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 国民のインフルエンザに対する抗体保有状況を把握する「インフルエンザ抗体価調査」が感染症流行予測調査事業の一環として行われています。厚生労働省が主体となって実施されるもので、今後の流行を予測するとともに、効果的な予防接種の運用を図るためのものです。鹿児島県では、「インフルエンザ抗体価調査(2005年度)」を2006年に行いました(前回は2002年)。鹿児島市に生活圏を持つ0歳から73歳の男女378名(男性:199名、女性:179名)が調査対象者となりました。

 鹿児島市内の小児科病院と職場健診などで協力を呼び掛けて集めた調査対象者ですので、任意に抽出したわけではないので、これが一般的な傾向とは言えないかも知れないのですが、調査対象者の約36%がワクチンの接種を受けていました。2004年厚生労働省調査(22都道府県)では、接種率が約45%ですから、それより低いと言えます。

 万有製薬は、2007年7月、全国の65歳以上(65~69歳 283人、70~74歳 121人、75~79歳 48人、80歳以上 15人)の男女(男性 195人、女性 272人)計467人を対象に、インフルエンザに関する意識調査を実施しました。その結果は、インフルエンザワクチンを接種した経験がある人は67.2%(最近1年間に接種した方は44.3%、1年より前に接種した人は22.9%)であったようです。

 鹿児島県のこの調査では、過去2年間のワクチンの接種率は、
35~39歳 … 51.4%、
07~09歳 … 47.4%、
50~59歳 … 44.4%
の順に高く、特に2歳から19歳では40%を超えていたようです。

 接種率の低い方から見てみると、
20~24歳 … 20.5%、
60歳以上 … 25.0%(ただし、65歳以上は62.5%)、
01歳__ … 29.4%
の順でした。



 過去2年間のインフルエンザ罹患率は、
04~06歳 … 57.9%、
10~14歳 … 34.9%、
02~03歳 … 33.3%、
07~09歳 … 31.6%、
35~39歳 … 31.4%
の順に高く、幼児期から集団生活を送る学童期に集中しているといえるようです。

 ワクチンの接種率の最も高かった35~39歳の罹患率は31.4%で、半数以上(51.4%)が接種を受けているのに、3人に1人はインフルエンザに感染していることになります。接種を受けていない残りの半数の中からのみ感染者が出ているとは考えにくい。

 「不明または無回答」グループを除いた361名中30名がワクチンの接種を受けていながら、インフルエンザに感染しています。その率は接種者135名者中30名で、22%。感染を予防するという意味では、5人に1人には効き目はなかったと言えそうです。

 では、ワクチン接種を受けていなかった226名での罹患率を見てみましょう。51名がインフルエンザに感染しています。その率は、24%。どう見たらいいのでしょう。インフルエンザのワクチン接種を受けていての罹患率が22%、受けていない場合の罹患率が24%。2%の差は有意な数とは言えません。重症化(重篤化)を防いだか否かの検証がありませんが、この結果を見る限りは「感染予防」の効果には疑問があります。



 幾度となく行われた「インフルエンザ抗体価調査」が示す結果を専門家は知っているのでしょう。インフルエンザワクチンが「必ず感染を予防する」とは感染症の専門家は言いません。代わりに言われるのが、「少なくとも重篤化を防ぐ」という言葉です。

 病原体に感染すると、体の中でいろいろな防衛反応が起こります。その一つとして、病原体(抗原)に対して、特異的に反応する物質(抗体)が体内に産出されます。インフルエンザウイルスは、鳥類や哺乳類の赤血球を凝集させます(赤血球凝集反応、Hemagglutination)。抗体は赤血球凝集反応を特異的に抑制します。この抗体の値を測定するために、調査対象者から採取した血液を利用します。血液にインフルエンザウイルス(例えば、「A/ニューカレドニア/20/99(H1N1) 」という株)を入れると、赤血球が凝集するのですが、ウイルスに対する抗体があるときは凝集が起こりません。

 インフルエンザウイルスに対する抗体価は、赤血球凝集抑制試験(HI試験、Hemagglutinin Inhibition Test)によって測定します。具体的には、段階的に希釈した血液(抗血清)をウイルス検体と反応させ、赤血球凝集反応がどれだけの希釈まで抑制されるかを観察します。血液の希釈倍率はHI価と呼ばれます。この調査では、インフルエンザの感染予防や症状の軽減に期待できる40倍以上を抗体保有とし、より感染を防御できる十分な抗体価を160倍以上として評価しています。

 「A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)」というウイルスについて見てみると、ワクチン接種を受けた人の中で、抗体価が40倍以上の人の割合は57~63%ですが、抗体価が160倍以上の人の割合がインフルエンザの感染歴のある人は17%と低く、感染歴のない人の55%の3分の1ほどしかありません。ウイルスと接触したとき、抗体価の上昇する人は感染が抑止され、抗体価がそれほど上昇しない人は感染したと解釈すればいいのでしょうか。

 「A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)」株は、2000/01シーズンから2004/05シーズンまで5期連続でワクチン株へ採用されていたことから、予防接種の追加免疫もあり(ブースター効果)、抗体価160倍以上の抗体保有率が高値を示したものと考えられるようです。

 難しくなったので、「免疫」に話を戻します。粘膜などを介して体内に侵入したウイルスなどの抗原に対して、リンパ組織に存在するB細胞が、ヘルパーT細胞によって活性化されて抗体を産生する反応が免疫反応(一次応答)です。

 一次応答後に同一のウイルスといった抗原の再侵入に対して、免疫系が速やかに反応し、抗原に対し一次応答よりも大量の抗体を産生し、再侵入した抗原をすばやく体内から除去する反応も免疫反応(二次応答)です。

 病原性のないウイルス(抗原)を人為的に与えて、ウイルスに対する免疫記憶を持たせてウイルス感染を予防する方法をワクチン療法と言います。体内には「免疫記憶細胞」というものがリンパ組織にあって、一度体に入った病原体は全て記憶しています。後で同じ病原体が侵入した場合、警告を発して免疫反応を起こさせます。それにより抗体が大量に作られ、病原体を攻撃するのです。

 ワクチンは記憶細胞に今度これが侵入してきたら、抗体を作って攻撃するのですよと教え込むわけです。本物の敵ではないので、この過程ではいわく「無毒」なのです。教え込んだことをしっかりと覚えていると、ウイルスと接触したとき抗体価が上昇します。・・・話の落ち着く先を見失ってしまいました。専門家の意見を聞いて終わりにすることにします。

 東京大学医科学研究所の河岡義裕教授著の集英社新書「インフルエンザ危機」(2005年刊)からです。

 インフルエンザワクチンには、大きく分けて「不活化ワクチン」と「生ワクチン」があるが日本で製造・使用されているのは不活化ワクチンだけである。これは死んだウイルスを体内に入れることで、そのウイルスに対する免疫応答を促すものだ。つまり、ワクチン製造に使われたインフルエンザウイルスと似たようなウイルスに以前感染していたら、それに類似するウイルスが入ってきたときに抵抗できるよう、身体に準備をさせるというものだ。健康な成人が不活化ワクチンを接種した場合、予想が的中してそのシーズンのインフルエンザウイルスの型と一致すれば、70%以上の発病予防効果が得られる。そのうえ不活化ワクチンは、安全性が高いことも利点だ。
 ただし、このワクチンには弱点もある。腕からの皮下注射で体内に入れるため、体内でウイルスの広がりを防ぐことはできるが、鼻腔や口から侵入してくるウイルスに対する効果は必ずしも完壁ではない。 また、このワクチンでできる免疫の持続期間は短いため、毎年接種しないと高い効果を望めない。そしてもっとも重要なのは、それまでまったくインフルエンザ感染歴がない幼児に対しては、ワクチン効果に限界があることである。
 ワクチン接種はあらゆる人におすすめしたいが、今説明したことで分かるように、現状の不活化ワクチンには、まだまだ改良の余地はある。


         (この項 健人のパパ)

(追記)

 季節性インフルエンザにおいては、ワクチンの接種により、
○ 健常者のインフルエンザの発病割合が70~90%減少
○ 一般高齢者の肺炎・インフルエンザによる入院が30~70%減少
○ 老人施設入所者のインフルエンザによる死亡が80%減少
○ 小児の発熱が20~30%減少
というデータ(出典:Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)2007vol56,CDC。小児については、日本小児科学会「乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について-日本小児科学会見解-」)があるようです。



 ワクチン接種に際して、ワクチン接種の目的である「免疫の付与」以外の反応が発生した場合、「副反応」と呼ばれます。インフルエンザの副反応(一般には「副作用」と言われている)としては、発赤、腫脹、疼痛等の局所反応と発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、嘔吐等の全身反応がありますが、通常2~3日中に消失するのだそうです。インフルエンザのワクチンを接種するといつもなら、発赤の局所反応と発熱の全身反応を示す妻は、今回の季節性のインフルエンザワクチン接種ではそのいずれの副反応も出ませんでした。どうしたんでしょうね。



(追記)

 2009年11月25日配信の時事通信からです。

 鹿児島県は11月25日、新型インフルエンザに感染した30代の女性看護師が死亡したと発表した。女性は10月下旬に医療従事者として新型インフルエンザワクチンを接種。厚生労働省によると、ワクチン接種後に新型インフルに感染し、死亡が確認されたのは国内初という。職場や家族らに感染者は出ていない。女性は甲状腺機能低下症などの基礎疾患(持病)があった。

 県健康増進課によると、女性は11月上旬には、季節性インフルエンザワクチンも接種。20日までは通常通り勤務していたが、21日に40度近くまで熱が上がり、医療機関を受診、簡易検査でA型陽性と判明した。タミフルを処方されたが、25日にインフルエンザ脳症で死亡した。

 女性は一般的にワクチンの効果が出始めるとされる接種3~4週間後に感染したことになる。ただ、同省は持病により免疫力が低下している場合は、ワクチンの効果が十分得られない可能性があるとしている。


 基礎疾患のある者などの「ハイリスク群」を守るための「ワクチン接種」がその効果を持たないのであれば、「ハイリスク群」はどうしたらいいのでしょうか。

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