凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

酒場で何を食べよう 焼き鳥・モツ焼き屋編

2006年11月30日 | 酒についての話
 前回の続き。

 酒を呑む場所は何も居酒屋だけではない。もっとも居酒屋の定義をどこに持ってくるかで変わるけれども。呑めればどこでも居酒屋、ということも出来る。「洋風居酒屋・ビストロ○○」なんて看板も見かけるし。
 でもまあ居酒屋というところはいろいろな酒肴のパターンが揃っているところと考えてもいいだろう。それに対して「専門店」の一群がある。焼き鳥屋、串カツ屋、おでん屋等々。蕎麦屋や寿司屋もそれに加えてもいいかもしれない。てんぷら屋となるとちょっと上等か。うなぎ屋で一杯、とかいいですねぇ。

 僕がよく行くのは焼き鳥屋である。のれんをくぐると煙が充満しているのもまた風情。最近の焼き鳥屋はすっかりおしゃれになって煙もうもうなんてところは少ないが。ああいうのは女性客に喜ばれないからだと思う。髪に焼き鳥の匂いがついちゃうからね。従って換気の悪い焼き鳥屋は男ばっかりである。たいていは安い。
 席について、まずビールを一本。生ビールがあればそれも良し。この焼き鳥のタレの焦げる匂いはビールを呼ぶ。ううたまらん。
 そして注文。
 これについては一家言持っている人も多い。「まずは塩で焼いたものから。味の濃いものは後からにしないと舌が麻痺する」と必ず言う人がいる。
 これは、焼肉屋でも同じように言う人がいる。寿司屋でもそうだ。けれども僕はタレ焼きをまず所望する。「お前はそれだからわかっていない」という人もいるだろう。
 しかしながら、僕は呑みにきているのである。何を食べるか、以前に酒を優先したい。僕はビールを頼んでいるのだ。頭の中では酒の順番が決まっている。まずビール、そしてその後にはチューハイ、もしくは日本酒の冷や、最後には焼酎のロックでいきたい。そしてビールに合う串と言えば僕はやはりタレの焦げた味なのである。従ってまず精肉、そしてレバーをタレで食べたい。ハラも空いた段階ではそれを我慢できないのだ。「酒あっての肴」である原則は崩さない。
 また、焼き鳥の品書きにある「ねぎま」というものについては、これはもちろん大好きである。これについては焼き鳥で「ねぎま」はおかしいだろう、あれはもともと「葱鮪」でネギとマグロなんじゃないのか、という論争もあるのだが、こういう話は長くなるので放置する。
 次は塩で焼いたもの、ということになるが、ここでは脂の強いものを食べたい。鳥皮、手羽先、ボンジリなど。こういうものはタレで焼くとしつこすぎる(と、思う)。口の周りがアブラで光る頃、ビールからチューハイもしくは冷やに移行していく。そうなると、今度は砂ずり(コリコリして美味いですな)やささみ(梅シソ焼きとか山葵焼きとかありますねー)などを注文。だんだんとあっさりしたものに動く。そして最後につくね。
 「つくねは最初に注文するべきだ」という人がいた。それで店の技量がはかれる、と言う。寿司屋で最初にギョクを注文しろ、というのと同じ理屈だ。しかし、そんな勝負師みたいなことを焼き鳥屋でしなくてもいいではないか。そういう人のウンチクは聞き流してしまう。
 また「コースでしか供さない」上等の焼き鳥屋もあるが、こういう店には出入りしないので関係ない。メニューくらい自分で組み立てさせてくれ。

 そんな感じで焼き鳥屋では進行していくのだが、焼き鳥にも地域により様々な世界がある。香川の「骨付き鶏」。ありゃ美味いですね。最近心斎橋に「一鶴」の出店が出来たそうな。まだ行っていないので早く行きたい。また宮崎のモモ焼き。これは直火で地鶏をガンガン焼くのだが、アブラが火に落ちてもうもうと煙が上がり、焼き上がりはどちらかと言えば黒い。そこまで燃やすように焼かなくてもいいとは思うが、燻された味もする。好みが分かれるだろうが、たいていはいい地鶏を使っているので美味い。
 さて、名古屋名物の「手羽先」は焼き鳥の範疇なのだろうかと言う問題もある(それほど問題でもないか)。名古屋の手羽先は美味いですねー。ちょっとピリ辛スパイシーさがたまらん。ありゃビールだな。なんぼでも飲めます。
 これはもう独立した料理だと思うのだが、焼き鳥の一種でしょ、などと言う人と以前話したことがある。こんなの名古屋の人に「なーんも分かっとらんで」と言われそう。ただあえて考えると、あれは「山ちゃん」も「風来坊」も唐揚げであって焼いていない。だからやっぱり独立した料理だな。うんうん。

 さて、鶏でないものも焼いて「焼き鳥」でござい、と言う地域もある。どうも看板に偽りありの感じがしてしまうのだがこれはその地域の「約束事」みたいな範疇なのだろうか。焼き鳥で有名な街である室蘭や東松山、久留米などは豚が主流のようである。なんかヘンだとは思うが声を上げるほどでもないか。久留米で食べた時には「ダルム」というのがあった。これはシロ(小腸)ですな。(正確には「~というのがあった」ではなく知って食べてみようと思って行ったのだが)
 関東では「焼きとん」というのれんも見かける。これなどは正直だと思う。ややこしいもんねぇ。
 串焼き屋ないしはモツ焼き屋と言ってくれたほうがわかりやすい。しかしモツだけではない場合もあるのでねぇ。焼きとんと言うのが一番正しいか。しかし豚だけではない場合もあるから…難しいのぉ。

 仮にモツ焼き屋と言うが、たいていは焼き鳥屋よりも敷居が低い。おっさんばかりという店が多い。ありがたいですねぇ。安ければなお良し。
 こういう店ではもうビールは頼まない場合が多い。もっと安い酒を呑む。ホッピーがあればそれはありがたいのだが、関西ではホッピーを置いている店は少ない。なんでだろうな。なければ、いきなりチューハイでもかまわない(サワーという甘い飲み物はちょっと遠慮したいが)。
 レバー、ハツ、コブクロ、カシラ、シロ。歯が丈夫でないと食べられないものも多いが、ああ食べてるなという充足感がある。僕は尿酸値が高いのだが、なーに毎日食べるわけではなし。
 オーダーにも特にこだわりはない。「塩ですか、タレですか」などという問いかけもあまりないから。どれでもいいよ。じゃんじゃん持ってきて。ただしちょいとしつこい時があるので、キュウリとかあるかなー。え、ある? じゃそれ。それをポリポリやりながらモツをワシワシ。ついでにグビグビ。結構である。

 さて、こういう店にしばしば見える品書きに「豚足」がある。これは好みが分かれる。なんと言っても足である。気持ち悪いという女性が多い。まあね、その気持ちは判らなくはないよ。しかしなんと言ってもコラーゲンたっぷりである。コラーゲンは体内に吸収されアミノ酸に分解されて後再生成されるが、その時にビタミンCを必要とするので、チューハイにレモンをたっぷりと絞り入れて豚足と共に呑めばもう翌日はお肌ツルツルのはずなのだが。
 ところで、僕はこの「豚足」には偏見を持っていた。豚足といえばやっぱり台湾料理の煮込みや、沖縄の「てびち」に代表される、プルプルと煮あがって骨からスルリと外れる柔らかなものがアタマにあるので、焼いたものなんて固くて食べにくかろう、と思っていたからである。
 しかし、昔読んだ本の中で勝見洋一氏が書いた「新宿駅西口のしょんべん横丁に、『らくがき』という店がある。辛し味噌を塗って食す豚足の驚異的に旨いのを出すが…」という文章が気になっていた。グルメの勝見氏が「驚異的」とまで評する豚足とはいかなるものか。というわけで機会を得た僕は新宿の今は「思い出横丁」と名を変えた場所にフラフラと行ってみた。
 早速注文してみると、これは茹で豚である。「てびち」のように持つとほどけるほどではないがまずまず柔らかい。そしてこの「辛し味噌」が抜群に美味い。これだけを舐めながら呑みたいくらいだ。僕は豚足を見直し、それ以来東京に一人で居ればここに立ち寄って芋焼酎のお湯割りを呑みながら豚足をしゃぶるのが慣わしとなった。こういうざっけない店で酩酊するというのもまた愉しい。
 しかし、いちばん最近にこの店に居たのは去年の秋(もう一年経つな)だったと思うが、なんだか男だけの酒場に女性客も居た。なんででしょ? 豚足効果か。話を聞いてみると、この店はNHKのおかあさんといっしょで有名な「佐藤弘道おにいさん」の実家であった由。そんなの知らなかったよ。なるほどな。ひろみちお兄さんも豚足を食べて丈夫な身体を作ったのでしょうな。何故か納得。

 さらに次回に続く(汗)。
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2 コメント

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生はダメだけど (明石家_1955)
2006-12-01 19:03:53
焼き鳥のレバーは食べれます。 後、ここ数年すきなのは軟骨ですかね。皮も好きですw
飲まなくても食べちゃいますけどね(笑)
>明石家はん (凛太郎)
2006-12-03 20:48:49
レバーも好き嫌いが激しい食べ物ですね。生はやっぱり気持ち悪いと思う人が多い由。冷静に考えれば臓物やもんな(汗)。ワテは大好きなんですが。
軟骨のコリコリ感がまたたまらん。あれは僕はビールよりも焼酎とかの方が合うと思うのですが…おっと酒の話じゃなかった(汗)。

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