、これまでの有史以来の長い関係でみれば、日本が欧米諸国と同じことをしていても、中国国民からは、欧米諸国以上に敵意を買うことになる。新しい中国と手を取り合って中国の半植民地状態からの脱却を助ければよいのに、反対に欧米の帝国主義諸国の仲間入りをし、時代遅れの帝国主義政策を推進し、中国人民の憎悪を一身に受けてしまった。(杉原誠四郎『保守の使命』p133)

「時代遅れの帝国主義政策」で中国様に恨まれてしまったと反省しています。昔の主張ではありません。この『保守の使命』は昨年、自由社から出版されたばかりの本です。
 
「帝国主義政策」の源流は明治維新にあると杉原誠四郎は言います。 
しかし合わせて日本の反大義とは何か。その究極は、日本が他国から植民地支配を受けることを極度に恐れていながら、アジアの諸国に対しては逆に植民地支配を行ったことである。それは何も昭和時代からのことではない。明治時代から、厳密には日本の独立を何とか守ろうとした明治維新のなかにすでに胚胎していた。当時は世界的にも帝国主義外交が常套化しており、日本のみの問題ではなかったけれども、自分の欲しないことを他に行うのは、まさに不徳の最たるものである。
究極は日本、日本国民の傲慢ということなのだが、その傲慢に基づいて日本は、明治以来、対外政策で重大な誤りを犯してきた。その誤りの累積のうえに今次の日中十五年戦争があり、日米戦争がある。
したがって、今次の戦争において、いかに大義があろうとも、裏面に日本の不徳があることはたしかである。(杉原誠四郎『日米開戦以降の日本外交の研究』p208~209)

「傲慢に基づいて日本は、明治以来、対外政策で重大な誤りを犯してきた」と坂の上の雲を目指したわが国の先人を否定し、「日中十五年戦争」という算数上も歴史学上も間違っている左翼用語を使い、日米戦争とともに「日本の不徳」と断罪しているのです。
 
「十五年戦争」で「南京事件はあった」と主張する杉原誠四郎(本名・平田誠四郎)は、親支那に傾いた「新しい歴史教科書をつくる会」の会長にふさわしい人物です。
 
(つづく)
 
※つくる会と支那
 ★自由社版 そんなに支那が 好きですか
 ★自由社・石原萠記-中国共産党-東京電力の赤いトライアングル
 ★南京事件への疑問を削除した自由社版教科書
 ★魏志倭人伝への疑問を削除し、ありがたがる自由社版教科書
 ★支那・朝鮮の地名を現地読みで読ませる自由社版教科書
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