夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

贋作考 初期伊万里花鳥図染付七寸丸皿

2018-10-11 00:01:00 | 陶磁器
9月の3連休の最終日は修善寺へ・・。



宝物館には川端龍子の龍を描いた大作がありましたが、撮影禁止なので写真はありません。この作品は本ブログで紹介する中村左洲と同年に描かれた作品です。



道すがら柿田川の源流によってきました。



公園内の休息テーブルでは蟷螂と談笑。



食事も園内で・・。





さて当方の蒐集品には基本的に古伊万里、初期伊万里、古九谷、鍋島焼は対象外です。これらの作品には精巧な贋作が多く、決して素人の手に負える代物ではないからです。衝動的に気に入った作品は購入しますが、基本的には衝動買い以外はありません。

今回もその衝動買いのような作品ですが、「初期伊万里」に挑戦してみました。

初期伊万里花鳥図染付七寸丸皿
高台内「太□明」銘 合箱
口径203*高さ20*高台径



改めの基本的な初期伊万里の特徴を列記してみましょう。

***************************************

初期伊万里の特徴

初期伊万里とは、その名前の通り伊万里焼の最初の焼き物であり、現在有田で焼かれている物とは、趣が全然違います。その品物のほとんどが染付であり、極稀に、一部、鉄砂などを使っている珍品もあります。

技術的に言えば、初期の作品だけに、素焼きの技術はなく、生がけになっています。その為に品物を焼く時点で貫入が入ったり,途中で割れてしまう事がよくあったようです。もちろん、無傷の物もありますが、最近は特に少なくなりました。

寸法は、小皿、中皿類が多く、大皿(尺~尺五)の品物の割合は中皿に比べて、特に少ないです。そして、傷の方も無傷と言うのは、大皿に限って言えば、まず無いと考えて頂いて結構です。

品物の特徴は、高台が小さく(直径の1/3位)、大半の器には、釉薬を塗るときについた指跡が残っています。「初期伊万里は指跡の温もり」と称しています。

生がけなので、生地は、割合分厚い生地です。初期の染付は釉薬がたっぷりとのせられ厚ぼったくなっています。伊万里焼の初期の作品と言う事で、昔から評価は高く、日本の鑑賞陶器としては、随一でしょう。伊万里焼が生まれて間もない頃の染付は、数が少ないため愛好家の間で特に珍重されています。

***************************************



***************************************

補足

1610年代から1630年代頃までの初期製品を陶磁史では「初期伊万里」と称する。この時期の製品は、白磁に青一色で模様を表した染付磁器が主で、絵付けの前に素焼を行わない「生掛け」技法を用いている点が特色である。

初期の磁器は、砂目積みという技法が使われている。砂目積みとは、窯焼き時に製品同士の熔着を防ぐために砂を挟む技法で、中国製の磁器にはみられない朝鮮独特の技法である。このことから、朝鮮から渡来の陶工が生産に携わったことが明らかである。

一方、当時の朝鮮半島の磁器は、器面に文様のない白磁であったので、呉須(コバルトを主原料とする絵具)で文様を描く染付の技法や意匠は中国由来(中国出身の陶工作)のものであると考えられる。

この初期伊万里は絵付けの発色が安定せず、生地も厚く歪みや押指の跡が残るなど粗雑な部分があり、次第に九谷焼や柿右衛門などに押され市場から姿を消してしまった。しかし初期伊万里は後に1960年頃より素朴な美しさや叙情美が再評価され、早々に市場から淘汰されたことによる流通量の少なさから以後は希少性が高く高値で珍重されるようになった。

***************************************

本作品は口縁に草文で縁取りされ、いはゆる額縁の効果を成しています。



花鳥図も洒脱で小禽の鳥の表情が良いですね。裏面には松の葉の文様が描かれ初期伊万里の作品の中でも優れたデザインとなっています。



高台内には中国の染付の影響であろうか「太□明」の銘が書かれています。

*初期伊万里の銘款種類は極めて少なく、 文字の書き方やその意味さえも知らない陶工達が無造作に中国磁器を模倣して描いた為、 解読できない文字や誤字脱字も見られます。



さてここで当方の衝動買いの契機となった最近の「なんでも鑑定団」の作品を観てみましょう。

***************************************

参考作品
初期伊万里花鳥図染付七寸丸皿
2018年9月11日 なんでも鑑定団出品作
評価金額 50万円



評価:370年ぐらい前、江戸時代前期に焼かれた初期伊万里の中皿。文様が良い。すーっと伸びた枝に小鳥が止まって、下の方に霞がたなびいている。周りをぐるりと如意頭文と木目文で締めている。額縁効果で中の絵を引き立てている。裏を見ると角福の銘が書いてある。ほぼ3分の1高台。これは初期伊万里の約束。

**************************************

評価が高くなったことで初期伊万里の贋作が数多くあるようです。古伊万里の贋作は近年問題になっていますが、例にもれず評価の高い初期伊万里にも贋作が横行していると聞いています。

高台の1/3、指跡などの原則に適っている贋作もあるようです。本物は高台が1/3ではなかったり、指跡のないものも多くあるので話は面倒くさくなります。釉薬に縮みのあるものなど見分けの簡単な贋作もありますが、最終的には胎土と釉薬で見極まるがいいと当方では考えています、これほど精巧な贋作が多くなるとこればかりは蒐集家は信頼のおける骨董商からの取引が無難なのでしょう。



当方は素人ゆえ、本作品の真贋に関しては後学によるとしておきましょう。

*本ブログにおいて「贋作考」と題していても、「伝」と表現されていても、取り上げる作品が贋作とは限りません。

**なお「伊羅保茶碗」、「三島暦象嵌文茶碗」、「三島海老紋様高台鉢」、「鉄絵刷毛目大徳利 OR 伝鶏...」、「李朝粉引雨漏手小徳利」らのブログは公開を中断しました。非常に参考となるコメントではありますが、一部は時代は特定していない考察記事であり、当方の意図するところでない不躾なコメントが続けてあったためですのでご了解下さい。当方でもブログ検索から除外されるので非常に残念です。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。