アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

「偽りは毒」毒草の思い出

2021年05月15日 | Weblog
 ニラとスイセンを間違えて食べてしまったというニュース、毎年数件は、耳にします。長く生きていると、「毒草の思い出」もありまして・・・。なぬ?「このごろ、思い出が多くない?」って?そうなんです。人との会話がなくなり、一人で思い出にふけることが多いのでつい。カミサン以外の人と話すことがない日が多い。手足の退行と、脳の退行だけは著しい…。

 で、毒草というか、毒植物の話を始めます。よそ様の庭に、見事なエンジェルトランペットがありました。我が家もマネして購入しました。たくさんの、見事な花をつけましたぁ!エンジェルトランペットに適した気象だったのか、どちらさんのエンジェルトランペットもよく咲いたようでした。新聞にも、「○○宅、見事なエンジェルトランペット」などの見出しで、写真入りで紹介されていました。
 害虫が異常発生し、通常なら虫の害が無い「青じそ」や「パセリ」まで、葉脈だけを残して食い荒らされたことがありました。しかし、エンジェルトランペットは無傷。虫にも、病気にも強い花です。どうしてそんなに強いのか!?

 そんなある年、勝手に生えてきた植物がありまして…ドンドン大きくなって、白い見事な花を咲かせました。花は、エンジェルトランペットにそっくり!幹も葉も、良く似ています。散歩の人も足を止めるほど美しい花で、自分が植えたわけではなかったのですが、内心自慢しておりました。花が終わると、実をつけました。実は、「バフンウニ」と形状がそっくり。チョウセンアサガオという名前らしい所までは分かりました。

 宇江佐真理の随筆に次のようにありました(宇江佐さん、時代小説家ですが、随筆も書く)。
 (前略)町内の人が道路沿いにパンジーやベゴニアの植木鉢を並べて、通り過ぎる人の目を楽しませているが、その中にチョウセンアサガオがあって驚いたことがある。チョウセンアサガオは、かの華岡清州が日本で初めて麻酔を使った手術を成功させたとき、麻酔薬の元となった植物である。別名を曼荼羅華(まんだらげ)。全草に猛毒がある。(後略)

 「ゲ、ゲェー!こりゃ大変だ」と、ネットやら、近所の人やらから情報収集。出てくる、出てくる、猛毒情報が出てくる・・・!

 チョウセンアサガオは、全体が毒。しかも猛毒。間違って食べてしまった場合の症状は…妄幻聴、頭痛、めまい、意識喪失、呼吸停止、興奮、錯乱、炎症、悪夢…苦しんで暴れまわるさまから、「きちがいなすび」とも呼ばれているのだそうで…幼児の致死量は4~5g。樹液が目に入ると、失明の恐れがある。
 華岡青州が世界で始めて、全身麻酔で乳がんの手術をしました。そのときの麻酔「曼陀羅華(まんだらげ)」は、チョウセンアサガオの葉を乾燥したもので、「通仙散」の処方に含まれているンだとぉ!
 曼陀羅華(チョウセンアサガオ)は、鎮痛、鎮痙(ちんけい)、咳止めに劇的に効くのだそうで、劇薬だから劇的に効くんだね。ウマイいなあ!毒性があまりにも強いので、現在は使用が禁止されている…。
 エンジェルトランペットは、チョウセンアサガオの一種で、観賞用として広く栽培されるようになったが、毒草として扱われている…。似てるはずです。虫も病気も近寄らないはずです。

 とんでもないものを栽培していたもので、大麻などのレベルではないわけで。
 あのときは、日々強迫観念にさいなまれました。
 さあこれからチョウセンアサガオをどうするか?切り倒すにしても、触らなければならないし、切ったときに樹液が体にかかったり、目に入ったり・・・。切り倒せたとしても、その後の処理をどうするか?
 バフンウニ状の実を盗まれ、殺人に使われたらどうするか?実の中にある、ソバのような種は、犯罪に使いやすいだろうし…。困りはてましたよ。

 宇江佐真理を読まなければ、何事もなく、「笑って、愚痴言って、人の悪口を言って、ホラ吹いて、自分でボケて自分でツッコミを入れて」平和に過ごせていたはずなのに。数十人の幼児を死に至らしめる量の猛毒植物を持つオヤジとなってしまっていたわけで。
 「最近しばしばパトカーが我が家の周囲を警邏しているが、監視されているのかもしれない」と思ったりもしましたよ。
 …猛毒植物の栽培…犯罪になるのかねえ?逮捕された場合、「あいつ(チョウセンアサガオ)が勝手に生えてきたんです。頼みもしないのに!だから無罪にして!」と言い訳しようと考えていました。結局、チョウセンアサガオは、根から掘り起こし、目立たないところに放置しておきましたら、何年か後には消えてしまいました。

 トリカブト(鳥兜)とキョウチクトウ(夾竹桃)が猛毒だとは知っていました。キョウチクトウの枝をバーベキューの串にして7人も死んでいます(フランス)。アジサイ(紫陽花)、スイセン(水仙)、スズラン(鈴蘭)、彼岸花も毒を持つのだそうです。
 ちなみにチョウセンアサガオの花言葉は、「偽りの魅力」エンジェルトランペットも同じ花言葉。なるほど、「偽りは毒」・・・猛毒と覚られないように、美しい花を咲かせるのが、偽り。偽装ってことか。

 再認識したことは、「虫が食う野菜・果物は安全」ということです。野菜・果物を買うときは、虫食いの跡が選択のポイントですね。しかし、虫食いは市場へはほとんど出てこない。農薬が効いているため虫も食わない野菜・果物を一般消費者が食べ、生産者が市場へ出せない虫食いの安全なものを食べている?
 ひらめいた!輸入農産物の検査・検疫・・・虫を放って、食べるか食べないかを見る。安全確保はこの方法!いいんじゃないでしょうか!