20日(金),先週に引き続き3年生の理科の特別授業が行われた。
今回の講師は,富士吉田市にある株式会社総合リサイクルセンター黒田の代表取締役である黒田光秀さんを講師としてお招きした。
演題をメモするのを忘れたため正確に記せないが,話の内容は「リサイクルと環境問題」だった。
授業は前回と同じくクラスごとに行われ,最後の授業となる3組を参観させていただいた。
3時間連続ということで,ややお疲れぎみ。しかし,張りのある声でリサイクルや環境保全に関わる問題について熱く語ってくれた。
冒頭に,1.2kg,3ℓ,10㎥の数字を板書し,この数字は何を意味するのものか生徒に問いかける。
真剣に生徒たちは考えるが,なかなか正答が出てこない。
これは,一人の人間が一日に食べる食事の重さ,飲む水の量,吸う空気の体積のおおよその数値だ。
言い換えれば,人間が生命を維持するために自然を消費する必要最低限量だ。
しかし,他の動物も同じように食べ,飲み,呼吸し,自然を消費している。
人間が他の動物と決定的に違うのは,自然に働きかけて自然に存在しないものを創り出すこと。
そして,そのままでは自然に戻らない,あるいは今の技術では自然に戻せない「廃棄物」を出すことだ。
次に提示したのは各国のトイレットペーパー。
開発途上国から先進国までのものと比べ,日本製のトイレットペーパーは白さがひときわ目立つ。
しかも他の国のものが,向こうが透けて見えるくらいに薄かったり,ところどころ穴が開いていたりなのに,適度に厚みがあり柔らかそうで明らかに「質」が良い。
トイレットペーパーは,一度使えばリサイクルできない,いわば最後のカタチ。
だから他国では,再生紙を質の悪いままで使っている。それに対して日本は,伐採した木材を原料とするバージンパルプを使用したり,同じ再生紙でも漂白して見た目を良くしている。
何が違うのだろうか。
黒田さんはトイレットペーパーを作るのに森林・環境破壊につながるバージンパルプではなく,再生紙でたくさんだと言っているわけではない。
紙,ペットボトル,アルミ缶などに限らず,一度使用した廃棄物を再生するのには,原料からそれらを作る以上のコスト(電気・水,そして人件費)がかかるということもちゃんと指摘した上でこう語りかける。
・本当に必要なものだけ手に入れる。
・ゴミの細かな分別を徹底する。
続けて,次のような山火事を消そうとする小鳥の話をする。
燃え広がる火の勢いを見て,多くの動物たちが消火をあきらめて逃げていく。
そんな中,小さな鳥が池に飛び込み翼を水で濡らして燃え盛る炎の上に飛んでは水滴を落とし続ける。
他の動物たちは,「お前の羽一つではこの山火事を消し止めることはできない。無駄なことだ」と小鳥の行為を笑う。
小鳥はそんなことは百も承知であると言い,「でも,自分が今できることをやらないではいられない」と,翼の雫を山火事にむけて垂らし続けた。
※おまけ
環境問題は難しい。
リサイクルも難しい。
便利って何だろう。
「豊かな生活」って何だろう。
山火事と小鳥の話は,「雑宝蔵経」という古代中国の物語集や南米エクアドルの先住民族の言い伝えにもある。
単行本としては『ハチドリのひとしずく いま,私にできること』(辻 信一 (監修) 光文社 (2005)。