元町の夕暮れ ~万年筆店店主のブログ~

Pen and message.店主吉宗史博の日常のこと。思ったことなど。

アラスカに出会って

2015-05-03 | 実生活

 

今まで何となく西洋文明への憧れがありました。

向こうの歴史的なもの、街並み、発信されるカルチャーなどに憧れて、自分の生活や仕事の参考にしたりすることもありました。

それはアジアなど自分たちの文化よりも美しく、洗練された、進んだものであるような気がしていました。

テレビなどメディアなどでも西洋文明への憧れや賞賛するものは多く見られ、まるで私たちは欧米をお手本にしないといけないように述べられることもあります。

でもちょっと違う、西洋文明はよそ行きの文化なのではないか、そして我々は本来生き方にも反映される精神性の文化を持っているのではないかと考えさせられ、今世界の本流になっている西洋志向に流されてはいけないと思うようになったのは、アラスカを撮り続けた写真家星野道夫氏の本を読むようになったこともひとつのきっかけです。

力づくでヨーロッパ以外の地域を支配しようとした国々の文化に何で染まらないといけないのか、自分たちの精神を失ってしまったら、国土を占領されているのと同じではないかと思い始めました。

自分たちが生きていくために、自然の恩恵である獲物を獲る。
そして、自分たち人間も、獲物たちと同じ自然の一部で、征服するのではなく共生する。
そして、文明は未来永劫残すのではなく、使われなくなったら朽ち果て、やがて自然の一部になっていき、人間も動物たちと同じように、命が無くなればまた自然に帰っていくというエスキモーやアサバスカンインディアンの考え方を知り、共感します。

人間は、この自然の中で生きていくために活動しているに過ぎないのではないかと思います。
ヒグマが冬眠の前に栄養のあるものをなるべく食べて腹を満たそうとするのも、長い冬の前に人間が暖炉にくべる薪をたくさん集めて備えるのも同じ生きるためで、それは仕事をしてお金を得ている我々の仕事と、何ら違いがないような気がしてきました。

自然の中で生きる人たちは自分たちに恩恵を与える自然を大切にし、畏怖の念を持ち続けている。
日本人にもそういう感覚は残っていて、よく理解できると思います。

人を呼ぶためにきれいに整えられた観光に力を入れている国で、犯罪に合わないように余程気を付けないといけないのはおかしいと思う。
それよりも美しい自然の中で、分をわきまえて暮らす人たちがいる土地への憧れが強くなっています。


本分とは関係ない、垂水漁港の風景。