夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

錐呉器茶碗 その2

2020-02-19 00:01:00 | 陶磁器
*昨夜は子供に添い寝してしまい投稿が今朝になってしまいました・・・

茶器の中でも茶碗というのは難しいものです。その難しさはまずは自分で茶碗を作ってみると解ります。ぐい呑みや飯茶碗は意外に誰でも簡単に作れますが、茶器の茶碗はそうはいきません。品格、使いやすさの両方を兼ね備えなくてなりませんから、初めて作る作品は形はまともでも漬物入れになるか、穴を開けて植木鉢になる運命となります。

一口に使いやすいと言っても必要な機能が何点もあり、たとえば「お湯を注いでも熱くならない、お湯を捨てる際に高台が持ちやすい、抹茶が点てやすい、飲み口が飲みやすい」などなど・・・・。それにもまして難しいのが品格でしょうね。

とかく茶器の茶碗というと、萩や唐津、楽といった国焼、井戸や高麗といった唐物などが良いものと頭に浮かび、その範疇にある作品にとびつくのですが、その中でもいいものはごくわずかでしょう。

青井戸、小井戸、蕎麦井戸だとか、御本手、錐だとかという分類された作品をすぐに崇高してしまうのは大きな間違いでしょう。とくに井戸はもともとは飯茶碗であり、井戸茶碗には出来損ないが多いもので、その見極めには大きな意味で審美眼が必要なようです。

さて偉そうな語りはさておいて、本ブログにて呉器茶碗は幾つか紹介してきましたが、本日は呉器の中で「錐呉器」に分類される作品の紹介です。「錐呉器」・・?? 幾つかの作品を本ブログでも紹介してきましたが、一般には馴染みのない名称かもしれませんが、茶碗ひとつをとってもなにかと細かい点で分類されているのが骨董の面倒くさいところです。

錐呉器茶碗
口縁金繕補修跡有 合箱
最大口径135*高さ95*高台径



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呉器茶碗(ごき ちゃわん):高麗茶碗の一種で、御器、五器とも書きます。呉器の名前は、形が椀形で禅院にて用いる飲食用の木椀の御器に似ていることに由来するといわれます。

一般に、大振りで、見込みが深く、丈が高く木椀形で、高台が高く外に開いた「撥高台(ばちこうだい)」が特色とされます。素地は、堅く白茶色で、薄青みがかった半透明の白釉がかかります。

呉器茶碗には、「大徳寺(だいとくじ)呉器」、「紅葉(もみじ)呉器」、「錐(きり)呉器」、「番匠(ばんしょう)呉器」、「尼(あま)呉器」などがあります。「大徳寺呉器」は、室町時代に来日した朝鮮の使臣が大徳寺を宿舎として、帰国の折りに置いていったものを本歌とし、その同類をいいます。形は大振りで、風格があり、高台はあまり高くありませんが、胴は伸びやかで雄大。口辺は端反っていません。「紅葉呉器」は、胴の窯変が赤味の窯変を見せていることからその名があり、呉器茶碗中の最上手とされています。

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呉器の中で「錐呉器」と分類されるのは下記の特徴からです。

錐呉器:薄手で小振りなものが多く、薄柿色の中に魚屋に似て釉色は青みがあり、赤の窯変や雨漏り染みなどの見られるものは少ないようですが、時に赤・黄の火変わりがある作品もあるようです。陶土は青井戸に似て赤味のある鼠色、釉は井戸脇に似た黄色がかったものです。釉立ちの呉器は下記の記述の筋目がなくても一般的に錐呉器と分類されているようです。高台には割高台のものとそうでないものがあります。



「錐呉器」の名の起こりは資料をまとめると下記の説があるようです。

1)見込みが錐でえぐったように深く掘られて見込みの茶溜りが錐で突いたように窪んでいる景色からという説



2)高台の中にも反対に錐の先のように尖った兜巾が見られるのでこの名があるという説



3)胴または高台脇に二筋・三筋のまるで錐でえぐったような筋があるからという説



4)高台と口とをすっきりと切り取った形からという説



5)切高台のものを切呉器といったのが転じたともいわれています。

古くから井戸茶碗などを含めた高麗茶碗は細かく分類されますが、それは多少屁理屈のような、こじつけのような点があります。現代ではあまり細かいことにこだわらに方がいいし、井戸茶碗や高麗茶碗の至高主義的な点はどうも古臭いようにも思えます。

事が煮詰まってくるとなにかと細かく定めるのが終焉の始まりのような気がします。茶器もそうでしょうね。そろそろそういうことから卒業してしまいたいものです。

本題ですが、本作品は最低限の機能は備えて使い勝手はよい茶碗ですが、いい作品かどうかは正直なところ微妙であり、小生にはよく分かりません。井戸や高麗の作品は近代までに膨大な数が製作されています。当方の審美眼はまだまだですね。



とはいえ茶碗はきちんとした保管を心がけています。箱はかなりの上箱に収納されており、箱には「御本」と記されています。当方は形から「錐」としていますが、ここは意見のいろいろあるところであり、箱を誂えた方は「御本」に分類したのでしょう。いずれたいした問題ではないと思います。



茶碗は湿気を避けるために必ず最初に紙で覆います。それからお仕覆か布です。直接仕覆や布はカビが発生しますのでよくありません。



箱は両側5ミリずつの余裕が良しとされてます。



最低限の保管はきちんとしておきましょう。いい加減な保管はよくありません。さて、本作品、当方の所蔵前に使い込んでいるようですが、当方でも使い込まないと審美眼は身につかないでしょう。



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