نوروز (ノウルーズ)
西暦の春分の日。この日は、古代から続くイランの伝統で新年の始まりを意味する。春分は、太陽が昼夜の均衡を取り戻す「完全なる」瞬間でもある。今年のイランの新年の始まりは20日の15時13分。日付のみならず時間まで決まっているのは、太陽が春分点を通過する時刻を数分数秒にいたるまで正確に計っていることに拠る。
ちょうど1年前、イランのお正月「ノウルーズ」の起源や、それにまつわる神話について書いた。今年は、その習慣について少し触れておきたい。
新年を目前に控えたイランの街角は、新年に向けた買出しの人々で大変な賑わいを見せる。日本の新年と同じように、新調の服や食器で新年を迎えたいと願う人々がバーザールに溢れ、道端には、新年の飾りつけに使うヒヤシンスや麦の新芽、イースターエッグならぬ、「ノウルーズエッグ」(?)、それから「ハフト スィーン」と呼ばれる装飾品が並ぶ。
ハフト スィーンとは、ペルシャ語のアルファベット15番目の文字スィーン(س [s]の音)が頭文字に付く7つのものを指す。上の写真にも見られるが、以下にハフト・スィーンの詳細を並べてみよう。
①セルケ(سركه)=酢
②スィーブ(سيب)=りんご
③スィール(سير)=にんにく
④サブゼ(سبزه)=麦の新芽
⑤セッケ(سكه)=硬貨
⑥センジェド(سنجد)=ななかまど
⑦サマヌー(سمنو)=焦がした甘い麦菓子
ハフト・スィーンの内わけは、時にいくつか入れ替わることもある。他にコーランや鏡、蝋燭、卵、それから赤い金魚が共に飾り付けられる。
金魚は始原神話とも関連があり、原初、混沌とした水から生命が誕生した様子を表し、卵に関してもほぼ同じ意味合いが見られるようだ。
イラン映画「運動靴と赤い金魚」では、ノウルーズの習慣が描かれていたし、クルド人監督バフマン・ゴバディがイラク戦争とフセイン政権の崩壊を描いた映画「亀も空を飛ぶ」では、幸せの象徴とも言える赤い金魚が、物語中効果的に用いられていた(クルド人のお正月もまた春分の日である)。
また新年の13日目に、人々はこぞって郊外へピクニックに出かける。(スィーズダ・べダルسيزده بدر)。これは、この日家の中にいることが不吉だとされているからだ。
この時に、サブゼ(新芽)を持参し、川などに流し捨てる週間がある。サブゼが、新しい年の悪運を全て肩代わりして引き受けてくれるとされているからだ。実はこれに似た儀礼が仏教でも見られる。詳しいことを知らないが、ちょうどイラン暦の新年13日目に当たる4月初旬、新芽ならぬ人形に穢れを移し、それを川に流す習慣が仏教でも存在するのだそうだ。
また1年最後の火曜日の夜、チャハールシャンベ・スーリー(赤い水曜日:火曜日なのになぜ「水曜日」というかは解らないچهارشنبهسوری)と言って、一年の無病息災を願って火を起こし、その上を飛び越える行事がある。この伝統行事は、昨今では若者の花火・爆竹遊びに摩り替わってしまったが、こちらもまた仏教行事の火渡りや東大寺のお水取りへと繋がっているものだ。
古来から伝わる新年の習慣は、イスラーム以前のイラン独自の宗教・農耕儀礼と深く結びつき、そしてそれは、シルクロードを通り遥か遠く我が国までも伝わっている。(m)
*ラマダーン明けがイスラームの新年アラビア語、ギリシャの新年はバシリス(聖人からの贈り物)と共に
!سال نو مبارک(新年おめでとう!サーレ・ノウ・モバーラク!)
ところで、イランにも干支が存在します。今年はやっぱり丑年!写真左端のモーモー牛のぬいぐるみにご注目!『地球散歩』の記事には「モーモー!」文句ではなく、暖かい応援クリックをお願いね!
人気blogランキングへ
この日にピクニックに出かけるのは、ディヤルバクルでも同じですねぇ。そういう意味があったのですね。
お祭りって、昔からのいわれを聞くと、ほんと色んな繋がりがあって興味深いです。東大寺のお水取りは、やっぱりこちらからの流れなんですね!何かの節目に「火」となると、どうしてもゾロアスター教を連想してしまいがちな私。
随分前に私もネヴルースのことを書いていますので、TBさせて頂きますね。よろしくお願いします。
mitraさん、イスタンブルへはいついらっしゃいます?
イランのような派手さはないのですね。でも、あの独特のクルドのダンスをそれこそ、そこいらじゅうで見られたりするんでしょうか?!
イランでは、街中が文字通り春が来た喜びに満ち溢れている感じになります。
yokocanさんがよくご存知のように、ペルシャやゾロアスター起源のものって知られているよりもたくさんありますよね。東大寺のお水取りは一部疑問視している意見もあるようですが、大方そうだろうということのようです。
ネヴルースの記事、見に伺います!
イスタンブルは、明日(あさって)からなんですが、その後すぐに別の場所に移動するかもしれなくて・・・。でも4月初旬に数日間イスタンに居る予定です。今回は連れがいるので、予定が微妙なのですが、ひょっとしたらyokocanさんにご連絡さしあげるかも!
そしてイランにも干支があって同じ牛とはそれはまた嬉しきかな♪(←丑年オンナです)
よくよく辿ってみると、繋がっているという感じ、面白くて大好きです^^
お正月に新春って言われても、寒くて『春』は程遠い感じがしますよね。
それにしても、新年を迎える時間まできっちり決まっているなんてびっくり。
人間の身体も月の満ち欠けに大きく影響されていることを考えると、太陽や月の動きを生活のリズムに取り入れるって大事なことだと思います。
新年の準備をするイランの人々で賑わうバザール、一度訪れてみたいです。
日本の仏教行事にも影響を与えているアラブ文化、その歴史の古さを感じます。
以前ギリシャ人が全ての文化はギリシャの影響を受けていると言っているのを聞いたアラブの人が、『ギリシャ文明はアラブ文明の影響を受けている』と言いなおしていました。
アラブの人々はその歴史の古さを誇りにしているのでしょうね。
伝統を考えると、いろんな国・場所へ繋がって
行くことが多くって。私もそんなワクワクが
大好きなのです。
yuuさんは丑年なのですね~。イランの干支、
そのうちご紹介できればと思います。
(微妙に日本のものと違います)
ノウルーズ、特にチャハールシャンベスーリに対するイラン政府の扱いは、ジャマルさんがおっしゃるとおりだと思います。実際、一昨年までは行事を行うことさえも禁止されていましたよね。現在のイスラーム体制でイラン古来の伝統と「今」のバランスを取ることは非常に困難だし、実際いろんな場所に矛盾が出てきているのだと思います。実際に暮らしてみてつくづくそれを感じさせられる日々です。そして、年末の行事に関しても、一般のイラン人は、伝統を守る、とか大きな意識の下に行っているというよりも、ジャマルさんがおっしゃるよう、楽しく新年を迎えたい、あるいは日ごろの鬱憤を晴らしたい、そんな気持ちから大騒ぎをしているのだと思います。どうかイランの方々の楽しみが奪われないことを祈っています。
イランでは太陽の動きを基準にしたイラン暦(ノウルーズはこれに従います)と、イスラーム化以降アラブから入ってきた太陰暦の両方を使います。(それに加え西暦も)よって、宗教行事・祝日もたくさんです。
ギリシャ、ペルシャ、それから後にはアラブ世界、トルコも互いに影響を与えたり、文化が交じり合い、その混交の中からたくさん面白いものが生まれて来ていますよね!タヌ子さんがお住まいのバルカンもそうですよね。
で、実はイラン人もギリシャ人同様、オリジナルは自分たちだって、何かにつけて主張します。それだけ古い文明・文化を保有しているって証拠でもありますけど、なんだか微笑ましいです。
新年前のイランのバーザール、訪れるチャンスがあるといいですね!
干支があるのはもちろんですけど、「モウモウ」さんはめちゃくちゃ可愛いですね♪
男性が食いつく話題ではないですが、なんかこういうぬいぐるみを男性が買って、家まで持ち帰る姿とか笑ってしまいます。
なんか平和でいいなぁ~(笑)
個人ブログにもコメントありがとうございました。
わたしたちからしますと「今頃新年?」ですが、春の到来を一年の初めとするのは、4月を年度初めとする日本と誓いかもと思います。
干支はびっくりしますよね~
かの国でも「丑年だから、のんびり屋だ」なんていうのでしょうか?
モウモウさんはかわいいですね~
マークさんは買いませんか?
私の父は、巨漢でハワイでは「オニイサン、日本語上手いね!」と言われてしまう黒い人ですが、ぬいぐるみが大好きです。
お腹がよじれるまで笑ってください(笑)