元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

クローズドエンドの蒔絵万年筆

2010-07-04 | 仕事について
あるお客様が工房楔のクローズドエンド万年筆をベースにした蒔絵万年筆を見せて下さいました。
途中経過のご報告を受けていて、少しずつ完成に近づいていく蒔絵の画像をずっと見続けてきました。
鱗1枚1枚が盛り上がり、力強く、大迫力で、でもとても細かく立体的に描かれた龍。
繊細に、羽の毛1本も疎かにせずに、麗しい姿に描かれた鳳凰。
蒔絵師が持てる技量と精神力の全てを賭けて完成させたものすごい出来の蒔絵万年筆で、私たちはそれを前に言葉を失いました。
写真ではなかなか写し著すことができないくらいの精緻な作品で、実際に目にすることができたことはとても幸運だったと思いました。
依頼者の求めに応じて1本だけ作られたもので、量産されたものでは、おそらくここまではできないのではないでしょうか。
最高のものを作ってもらいたいとして、掛けられた手間とエネルギーを理解した依頼者、その期待に応えるだけの技量を持った蒔絵師、そして最高のものを作るということで理解し合った信頼関係が、1本の万年筆を作りました。