POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 木村良一著、扶桑社刊(2009年3月)、「パンデミック・フルー襲来~これが新型インフルエンザの脅威だ~」という新書があります。木村良一氏は、1956年生まれ。1983年、産経新聞社入社。社会部記者を経て、2006年、産経新聞論説委員。



 本書ができあがった経緯はこうである。昨年(2008年)の夏に扶桑社書籍編集部の田中亨編集長から「新型の発生に備え、私たちが生き残る方法を本にまとめられないだろうか」という相談を受けた。ちょうどその頃、私は新型インフルエンザを題材にした物語を書き上げたいと考え、構想を練っている最中だった。その話をしたところ、「新聞記者を主人公にした小説にしたい」という私の提案にも田中編集長は快く賛成してくれた。

 この「小説」は、フィクション仕立てになっていますが、その実質は感染症に対する啓蒙だと思われます。感染症に対する正しい知識を持てば、無駄にパニックには陥らないはずです。日本の「新型インフルエンザ」に対する「集団ヒステリー」に似た状況を作り出したのは、まずは「マスコミ」の無知です。当然、この著者のように「マスコミ」の内部にも正しい知識を持っている人たちもいます。しかし、その人たちがマスコミを先導できるとは限らないのです。無知な人たちがマスコミを動かすとしたら、大衆を扇動する(学生をアメリカに行かせたことに対する記者の学校関係者への詰問口調などが学校に対するバッシングを生む)ことになってしまうのです。

 ロハス・メディカルのインタビューに対して、『厚生労働省崩壊』(講談社)の著者であって、現役厚生官僚・医系技官の「木村盛世」氏は「(厚生労働省の)医系技官の使命は、国民の健康と安全な医療を守ることであり、そのためにはプロフェッショナルである医師の能力が必要。だから本来は専門家であるはずです。ただし、今の医系技官は、臨床も何もできない専門能力のない医師がたまたまやっている。だから彼ら自身、自分たちの知識のなさをカバーするので精一杯。」述べています。

 さらに、ダイヤモンド・オンラインのインタビューに対しては、「(日本政府が、世界の常識に反した的外れの対策をとるのは)、日本が感染症対策において、発展途上国であるからだ。感染症対策の研究は、公衆衛生学において行われる。」「他の先進国が、公衆衛生学を重視するのは、感染症によって国民、とりわけ若者が亡くなれば、国が弱体化するからだ。結核、ペスト、コレラ―エジプトの昔から、感染症は国家を悩ませてきた。とりわけ、戦争時に前線でどのような感染ルートが想定され、兵士たちの感染をいかに予防するかが、公衆衛生学の重要なテーマだった。つまり、公衆衛生学は医学における国防なのだ。国防だから、多大な予算を割くのだ。米軍の将校育成プログラムには、公衆衛生学が組み込まれている。日本には、こうした公衆衛生学の概念そのものがない。したがって、日本には専門家は一人もいない。」と述べています。

 マスコミの無知は、教育制度を含んだ日本の制度からきているのですね。ならば、私たち庶民は、自分で正しい知識を得るしかありません。このリスク(「新型インフルエンザ」)をコントロールするには、このような本を読むしかないのでしょう。そして、正確な知識を身に付ける必要があります。ただし、「本」だから信用できる、というものでは当然ありません。真偽を判断できる「勘」も鍛えておかなければなりません。

 2009年5月21日に「京都大学保健管理センター」が出した「新型インフルエンザに関する緊急情報(第2報)」からです。

 このインフルエンザに効くワクチンは当分ありません。発症してしまった人はちょっと辛いのですが、これで免疫を獲得して今後同じタイプのインフルエンザにはかかりにくくなることが期待できますし、公衆衛生的観点からは集団免疫の成立にも貢献することになります。賢く行動してやり過ごしましょう。

 こういう冷静な「判断」は、不思議なことにバッシングにあって、差し障りのない文章へと修正されていきます。これでも「本音」を抑えた表現なのでしょうが、それでも受け入れられません。「右倣え右」で、日本ではみな右を向かないと、バッシングに遭うのです。

 2009年5月28日配信の毎日新聞の記事からです。

 季節性インフルエンザの流行期を迎えている南米チリで27日、新型インフルエンザの感染者が前日より49人増えて168人になった。同国保健省によると、流行しているインフルエンザの9割が新型という。季節性インフルエンザの流行が遅れているか、「新型」が「季節性」に取って代わった可能性があるとしている。チリ保健省によると、現在の季節性インフルエンザの感染率は10万人当たり10.9人で、例年よりかなり少ないという。インフルエンザは新型が現れると、従来の型に取って代わってきたとされている。チリで最初の感染者が確認されたのは17日。首都サンティアゴの小学校から徐々に感染が広がった。現在、南半球で最も感染者が多くなっている。 (6月12日までにWHOに報告されたものでは1694名が感染確認されている)

 2009年6月11日配信のロイターの記事からです。

 オーストラリアのビクトリア州で、新型インフルエンザ(H1N1型)に感染した5人が集中治療を受けている。5人はいずれもオーストラリア人。同国の新型インフルエンザ感染者は1200人を超えているが、これまでのところ死者は出ていない。ビクトリア州保健当局のスポークスマンは、ロイターの取材に「患者らは集中治療室にいて、症状が重い」と説明。深刻な病気を誘発する基礎疾患を抱えている人もいる可能性を示唆した。



 インフルエンザワクチンの接種に関して、対照研究が行われたことがあったようです。対照研究では、ある現象について、その仮説を検証するために、処理を加える実験群(intervention group)と比較するための対照群(control group)を作ります。実験群と対照群は、検証する処理を実験群に施すということ以外は、まったく同一にします。学童の実験群には、ワクチンを接種し、対照群には、ワクチンを接種しません。このときは、ワクチンのインフルエンザの学童への感染防止にそれほど有意な結果は見られなかったようなのですが、家族など周囲への感染の割合が減ったといいます。

 「集団免疫(herd immunity)」という言葉があります。集団の構成員の一定数が免疫を獲得すると、集団の中に感染患者が出ても、集団の中で感染が阻止されることを意味し、その結果、子供や老人などの免疫力が弱い(「免疫学的弱者」、「ハイリスク群」)者たちが感染を免れることができることをいいます。

 「ほとんどの学童がインフルエンザワクチン接種を受けていた期間に、日本では、インフルエンザに対する集団免疫が成立していた可能性がある。もし集団免疫が成立していたならば,この期間には,高齢者においてもインフルエンザの発症とインフルエンザによる死亡が低下していたはずである。」という仮説を立てて、検証が行われたそうです。その結果、「日本の超過死亡率は、学童に対するインフルエンザワクチン接種プログラムの開始に伴って、それまで米国の3~4倍であった死亡率が、米国と同程度にまで低下した。日本の小児への予防接種は、1年間に約37,000~49,000人の死亡を防止した、あるいは、予防接種を受けた小児420人当り約1人の死亡を防止した結果となった。その後学童への予防接種が中止されたために、日本の超過死亡率は上昇した。」という結論を得たのだそうです。

 今年の秋(季節性インフルエンザの流行時期)には、インフルエンザA(いわゆる「新型インフルエンザ」)は「第2波」として、感染爆発を確実に引き起こすでしょう。季節的に流行期にある南半球では、いま感染爆発を引き起こしているからです。しかし、その重症度は「中等度(モデレート、moderate)」です。

 「パンデミック・フルー襲来~これが新型インフルエンザの脅威だ~」からです。

 後輩記者のひとりが「第2波って何ですか?」と質問した。
「過去の新型インフルエンザのうち1957年のアジアかぜは、日本に入ってくると、5月から7月に第1波の流行を起こし、さらに9月から12月にかけて第2波の流行があったんだ。だから一度、流行が収まっても気を緩めてはいけない」
「坂本さん、そうすると、いつになったら安心できるのですか?」
「そうだな。多くの人が感染したり、ワクチンを接種したりして新型のH5N1ウイルスに対する免疫(抵抗)力を持つようになれば、自然と感染の拡大は止まるはずだと聞いた」


 どのようなワクチンが開発されようと、ワクチン接種で「副反応」は出てしまいます。インフルエンザの予防接種を受けた後に、発熱やショック症状、肝機能障害などの「副反応」とみられる症状を起こす人は、日本では、年間100人から150人ほど。この「副反応」の発症例は、分母(接種を受けた者)がいくつか不明です。分子(「副反応」の発症者)もすべてが報告として上がってくるとは考えにくい。1万例をサンプリングしたところ、100例ほどあったとする報告もあります。これだと、副反応がでるのは1%ほど。症状は発熱が最も多く、次いでショック症状、肝機能障害、浮腫、ぜんそくなど呼吸器症状、注射部位のはれ、発疹の順となっています。「副反応」を起こす年齢層は、10歳未満と70歳代が多いそうです。予防接種後に心肺停止や、肝不全などで死亡する例は、年間5人前後(ワクチンは毎年1,500万人ほどが接種を受けます)。

 秋のインフルエンザAの感染急拡大に厚生労働省はどのような対策を打ってくるのでしょう。注意して見守りたいと思います。

         (この項 健人のパパ)

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