フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

面接試験 [086]

2006年04月18日 | パセオ周辺





                               面接試験



 あえて苦言を呈するが、最近は、人に使われることも人を使うことも、そのどちらも苦手で、そのくせ自分独りでは何もできないような人間が多い。
 まるで生ゴミじゃねえかあ、とマジで思う。


 若い頃、レコード・ディレクターになりたくて、大手レコード会社(ビクターとソニー)の求人に応募したことがあったが、二社ともに一次面接で落ちた。
 何で落ちたのか当時の私にはわからなかったが、今ならその理由は簡単にわかる。ただ単に、問題外、だったからだ。

 キンチョーの面持ちでノコノコ面接にやって来やがったこの俺に向かって、面接官である私はきっぱり云い渡す。

 「おめーのような生ゴミはウチにはいらねー」


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 どこも雇ってくれないので、やむを得ず私は25歳で自ら社長を名乗ったわけだが、就職試験のあの難関を突破するのに比べれば、実際その方法のほうがはるかに簡単なのである。

 それにしても面接試験というのは、イヤ~な緊張の極致とも云うべきものではないか。合コンのうれしー緊張感とは真逆なのである。
 出来ればもう二度と就職の面接試験なんか受けたくない(ついでに、出来ればもう一度合コンに参加したい)というモチベーションは私の中ではけっこう大きい。パセオを倒産の危機から救う原動力のひとつと云っていいだろう。

 また、面接試験というシチュエーション、それ自体が大の苦手の虎馬なので、パセオの求人などで逆の立場の面接官をやることも、私にとって実に耐えがたい拷問なのである。

 公平を期すためにジャンケンで決めたらどうか、と私は鋭く提案したりもするのだが、正気な社員たちはもちろん取り合ってはくれない。
 じゃあ、百歩譲ってクジ引きではどうかと追いすがる私に、思わず天を仰ぐ彼らとしてみれば、マイテ・マルティンなんかを聴きながら転職でも考えたい心境なのかもしれない。


                         
    『マイテ・マルティン/こわれもの』
       ON THE ROCKS/1994年)


 そんなわけで、私にとって「面接試験」は天敵である。
 それを受けるのは二度とイヤだし、面接官をやるのはその次にイヤだ。

 緊張の面持ちで僕を見つめる入社志望者に、こちらから自己紹介をしなければならない時などは、そのプレッシャーから、実は心臓が喉元までこみあげているのだが、そこはほれ、社長歴26年の俺であるからして、威厳をもってこう切り出す。

 「しゃ、社長のこ、小山です。や、ど、どうも、よろし△♯○くぷっ……」。


 フラメンコの隆盛によって、最近はどう間違えたか、東大や京大出身者が面接に来たりするのは非常にうれしくもあるのだが、心臓にはヒジョーに悪い。
 また、かなりサイテーな奴だなと思う応募者もいるが、若い頃の私に比べると相当マシだったりするわけで、そういう時の心中は実に複雑である。

 「座る席が逆じゃあ!」、そう天から一喝されれば、

 「わっかりましたあ!」と、ためらうことなく応募者席に飛び移る覚悟の私なのだ。

 そういう胸の内を見破られないように、また、いかにもリッパな人格者社長であるかのように気丈に振る舞うことで、私の疲労は極限に達してしまうことになる。


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 遠い将来、自暴自棄に陥ったときなどに、パセオに入りたいなどと思う人がいた場合、以上のことをわきまえておいて欲しい。
 その面接試験においては、面接官であるこの私をいかにリラックスさせるか、という点がもっとも重要なのである。