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最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

2024年5月のカレンダー

2024年04月29日 | 今日このごろ

 1824年にMegalosaurusが提唱され、翌年にIguanodon属が公表された。このときにも、属名だけの提唱で、種名は少し遅れて別の研究者によって命名された。1825年のMantellの命名以前にも同じ名称が印刷されたこともあるようだが、特徴の記載が不十分であったり、命名するという意思が見られなかったりして新属名の提唱とはみなされていない。
 最初の論文はMantell, 1825で、脱落した歯7本が図示された。化石が採集されたのは、ロンドンの南約30kmのTilgate Forestというところ。Mantellは、1822年ごろからこれらの歯を収集し、国内と大陸の主な研究者に意見を求めたが、適切な回答はCuvierだけから得られたという。その回答がフランス語のままで収録されている。Cuvierはその返書の中でこれが植物食の大型爬虫類であるとした。現生の爬虫類は主に肉食性だから、Cuvierはそこに注目した。イグアナと歯の形態が似ているという。イグアナも植物食の傾向がある。

5-2 Mantell, 1825. Plate 14. 現生のIguanaの歯。

 確かに似ているが、サイズは全く異なり、Iguanodonの4分の1ぐらいしかない。図版にはイグアノドンの脱落した歯7点と、現生Iguanaの歯のスケッチが示されている。イグアナの種については「食用のもので、種は不明」という。
 Mantellは、ここに示した標本の他に幾つかを収集していた。そのうちの一つが、親戚の人の所持するところとなり、その人の移住のために現在ニュージーランドWellingtonの国立博物館・Museum Te Pa Paに保管されているという。論文に出てくるわけではないのでタイプ標本の一つではない。

 Mantellの図はあまり技術が高くないから、いつもの通りOwenの後の図を出しておく。

5-3 Owen 1849-1884, plate 23 (配置をアレンジ)

 この図は、「イギリスの化石爬虫類の歴史」vol.2, plate 23で、原図は中央に化石の薄片のスケッチが示されているがそれを取り除いて、配置を変えたもの。一つの標本で二つ目の方向の図があれば、数字の後に「a」を付け、さらにかみ合わせの面もある時には「b」が付してある。産地が明記されていない7本の歯のスケッチがある。Mantellも7本の歯だったが、同じセットを描き直したものではなく、ほとんど全部がちがうようだ。OwenのFig. 4の歯はもしかしたらMantellのFig. 1かもしれない。Owenの図の方が解剖学的な方向が吟味されている。
5月の文献
○ Mantell, Gideon, 1825. Notice on the Iguanodon, a newly discovered fossil reptile, from the sandstone of Tilgate forest, in Sussex. Philosophical Transactions of the Royal Society of London , Vol. 115: 179-186, Plate 14. (Sussex州Tilgate forestの砂岩から新たに発見された爬虫類の化石イグアノドンに関する通知)
○ Owen, Richard, Sir, 1849-1884. A History of British Fossil Reptiles. Volumes 1 and 2. Cassel & Company Limited, London, vol. 1: pp. 1-657, vol. 2: Plates Chelonia 1-48, Laceertilia 1-10, Ophidia 1-5, Crocodylia 1-45, Dinosauria 1-85. (イギリスの化石爬虫類の歴史)

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