腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

逆転裁判123 ~成歩堂セレクション~(3DS版)

2024年05月04日 18時46分12秒 | ニンテンドー3DSゲーム感想文
【ハード】ニンテンドー3DS
【メーカー】カプコン
【発売日】2015年4月2日
【定価】3229円(現物 Best Price!版)
【購入価格】1850円(新品)
【プレー時間】58時間

「逆転裁判」。もはや説明するまでもない、超有名ADVシリーズである。……これを「超人気」とは書きにくいのがちょっとアレなのだが。
逆裁はとにかく有名である。「異議あり!」を中心にした特徴的な台詞や演出の数々は、膨大な回数をパロられて世間に広く広く浸透した。
しかし、じゃあゲームもそんだけ売れてるのかと言うと……まぁADVにしては売れてはいるんだろうが、どのタイトルもそんな大爆発したことはない。
知名度と売上が全く釣り合っていない稀有なゲームシリーズだと思う。個人的には「MOTHER」も同系統だと思ってる。まその辺はどうでもいいか。
で、俺は、ちゃんとプレーしている逆裁ファンである。……ファンだよね? シリーズの大半をやってるからそうだろ! なんで疑問符なんだよ!
いやまぁ、その通りなのだが……初期、1~3までは心からファンだったと言えるのだが……シリーズが進むにつれ、思うところが増えたのも事実。
何よりもまず、整合性が気になって気になって仕方なくなった。謎解きはともかく、物語の筋として「これおかしいやろ!」があまりにも多い。
尤も、逆裁はそもそも謎解きゲームだから、そこに注力していればいいというのも正論だ。ぶっちゃけてしまえば、逆裁の物語はオマケなのだ。
それは分かってる、分かってるのだが……さすがに、幾らなんでも、これはねーだろう!! と叫びたくなるケースが逆裁には多い。多すぎる。
ちなみに生みの親の巧氏は現状シリーズ本編ではなく「大」を手掛けているが、整合性にナカユビ立てる方向性は別人制作の本編と何ら変わりない。
面白さ以上に違和感が目に付くようになり、俺の中の逆裁はどんどん株を落としていった。世間的にも、シリーズの勢いは徐々に落ちていった。
そうして本編の6と大の2以降、新作は発売されてない。6はもう8年も前だ。……なんか、なぁ。今も健在な抜群の知名度が切ない。はぁ。

で。先述のように、俺は1~3までは心から逆裁のファンだった。……まぁ今思えば「まだ整合性に関する違和感を我慢できていた」と言うべきだが。
そんな1~3は、NDSを皮切りに多数のハードに何度も移植され、現在では1~3のセットものが各機種で発売されている。更に言うとセール時は超安い。
なら1~3好きだった俺は当然セットも持ってる……のは間違いないのだが……これが、3DS版なのよね。最初にセットとして発売されたバージョンだ。
タイトルこそ現行機版と同じだが、現行機版にはどうやらバックログや資料閲覧モードがあるらしい。……ないのよ3DS版には。ただのセット。
後発の方がより豪華になるのは仕方ないかもしれんが、この格差は悲しい。それにモヤモヤとしたものを感じてなかなかプレーせずにいたのだが……
ま、時は来た。「アランドラ」をやって、旧作再プレー欲が湧いたのよね。それにセットものとはいえ厳密には新作だ。いつまでも放置はいかん。
それに現行版の方が色々揃ってるのは事実だが、3DS版には「立体視対応」という唯一無二の特長がある。岩田社長、見てますか!! 見ていない。
正直さほど良いものではないが、それでも3DSならではの楽しみだ。価値はあるのだ。うむ。己の正しさを強引に立証し、取り敢えずプレーを開始。
3作は完全に分断されていて、タイトル画面でゲームを選択し、そのまま単品をプレーするという味気ない作り。これはまぁ仕方ないかな。
無論、初代から順繰りにやる。セーブは各タイトル複数出来るようなっていて便利。これくらい当たり前? GBA版では1個だけだったんだよ……。


・逆転裁判 ~蘇る逆転~

記念すべき第一作。GBA発売初年度に颯爽と登場し、瞬く間に話題沸騰となった。……大袈裟かな? ただ当時でも話題になってた記憶はある。
システムや裁判の見せ方はこの時点でほぼ完成しており、良くも悪くも続編でも殆ど変化がない。逆に言うと初代としては異様なほど完成度が高い。
正しい証拠を突き付けて「異議あり!」が響くと、BGMが止まる。これが正解の証。この演出は何気に逆裁の快感を大きく高めていると思っている。
実際に法廷をシーンとさせている気分というか。無論、自分(成歩堂)以外は意味不明でポカーンとしているだけなのだが、そこを今から解説するのだ。
発売から20数年が経っても、この気持ち良さは何も変わっていない。素晴らしいね。逆裁は「異議あり!」に「その後の静寂」を絡めて語るべきだ。
初代は難度も適切で、理不尽さを感じることなく楽しめると思う。……まぁ俺も5回目くらいの再プレーだし、さすがに覚えてること多いからな。
不正解の際のペナルティが回数制で、5回まで大丈夫なとこも親切と言えよう。続編のゲージ制は、えげつない減りで一気に終わることもあるからな。
そして忘れちゃいけない、逆裁の「中断セーブ」は、再開してもデータが消えない! FEとは違う!!! ……俺はこれ昔思い違いをしていたのだ。
なのでセーブロードを繰り返せば、虱潰し作戦もみっともないながら可能。逆裁は謎解きゲーだが、厳しくはない。……ムカつきは多分にあるけどね。

しかし初代からして逆裁的出鱈目はバンバン登場する。……初プレー時の俺はよくこれを受け入れられたと思う。我ながらその感覚が理解できない。
まぁほんま、「そうはならんやろ」のオンパレード。あまりにも強引。只管強引、状況が悪くなっていく。成歩堂と被告がピンチに陥っていく。
何故か!? 何故世界はこんなに成歩堂陣営に厳しいのか!?!?!?!? ……そらお前、そっから「逆転」してもらうためだよ。当たり前だろ。
そう。逆裁は、名前の通り裁判における圧倒的不利な状況からの逆転勝利とその爽快感を大きな売りにしている。だってエンターテイメンツだもの。
だったら、生半可な状況は許されない。被告に有利な証拠や原告に不利な証拠が最初からあってはならない。逆転の爽快感が薄れてしまうからだ。
とにかく成歩堂側を危機的状況に。逆裁のシナリオはそのために書かれてると言っていい。下げて下げて下げて、最後に思い切り上げるために!!!

……そのためには、整合性など知ったことではない。状況は強引に被告を有罪にし、証言は出鱈目でも採用され、裁判官の目は曇りっぱなし。
またこちらは立証に失敗すればペナルティバリバリなのに、検事は何度間違っても何ら罰を受けず、「なら次これね」と出来る。あまりにも理不尽。
自然にピンチに陥るなら感情移入も可能だが、逆裁は逆転の快感に注力するあまり整合性を一切(敢えて断言)考えない。故に超強引ピンチが多発する。
そしてそれはプレーヤーに多大なストレスとシラケを誘発する。無理があるもん。現実的じゃないもん。フィクション? いやそんな次元じゃなくて。
脳を備えた人間なら抱いて当然の疑問を総スルーで進行する社会(裁判)に絶望する。そういう逆裁の闇は初代の再プレーでもガンガン感じられた。
……つっても、これ言ってるの俺以外では殆ど見ないんだよなぁ。世間は受け入れてるの? 逆転性さえあれば万事オッケーなの? うーむ……。

整合性を我慢すれば、逆裁特有の強烈なキャラクターの数々はなかなか楽しめる。亜内検事、小中大(こなかまさる)、オバちゃん、……映えるわ。
彼らはその強烈なキャラクター性を、カプコン入魂のアニメーションで非常に面白おかしく際立たせている。ハッキリ言って、見てて非常に楽しい。
あのアニメーションは逆裁のもう一つの特長だと思う。他にないやろ、あそこまでのは。多分。その魅力は今でも褪せてはいなかった。
ちなみに今作はDS版からのベタ移植に立体視を導入しただけと思われるが、そのDS版の時点でドット絵はやや強化されていたのではなかろうか。
GBA版では粗めに感じたドットが現代目線でもさほど違和感なかった。……千尋さんをもうちょい美人にしてほしかった、と23年前から思ってる。
また音楽もDS版の時点で少し豪華になっていた模様。現在では各種サブスクにサントラが置かれているが、無印版と「蘇る逆転」版が別に存在するのだ。
実際聴いてみると、蘇る逆転版の方が音質が良い。だがアレンジというほどではない。どのゲームでも原曲好き俺でも今作のバージョンの方が好みだ。
ガワに関しては目立たないながらいい仕事をしている移植(リメイク?)である。無論、シナリオはそのままだけどね。変えられんよ。はぁ。

そして!! DS版以降に付いたサブタイトル「蘇る逆転」、これは俺にとって非常に大きな意味がある。なんせ俺が知ってる初代逆裁は、GBA版だ。
再プレーもGBA版でしかやってない。つまりDS版での追加シナリオである蘇る逆転を未プレーなのだ。今回始めて触れることになる。うおおおお!!!
実際、ここは長年気になってたんだよね。追加キャラの「宝月茜」なんて、続編の成長した姿を先に知ってしまったもん。しゃーないけど悔やまれる。
そのモヤモヤを今やっと解消出来る。この追加シナリオをやってやっと俺は「逆裁本編を全部プレーした」と言えるようになるのだ。ああ長かった。
てわけで気合を入れて始める第5章。オリジナルのラストで真宵は修行の旅に出たので不在。その穴を埋める代替ヒロインこそ宝月茜ということになる。
また茜は「科学捜査」を得意とし、5章ではタッチパネルを使った指紋採取のミニゲームが随所に取り入れられている。まさにDS向けの追加要素である。
3部作で名声を得て乗りに乗っている状態(多分)だった巧舟氏が描く渾身の追加シナリオ、今こそプレーするぜ。そして俺の逆裁は完成する……!!

……うーん。ま、逆裁の追加シナリオなんだから、逆裁でした、と。いや正確にはパワーアップしてました。もちろん整合性のアレという意味で。
いや、凄い。ハッキリ言ってこのシナリオの出鱈目っぷりは続編のそれをも上回り、シリーズNo.1だったのではなかろうか。それくらい、超出鱈目。
理解不能の容疑、わけの分からない証拠、それらがまるでJK(常識的に考えて)自然であるかのように進む裁判……果てしなく逆裁のシナリオである。
巧氏は「4」で随分株を落としたと思っていたが、その前にこの初代の追加シナリオで思い切りアレだったんだな。知らんかったわ。思い知ったわ。
またこのシナリオ、良くも悪くも非常にボリュームがあり、長い。単話では恐らくシリーズ最長だろう。「まだ続くの!?」とビックリさせられた。
それにシナリオの質が見合っていればいいのだが、残念ながらそうではないので、正直「ダラダラ長い」という印象が残ってしまった。
多分、名声を得た巧氏が「好きなようにやっていいよ」と言われ、本当に好きなようにやったんだろうな。謎解き面でもそれは感じられた。
待望のプレーだったはずが、やらない方が良かったとまで思った。それでもまぁ、ちゃんと知るためにやるべきだったのだが。逆裁ファンなので。はぁ。

整合性から頑張って目を背ければ、茜は結構可愛い(個人的に真宵より好み)から、彼女と一緒に動くのは悪くない。無論ラブコメは一切ないけど。
御剣は密接に絡んでくるし、多く出てくる新キャラも逆裁らしく面白い。その辺の品質は落ちておらず、ちゃんと楽しめる部分ももちろんあった。
ま、長年の引っ掛かりを解消できたことを前向きに捉えよう。DS移植に当たっての追加要素としては十分なボリュームだったことも間違いないし。
……この頃はピチピチ夢追い美少女だった茜が、再登場した時はやさぐれアラサーになってたのはどうかと思うが。真宵の陰謀かと今ではちょっと思う。


・逆転裁判2

なが~~~い追加要素を終えて初代をクリアーしたなら、すぐさま続編。こちらは追加要素は特になく、ガワの強化以外はオリジナルと同じだ。多分。
初代の好評を受けて作られた続編。カプコンは昔から「2作目のカプコン」と呼ばれ(俺周辺)、初代を踏まえた続編での品質には定評があった。
ならこの逆裁2も大幅な進化を遂げて……っ!!! ……ということは残念ながらなかったが、逆裁の場合は初代の完成度が高すぎたと言うべきだろう。
システムの骨格が出来上がってるからさほど手を入れる必要がない。シナリオさえ書き下ろせば、十分に「大幅パワーアップの2作目」になり得るのだ。
そうして登場した逆裁2は……うむ、逆裁2だった。大幅にパワーアップ……していたかは分からん。まぁ少なくとも、俺の抱く不満を改善はしてくれてない。
ピンチの、ピンチの、ピンチの連続、そんな時~千尋さんの助言が、ほ・し・い~!! アホか。ま、そればりにピンチが続き、逆転が始まる。いつもの。
逆裁はシリーズが続くにつれ「そうなっていった」わけじゃない。初代からずっとそうだったのだ。俺はどうもこの点の認識があやふやな気がする。
逆裁とはそういうものなのだ。受け入れ耐えて目を逸らせ。さすればそなたには極上の逆転快感が与えられよう。……極上? うーん。まぁ。あるけど。

今作で明確に感じたのは、難度が大きく上がったことだ。謎解き面の難しさが初代よりずっと厳しい。それこそ「理不尽」と言えるネタもチラホラ。
誤答ペナルティがゲージ制になったことも難度アップに繋がっており、いい加減に証拠を突き付けているとあっという間にゲームオーバーとなる。
もちろん今作でもセーブ・ロードセコ手は使えるからさほど問題ないとも言えるが……「解けない謎のストレス」はゲームにおいてかなり強いもの。
それで何とか虱潰しで辿り着いた正答が「はぁ!?」なものだったら……ま、それもまた逆裁だ。理屈じゃないのよ逆裁は。裁判ゲーなのに!?
ペナルティは新システムの「サイコ・ロック」でもかなり痛く、これはまだ証拠が揃ってない状態でも発生するので、その場合は絶対に解除出来ない。
その場合は中途で諦めればいいんだが、その判断はプレーヤーに委ねられる。ハッキリ言って不親切極まりない。システムとしては面白いと思うが。
まぁこれもセーブ・ロードセコ手で解決っちゃ解決なんだが……こればっかやってるとプレーヤーとしての尊厳を著しく傷つけられるんよね。ったく。
逆裁は荒っぽいゲームである。カプコン制の有名タイトルだが、他の名だたるシリーズと比較すれば明らかに格が落ちる。悪口じゃない、事実だ。
そもそも初代が「若手のチャレンジ企画」として作られたゲームらしいからな。荒くてもいいのだ。……それが良くも悪くも抜群の知名度を得た。
本来は細々と、それこそ3作目で終えるくらいが適切だったのでは。なんてな。そんなの俺が決めるこっちゃない。カプと巧氏と、世界の選択さ。

整合性を無視すれば、キャラクター性やアニメーションを楽しめるのも初代と同じ。ハミちゃん、マックス、オートロ……可愛い面白いクズクズしい。
オートロ周りは年齢にかなり違和感を抱いたが……あの話が全員20代で進んだってのは無理がない? 10個上乗せして丁度いいくらいと思ったわ。
サーカスはトミーが相変わらず哀愁を誘う。時代に取り残された駄洒落で一人ゲラゲラ笑う彼の哀しさは、巧氏も感じるものがあると昔コラムに書いてた。
……しかしあの話、ミリカはなんでシャバにいられるのか不明。アウトだろう絶対。逆転検事で再登場した時はビックリしたわ。顔か、顔なのか!!
ライバル検事として登場した狩魔冥は、鞭を乱打するキャラ描写が普通に不快。そもそもオメー、親父がああもやらかしたのにようデカい顔できるな??
女だからか結局やり込めることも出来んし、とにかく気に食わん。続編じゃ年食ってもあのキャラ続けてて周囲の顰蹙を買いまくってると思いたい。


・逆転裁判3

初代の1年後に2が登場、その更に1年ちょい後、満を持して3が登場!! ……巧氏としてはこれにて完結なつもりだったに違いない。どう見てもそうだ。
今までより1つ多い全5章構成、過去と現在を複雑に絡ませたシナリオ、そして謎の仮面を被ったコーヒー好き、今作のライバル検事ことゴドー……。
特にゴドーのキャラはここに来て「最大のライバル」感がビリビリ感じられる見事なものだった。……御剣? 彼、結構仲間だし。それでええやん。
システム的には2とほぼ同じだが、謎解き難度は概ね適切なレベルに戻り、ストレスが減った。巧氏を含めたスタッフが慣れてきてることが伺える。
また1章での自キャラは、何と若き日の千尋さん。これが若さと言うべきか、まだ数年前のはずなのに、めっちゃ可愛い。この千尋さんマジで大好き。
当然「異議あり!」も可愛らしい声で叫んでくれる。……なんで亜内やサイバンチョは美柳なんぞに鼻の下を伸ばすんだ? 千尋の胸元を見ろよ!!!
しかし悲しいかな、これはあくまで過去の話。現実の千尋さんはとうに死んでいる。何度も憑依で出てくるけど。逆裁界のあの世はどうなってんだ……?
恒例の理不尽さはもちろん健在だが、シリーズでは比較的マシな部類にあると思う。比較的、な。今作の場合ゴドーのキャラがその辺かなり救ってる。
彼があのBGMをバックにコーヒーを持ちながら台詞を口にすれば、大抵のことは許せるのだ。ゴドーを作っただけで今作は勝ちである。巧氏、お見事。
……そして改めて、ここで終えていたら……と思ってしまう。いやそら、その後も伸び伸びシリーズが続いたならいいけどさ。そうなのか? 嗚呼。

ゲーム性は、特に変化なし。前作のサイコ・ロックのような新システムもなく、もしかしたら全く変化がないと言えるかもしれない。
そして同ハードだから見た目に進化もない。……つーか成歩堂なんてずっと使い回しだもんな。「流用のカプコン」の血は逆裁にも脈々と流れている。
続編が出ることのありがたさと苦しさを感じてしまう。「まだまだやれることが一杯ある」シリーズなんて世の中にどれだけあることか。大変やのう。
まぁいいや。俺は3の再プレーは20年ぶりくらいだと思う。強烈すぎるキャラ達はよく覚えているが、仔細は脳の向こうに消えた。割と新鮮に楽しめる。
2章「盗まれた逆転」は好きになれないが。あれ、流れで無罪になった天杉夫婦に全く好感が持てないんだよな。あいつらもキッチリ裁かれんと嘘だろ。
派手なのは一向に構わんが、倫理面ではなるべく綺麗にやってくれないとプレーヤーは引いてしまうよ巧さん。おちゃらけの方向性が間違っている。

おちゃらけと言えば、3章の芝九蔵虎ノ助は最高だね。いや、無茶苦茶やん。段ボールのバッジと逆立てた髪だけで成歩堂の偽物として暴れてたって。
「何言ってんだ、こんなの逆裁理不尽そのものだろうが」って? 違うよ。これは破天荒な面白さ。俺は何も清廉潔白なシナリオを求めてるわけじゃない。
……いや正直、20年後の今プレーしたら「幾らなんでもねーだろ」と思わないところもないではなかったが……まぁこれくらいは素直に受け入れよう。
逆裁ワールドの連中の目が節穴なことはよ~~~く知ってるからな。あれで騙せるんだよ。本編以前の話だからスルーしろ。それしかない。
芝九蔵と一緒に登場する鹿羽うらみも面白い。ちなみに最初は鹿金(鏖・みなごろし)にするつもりだったらしい。強烈すぎるので変えたとか。
このシナリオはキャラはいいのだが、整合性は……ダメですね。もちろん偽物設定は除いてだよ。あんな時間差トリックが通用するわけねーだろ。
俺は結局「逆転裁判」というタイトルから来る逆転のシナリオが嫌いなのかもしれない。それで整合性がブッチされるなら、そんなもの要らない! と。
もし逆裁が逆転性を抑えたシナリオであったなら? ……そんなイフを少し想像してしまうが、無意味すぎる。これが逆裁3、20年前のゲームなのだ。

そして全編を通して登場する最強最後のライバル検事・ゴドー。彼は文句なしである。巧氏の全てが詰まったキャラと言えるだろう。テキトー言ってる。
異様な仮面に走る3本ほ赤い線、常にと言っていいほど飲みまくるコーヒー、よう分からんが渋い台詞、痺れる大人のBGM……どの要素もとてもいい。
要は「ハードボイルド」なんだろうが、完全にその線でやれば逆裁では浮いてしまう。そこを見事に調えて、ゲームの雰囲気に合う大人を作っている。
その正体はプレーヤーにはバレバレだし、風貌の変化に何があったのかも概ね想像出来る。彼は彼なりの強い信念を持って成歩堂の対面に立っている。
うむ、良い。俺も(インスタント)コーヒー好きとして、今作プレー中は何度もBGMを流しながらコーヒーを飲んだ。手軽に真似できるのがまたいい。

……そんな感じで、シリーズでも一番と言える好きなキャラなのだが……最後に明かされる彼の動機、彼が成歩堂に向ける憎しみの理由には納得できん。
「傍にいながら千尋を守れなかった」って、あんな押し込み強盗みたいな殺人を防げってか!? アホ言ってんなよ。ボディーガードが要るわあんなん。
その場に成歩堂がいたならまだ分かるけど、そうじゃない。狙われる事情なんかも全く知らなかった。千尋の死で成歩堂が責められる理由など微塵もない。
俺はそもそも創作でも現実でも「守ってやれなかった」系の台詞が嫌いなんよね。守りきれるわけねーだろって。四六時中一緒にいる気かお前は。
繰り返すが、その場に成歩堂がいて、殺人犯にビビって動けかなかった……というなら憎むのも分かる。でも違う。そうじゃないんだよゴドーよ。
まぁゴドー自身これが八つ当たりなのは自覚してたみたいだが、それでもなぁ。何も言い訳しない成歩堂の方に寧ろ大人を感じてしまったよ。
それと、「ゴドーが千尋に惚れてた」ことはハッキリ描写されるが、逆はないんよね。無論先輩として尊敬はしてたはずだが、千尋の想いは謎のまま。
ネットには「二人は恋人同士だった」て記述もあったが、それは違うよ。匂わせ描写すらなかった。断定する材料はなかったと断言する。
今作の過程で霊体千尋には想いが伝わったはずだが、それに対する反応もなかったからなぁ。……つまりゴドっぴ、振られた? うあああぁあ!!!
いやもう死んでるんだから今更「私も……」つっても無意味、スルーするのが一番良いと千尋は判断したんだろう。彼女もまた大人なのだ。死んでるが。

今作のもう一つの売りは、成歩堂のロマンスであろう。千尋とも真宵とも欠片もその気配がなかった20代にして枯れてる疑惑の男が放つ逆転色恋。
そこはもちろん色々あって、概ね頂き悪霊ちなちゃんに純朴な成歩堂が騙されてただけとも言えるのだが……最終的には、割といい感じに収まった。
収まったんだ。成歩堂に春が来たんだ。これからも彼らはどうなるのか? それは皆さんのご想像にお任せします。――逆転裁判 完結――
……で終われば二人は幸せなキスをしたかもしれない終了だったんだけどな。非情な現実は続編を作らせた。そしてそこにはあやめは影も形もない。
今更出してもややこしくなるからであろう。ならば妙齢の女性となった真宵や茜なら……っ!! にもならない。その他女性キャラとも無論何もなし。
これもまた逆裁における「整合性のなさ」の一つかのう。……いやこれは違うだろう。違うけど。とても不自然で、とても大きな不満なのだった。はぁ。



ふぅ。思い入れのあるシリーズ初期3部作の再プレー、及び未プレーだった「蘇る逆転」の体験、どちらも綺麗に達成できた。満足である。
まぁ「逆転裁判はどこまでも逆転裁判である」ことも改めて実感できたけどね。今後シリーズの継続が難しいことも。そりゃ出すには出せるかもしれんが。
つい先日1~3に続いて「逆転裁判456」のセットものが各機種で発売された。無論バックログやおまけ閲覧等を完備した現代向け完全版である。
これで本編6本、大2本が現代に揃った。後は逆転検事とレイトンVSくらいか? ともあれ、今後は未プレーの人達も幾らでも逆裁に触れられる。素晴らしい。
続編の望みはなくとも、成歩堂(先祖含)・王泥喜それぞれで完結したシリーズが永遠のものになった。そんなに悪い話ではないよ。そう思っておこう。
俺自身は、唯一の未プレー作として「大逆転裁判2」が残っている。3DS版をとっくに確保してるんだが、放置の間に現行機で超安く売られ始めて……嗚呼。
だが元は3DSのゲームだし、最早ロストテクノロジー(ただし惜しまれてはいない)っぽい立体視にも対応している。3DS版をやる意義はあるのだ。
そのうちやろう。それが恐らく逆裁シリーズの看取りになる。……だからそう悪い話でもないって。無理に続けることの哀しみはもう身に沁みてるだろ?
比類なくピンチと逆転と面白キャラとアニメーションと強烈な理不尽を含んだ人気シリーズ・逆転裁判の今後の更なる展開を……祈りづらいまま終わり。
そもそもな? ゲームでも何でも、続編展開が何十年も続くってのがおかしいんだよ。終わるんだよ普通は、ある程度のとこで。それでいいんだよ。
昔はそんな認識がこの世界にふわっとでもあったと思う。けどゲーム業界は続いてしまった。ファミコンから40年、まだまだ続いてしまうこと確定。
続けること以上に難しい終わらせること。どうすんだ逆裁。聞いてるんかドラクエFFゼルダにその他!! ……いやそれら関係ないやろ。ほっといたれよ。
はぁ。






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6 コメント

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Unknown (ミッチェル)
2024-05-06 13:24:15
1,2,3をDS版で昔、プレイしていました。1をプレイした時にすごく面白くてすぐにクリアしてしまい、いざ2をやってみると、1とシステムが殆ど変わってないことから2はあまり楽しめませんでした。3は言わずもがな。ゲームとしてはよく出来ているのですが、最初の楽しさを超えることは無かったですね。ぷよぷよなんかでも言われてますが、あまりにも美しすぎるゲームシステムを持ったゲームの悲しき性です…

人気が出た作品の続編を作り続けるかどうか、という問題ですが、どちらとも言えないですね。何かのインタビューでポケモンのアニメの監督の人が「主人公は変えるべきでは無い、シリーズを定着させたいのならば、愛着を持てるようなキャラが居続ける必要がある」みたいなことを言ってましたが、下手に続けられるとマンネリ化するし、延命させられてる感じがして惨めですし…
Unknown (ota)
2024-05-06 23:13:50
>1,2,3をDS版で昔、プレイしていました。
DS版からですか。「蘇る逆転」を最初から体験出来たことは羨ましいです。

>ぷよぷよなんかでも言われてますが、あまりにも美しすぎるゲームシステムを持ったゲームの悲しき性です…
逆裁はシステムだけでなく、グラフィックや決め台詞、演出まで初代でほぼ完成させちゃってますからねw これが良いことなのかどうか。
それでもRPG等なら続編での変化を出しやすいのですが、よりによって読みゲーはそれが一番やり難いと言えるジャンルですからね。

>人気が出た作品の続編を作り続けるかどうか、という問題ですが、どちらとも言えないですね。
「作品(作者)」としては悩みどころかもしれませんが、こと「商品」とし見れば、人気があるなら「出さねばならない」になります。
メーカーは商売なんだからそれは当たり前のことですが、それでもやはり限界はあると思います。何事も始まりがあるなら終わりがある。これ真理。
各メーカーは今後「人気があってもシリーズを終わらせる」決断を幾つもしていく必要があると思います。同時にユーザーがそれを受け入れることも必要。
……ま、ないでしょうけどねw せめて逆裁に関してはこのまま眠っていてくれればと思います。それが多分一番いい。
Unknown (Unknown)
2024-05-07 01:01:23
蘇る逆転は同じ感想でした
さすがに長すぎ。
長くても面白ければいいけど、そうじゃないくて苦痛の方が勝るダラダラっぷり
1は自力でイケるバランスがよかったですが、2のサイコロックは書かれている欠点から苦痛すぎて攻略見ました
Unknown (ota)
2024-05-10 01:12:27
蘇る逆転はほんま長かったですね。のめり込めるシナリオでもなく、参りました。

>2のサイコロックは書かれている欠点から苦痛すぎて攻略見ました
証拠が揃ってないと100%解けないんだから挑戦させるべきではないですよね。そこが常に証拠が揃った状態で挑める裁判パートと大きく違ってました。
ネタ的には悪くないのでもうちょっと練り込んでほしかったところです。つーか裁判中には一切発生しないのは何故なんですかねw
Unknown (Unknown)
2024-05-15 23:41:46
個人的にこの3作品の中では逆裁2の最終話が主にコロシヤ周りの展開に納得できなくて一番楽しめなかった記憶がありますね。
あいつ真宵ちゃんを誘拐した紛うことなきゲス野郎なのに、この手でぶち転がせないどころか成歩堂の方から「協力してオートロ嵌めようぜ」みたいな空気を出してたのが特に…普通にオートロとコロシヤどっちも制裁を受ける展開じゃダメだったのか…?
Unknown (ota)
2024-05-17 01:28:35
>普通にオートロとコロシヤどっちも制裁を受ける展開じゃダメだったのか…?

あー、分かります。本文に書きましたが、俺はミリカや天杉夫婦にそれを思いました。
逆裁に限らず、物語の中で因果応報がなされずモヤモヤすることはままありますね。まぁそりゃ何でもかんでも逮捕されろとは言いませんが。
一応、コロシヤは仕事として真宵を誘拐しただけで、そこに主義主張はないから怒りをぶつける対象は雇用主=オートロだけでいいという理屈ですかね。
殺し屋というだけでアウトだろという正論は置いておいてw

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