メトロイド （3DS VC版）

ゲーム業界に大きな禍根を残した、比類なきニンテンドー3DS・1万円値下げ事件。
今じゃなんかもうすっかり価格15000円で定着した感があるが、とんでもない。俺を含めた初期のユーザーは、25000円払ったのだ。
発売半年にも満たない時期に、超大幅と言っていい値下げ額。どう考えても客を舐めている。
さすがに任天堂もやり過ぎを反省してか、すかさず「アンバサダー・プログラム」を提案し、既存ユーザーへ懐柔策を取ってきた。
これを受けたユーザーがどう判断するか……それは、ユーザー一人一人違うだろう。誰かが口を挟む問題でもない。

ハッキリ言ってしまえば、発売商品の価格をどうするかは任天堂の自由であり、客に干渉する権利などない。
客にあるのは、任天堂に失望してユーザーを止めるか、アンバサダーPに納得・妥協して水に流すか、その選択権だけだ。
んで俺としては、今後任天堂と縁を切るってのはあり得ないので、納得しようとすまいと受け入れるしかなかった。
もちろん貰うモノは貰うがな。つーかさっさとGBAの10本寄越せーや。遅れたら肝心の3DS年末ソフトと被るだろーが。
やっぱ俺は任天堂に舐められてるのかなぁ。少なくとも大切にされてると感じたことはないな。
だからキモいって……。


そんなわけで取り敢えず受け取った先行配信ファミコンソフト10本、その中で最も「おっ！」と思ったソフトが今作「メトロイド」だった。
単純に、オリジナルをプレーしたことがなかったからだ。ついでに言うとメトロイドシリーズ自体一本もやった事がない。
初代をスルーしてしまった影響が後のシリーズ作にも残り、ずっとプレーしないままになってしまった。よくある事だな。
だがメトロイドの名はもちろん知っている。主人公サムス・アランの名も、実は女ってこともオリジナル当時から知っていた。
サムスはスマブラでも常連の、マリオ・ゼルダ・ポケモンに次ぐ任天堂Bランクキャラってとこだろうか。
今回、思いがけずシリーズ最初の作品を無料で（？）プレーする機会を得た。これは願ったり叶ったりである。
ここからメトロイドシリーズに順次触れていけば、また俺のゲームが広がる。ファミコン時代の遣り残しを解消できる。
古いゲームだから色々しんどい部分もあるだろうが、俺はその辺慣れている。多少のことなら大丈夫だ。
音に聞く「探索の面白さ」、堪能させて頂こう。何気に期待してプレーを開始した。



……しかし、結論から言うと、やるんじゃなかった。後悔した。
触れるべきじゃなかった。やるにしても、続編だけにしておき、元祖に手を出すべきじゃなかった。
ハッキリ言うが、面白くなかった。多大なイライラを溜め込んだだけで、殆ど実のないプレーになってしまった。
はぁ……。



まず、プレー開始1分で物凄く不満に思ったのが「下段攻撃ができない」ことだった。
今作は一応オーソドックスな横スクロールアクションである。基本武器はショットで、既知のゲームだとロックマンに近いかな。
主人公サムスのキャラとしての大きさは、スーパーマリオで言うと大マリオに当たる。2キャラ分ってことだな。
もちろんマリオじゃないから、ダメージを食らっても小さくなったりはしない。サムスはずっとこの大きさのままだ。
そして、マリオで言うとクリボーの大きさの敵が、出だしからゴロゴロ登場する。なのにコイツらに対する攻撃手段がないのである！

いやもう、初っ端から軽く絶望したよ。「まさかこんな、クリボークラスの敵を倒せないストレスでゲームを進めるのか！？」と。
この予測は悲しいくらい当たっていた。最後の最後までストレスマックス。物凄く不満で、物凄く不愉快だった。

一応ゲームを進めれば、「爆弾」「ウェーブビーム」にて下段にも攻撃を届かせることはできる。
だが爆弾は使い勝手が悪く、ウェーブは他の武器と二者択一なので、どちらも有効とは言い難い。
「しゃがみ攻撃」、ただこれさえあれば良かったのに。これさえあればゲームは格段に面白くなったのに。
カッコ良い宇宙服の構造上、しゃがむことは出来ないとか？　ンなわけあるか。こんなもんやってられるか。
ゲームクリアー直前であっても、前方を歩くクリボーに対して有効な攻撃手段がない。アホらしいとしか言い様がない。
ああ、一応書いとくが、サムスはマリオじゃないからクリボーを踏んづけてもダメージを食らうだけだ。ダセぇったらありゃしない。



それでも不満を飲み込んでゲームを進めたら、更なる絶望・失望をすることになった。
このゲーム、難しい。無茶苦茶難しいと言っていいんじゃないか？　「スーパーマリオブラザーズ2」より難しいよ。

とにかく、敵の攻撃力がどいつもこいつも高すぎる。サムスの初期HPは30しかないのに、敵の攻撃力は全て10以上。
中には20以上を叩き出す無限噴出雑魚なんてのもいて、コンティニューで再スタートしたら30秒で死亡なんてザラ。
幾ら古いゲームとはいえ、こんな無茶苦茶なバランスは完全に想像の外にあった。マジで唖然としたよ。

そして、そんな雑魚キャラ達の動きとスピードがまた苛烈を極める。
なんちゅーかどいつもこいつも非常に嫌らしい動きをし、またそのスピードが異様に速いのである。
サムス側の当たり判定が小さいとか、被ダメージ後の無敵時間が長いといった配慮も無い。敵の脅威はそのまま真っ直ぐ襲い掛かる。
上記のように、そんな敵が非常に高い攻撃力を持っているのだ。文字通りの瞬殺シーンが多発する。
ちなみにサムスの通常ショットは威力が低く、数発当てないと雑魚を倒せない。やってて情けなくなるほどだ。
これは一体何なのか。理不尽なゲームには割と慣れてる方だと思っていたが、まだまだ俺は甘かった。
まさかこんな有名作がこんな顎外れそうな難度だったとは。全然知らなかったよ。そして知りたくはなかったよ。


ああそうそう、各所にある扉に触れると、ゼルダ風に画面が隣に移動するのだが、これがまた理不尽極まりない。
この時は純粋な「画面移動中」ということでサムスは一切動けないのだが、何と敵は動くし、当たり判定も存在するのである！
こちらはまだ画面移動の硬直中なのに、敵は先に動き、高速スピードで接近中。硬直が解けたら避けようもなくダメージを食らう。
理不尽としか言い様のない酷い有様である。一体何を考えてこんな仕様にしたのか。古いゲームであることを考慮してもあり得ん。
繰り返すが、今作は被ダメージがデカイのである。この程度のことでもゲーム進行上多大な影響が出た。
なんでこうまで俺をイラつかせるのか。ここは擁護の余地ないだろう。3DSを投げつけかけた程だった。






つってもまぁ、救済策が用意されていないわけではない。
通常ショットに対する有限の強力攻撃「ミサイル」、ジャンプに攻撃判定を付ける「スクリューアタック」など、
サムスをパワーアップさせるアイテムがフィールドの随所に用意されており、これらを取得すればサムスはどんどん強くなる。
これらを発見することが、今作のゲーム性「探索」なのだろう。メトロイドにおける探索要素は、今まで何度も耳にしたことがある。
……だが、これまた難しい。とてつもなく難しい。正直やってられなかった。俺にはこんなの無理だった。


今作のフィールドは、広い。慣れればどうか知らんが、少なくとも初プレーでは大変に広大だった。
そこに敵の激烈な強さが加わり、体感的にはますます広く感じた。1画面進めるのも大変な上、死ねばまた最初からだからだ。
しかし何より問題なのは、指針が一切ないことだろう。まずどこへ行くべきか、次にどこを目指すといいのか、全くヒントがないのだ。

そりゃそこを楽しむのが探索と言えばそれまでだが、俺の感覚で言えば今作の放り出しっぷりはあまりに無茶苦茶である。
指針が一切ないのに最初から割と広い範囲に行動できるので、まだ足を踏み入れるべきでないエリアにも普通に入れてしまう。
捻くれたルートを辿ってそこに至ったのならプレーヤーの責任かもしれないが、何せ道しるべは皆無なのである。
こちとらゲーム方針に沿って探索していたつもりなのだ。なのになんでこんな理不尽なエリアに入れてしまうのか。
もちろん、手取り足取りルートを指示しろと言ってるわけではない。だが、最低限の何かを用意できなかったのか。
このゲームを自力でゼロから攻略したファミコン戦士達は大したものだと思う。当時の根性があったとしても、俺には無理だっただろう。


また、探索がこれまた難しい。いやこれも難しいを超えて理不尽に感じる。
サムスをパワーアップし、ゲームを楽にするアイテムはたくさん用意されているが、それらは非常に嫌らしく隠されているのだ。
発見するには、何の変哲もない床に爆弾をばら撒いたり、ダメージ源と見分けがつかない溶岩にダイブしたりしなくてはならない。
これが「何か怪しい」場所なら納得できるが、今作の隠しルートの数々はどれも非常に唐突で、そこに理屈を見出せない。
結局発見するには、虱潰しにあらゆる場所で爆弾使ったりショットを打ったりするしかない。
それでも自力で頑張れる範疇なら許せるかもしれんが、フィールドは広大だし、当然敵の脅威を捌きながら探索しなければならない。
これが探索か？　こんなのが謎解きか？　ただの苦行だよ。アホらしくてとても続けられん。
50回くらい死んだ時点で力尽き、以後攻略サイトガン見で何とかクリアーした。
完全に負けだが、後悔はない。後悔するのは今作に触れたことだ。やめときゃよかった。噂を聞いて内容を想像するに止めておくべきだった……。


取れる動きに不満が募るキャラクター、鋭すぎる敵の動きとスピード、そして陰湿なアイテム隠し。
どれもとても任天堂のゲームとは思えない要素である。ファミコン初期の作品である事を考慮しても信じられん。
だが、「ファミコン初期の理不尽なゲーム」とすれば、納得できる所がある。当時はこんなゲームたくさんあったもんな。
今作は任天堂ブランドで発売したのが間違っていたと思う。これが例えばバンダイ製なら、ここまで腹立つことはなかったはずだ。
俺は完全に「任天堂のアクションゲーム」という目で今作を捉え、プレーを始めた。それが大間違いだったのだ。
1万円値下げで激しく失望したお詫びのソフトで更に失望。
今作の出来で今の任天堂をどうこう言うのはさすがに筋違いだと分かってるが……はぁ。


坊主憎けりゃ袈裟までという奴か、ゲーム内容にイライラしまくってると、主人公サムスまで嫌いになってしまった。
何より移動が異常にドンくさい。短い歩幅でバタバタ走り、効果音も相俟ってカッコ悪いことこの上ない。
敵の強さとサムスの低性能が合わさり、蚊のように儚く死にまくる。結局サムスには「ダサい」という印象が固まってしまった。
今作は割とハードなSFものということで、任天堂はサムスをカッコ良い女キャラとして表現したかったに違いない。
でもそれならもう少しゲームデザインを考えろと思う。せめて走りモーション何とかしろ。はぁ。


今作には中ボスが2体、そしてラスボスのマザーブレインがいる。
雑魚が雑魚だからコイツらも当然強い。いや、こいつらも理不尽であると言うべきか。
単調な攻撃と非常に高い耐久力を持ち、スマートな攻略がしにくい。まぁファミコンらしいボスなのかもしれないな。
中ボス2体は床ダメージ覚悟で敵の攻撃が届かない溶岩地帯から攻撃し続けるのが有効。虚しい攻略だった。
ラスボスのマザーブレインは、本体は何もせず、代わりに周囲の機械が攻撃を仕掛けてくる。
これがまた、今作のラスボスに相応しい嫌がらせっぷりで、強さよりも如何にプレーヤーをイラつかせるかを考えてることがありありと伝わってきた。
ボス戦に燃えるものが一切無い。実にこのゲームらしい、ある意味優れたボスキャラである。

ちなみにタイトルになってる「メトロイド」は、ラスボス前に登場する最強の雑魚キャラのことである。
雑魚キャラと言っても性能はラスボス以上に極悪で、敵を一定時間凍らせる「アイスビーム」がないと、恐らく100％殺される。
倒し方や取り付かれた時の脱出法も一切教えて貰えない。今作を象徴する敵である。その意味じゃ良いタイトルだな。


苦労してマザーブレインを倒しても、まだ嫌がらせは続く。
当時としては珍しく、そのままエンディングではなく、時間制限ありの脱出ミッションが挿入されるのだ。
これだけなら優れた演出と言えなくもないのだが……1キャラ分しかない足場を延々ジャンプで上らされるのは完全に嫌がらせ。
もちろん操作をミスって足を滑らせれば、落下して最初からやり直し。ラスボスを倒したプレーヤーへの労わりなどどこにもない。
もうホトホトうんざりしたが、何とか1回で脱出に成功し、ゲームクリアー。心の底からホッとした。
もうこのゲームやらなくていいから。もう俺は解放されたから。そんなに長時間やったわけではないが、本当に疲れた。

EDでサムスがヘルメットを脱ぎ、女性であることが明かされるのは有名だが、それには制限時間内にゲームをクリアーする必要がある。
俺はその条件を満たせず、クリア評価はケツから2番目だった。とことん報われないプレーだったな……。



ふぅ。今作は、周回プレーを強く推奨しているようだ。
上記のようにクリア時間による評価があるし、2周目以降ならアイテムの位置を記憶し、適切にゲームを進められる。
また隠しルートの数々を利用すれば大胆なショートカットも可能で、クリア評価の最高は1時間未満らしい。そこまで縮められるのだ。
だが俺はやらん。もう2度とやりたくない。他のゲームじゃ「勝手知ったる2周目」は魅力的なもんだが、今作は別だ。
こんだけ1周目の感触が悪いゲームをやり続けたくなるわけがない。別に2周目ならしゃがみ攻撃が出せるってわけじゃないんだし。
俺のメトロイドは、最悪の印象のまま終わることになる。非常に残念だが、実際そうだったのだからどうしようもない。


今作は、1986年に発売されている。そう、今年はゼルダだけでなく、メトロイドシリーズ25周年でもあるのだ。
何でもかんでも25周年をやるのもアレなので、任天堂は敢えて公言していないのだろう。まぁそれは正しいと思う。
俺は当然、プレーを始める際この事を意識していた。25年目にして初めて初代をプレーする、これも乙なもんじゃないかと。
そしてこれをキッカケに、未プレーの各シリーズ作品に手を出していければ……と楽しく妄想していた。つい先日なのに、もう遥か昔のようだ。
今作で抱いた最悪の印象は、もちろんシリーズにも絡む。このゲームの続編となれば、前向きにやってみたいとは思わない。
本当に罪深い。いや、悪いのはプレーした俺の方か。触れるべきじゃなかったんだ。近づくべきじゃなかったんだ。
25周年を機についに始まった俺のメトロイドシリーズが、たった1作であっさりと永遠に終了してしまった。
なんて酷い話だ。ところがどっこい、夢じゃありません……現実です……これが現実……。



……つっても、これでシリーズ全てを見限るのはさすがに乱暴かなとも思う。
SFCの「スーパーメトロイド」等は非常に評判が良いし、今作がどう正統進化してるのか興味がないわけではない。
それでも今作で受けた傷は深く、今は前向きに考えるのは無理だ。機を待とう。それが来るかどうかはゲームの神に委ねる。
まぁ無難に、アンバサダーGBAソフトに含まれている「メトロイドフュージョン」が候補かな。いつやるかは分からんが。
いつか優れた後継作が今回抱いた悪印象を取っ払ってくれればいいが……それにはまずプレーが前提だもんな。
選択肢が腐るほどある中、条件は厳しい。時間が足りない金が足りない、何よりも気力が足りないのだ。



任天堂ゲーム全てが当たりなわけじゃない。、
古いゲームに慣れているつもりでも、尚耐え切れないほどの作品もある。
当たり前の事かもしれんが、今回は勉強になったよ。嗚呼、ゲーオタも楽じゃない。
はぁ……。










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