私が就職したのは1992年でした。
その年モンブランの作家シリーズ限定品第1弾ヘミングウェイが発売されて、限定万年筆ブーム幕開けの年とされていますが、万年筆メーカーの限定品への売り上げ依存は年々高くなっています。
しかし、同じやり方も20年以上続けると通用しなくなりますので、そろそろ他の仕掛けも考えないといけないのではないかと思います。
でも、当店も力の限り限定品を仕入れたいと思うし、大切な商売のネタだと思っている。
限定品という、もう手に入れることができない、人の弱い部分を突くような商品は販売において今も有効で、いつでも買えると思う定番品に対して、今買わないと手に入れることができない限定品は購入の踏ん切りをつけるためにも、背中を押してくれるものだと思います。
限定品を乱発すればいいというわけではないけれど、それの存在によって、私たちはそのメーカーが活発に活動しているかどうか判断しています。
年2、3回定期的に限定品を発売して、そのペースを維持しているのはペリカンで、ペリカンの万年筆の業界に対する貢献度は高いと思います。
ペリカンの限定品は、万年筆好きな方のマニアックな気持ちをくすぐるようなアプローチの仕方があって、いつも感心させられます。
イタリアのメーカーオマスは、限定品をとにかく多く発売していて、それを見ていると止まると死んでしまうという強迫観念を持ち続けている小売店主の心境に近いものがあるのではないかと思い、親近感を持っています。
オマスの限定品は、以前あった廃番になったオマスのペンの復刻が多く、定番品の販売の邪魔にならないことはよく考えられていると思いますので、当店もオマスの限定品に付き合いたいと思っています。
逆に限定品のペースが遅く、お客様方がまだかまだかと言いだしてからゆっくりと出してくるのが、アウロラです。
しかし、アウロラの限定品はとてもサマになっていて、いつもアウロラらしさと見る人を唸らせる美意識に溢れている。
限定品はとても魅力がありますが、パーツ交換が必要な修理などは本国だけでしか行わないメーカーが多く、日数も半年に及んだりすることもあります。
安心して愛用できたり、それ1本だけを使うということでは定番品、人に自慢したり(万年筆には大切な要素です)、その年を偲ぶメモリアルなものということでは限定品という選択になるのかなと思っています。
万年筆のメーカーにとって、限定品の存在は売り上げ的に大きく、限定品がなくては売り上げが成り立たないところもあるのではないかと思います。
売り上げももちろん大事で、それを無視しては存続はあり得ないけれど、希望としては限定品はロマンのために作って欲しい。
お客様はそこに共感するのだと思います。