Hidenori Nodera 野寺秀徳『輝く路の上で』

SHIMANO Racing野寺監督のブログ

私は繊細さん。機材と思考へのこだわり。

2021-01-29 07:49:24 | 日記

一昨日、選手の1名とロードバイクの部品「クランク」を交換しました。

 



 

彼が使用していたものはボトムブラケットと言われるバイク取りつけ部分の中心から、ペダル軸までの長さが172.5㎜、私のものが170㎜。

彼が希望した事はオフシーズンのうちにバイクポジションを見直し、効率よく速く走る事への試み。

直ぐ用意できるものが私の利用しているものであったため急きょ交換です。

 



 

 

私も選手時代、特に若いときにはそのような試みを頻繁に行いました。

しかし、試行錯誤を繰り返しているうちにどれが正解なのかさっぱりわからず苦労した記憶があります。

が、そんなときには私が中学生の時、憧れと共に胸躍らせて読んでいた自転車雑誌の一文を思い出すのです。

マウンテンバイクという乗り物が現れ、急成長していたアメリカのスター選手、ジョン・トマック選手の記事です。

「この日の朝、ジョンはこの新型ディスクホイール(スポークの代わりにケブラーコードを張り巡らせ、樹脂でホイール側面を覆う円盤型ホイール)をはじめて装着し、ダウンヒルレースで勝利。さすがスーパースターは何でも乗りこなす。」

と、言ったような内容でした。

 

「乗りこなす」

 

この言葉に感銘を受け、自分の競技人生において非常に重要なキーワードになったと今でも思っています。

ただでさえ身体の感覚が敏感、繊細になる選手ですが、身体や脳の疲労がさらにそれを助長し、機材や環境等を気にしすぎる事でさらに疲労が増す感覚。

多くの選手が経験しているのではないかと思います。

 

サイクリングはライバルと使用する機材が異なり、重量や剛性、その他性能も変化します。

どんな機材にも特徴を持たせれば一長一短が出る事は理解するにせよ、結果が悪かった時などはつい「レースコース等の特性に対して、ライバルが使用する機材の方が優位だったのでは?」と思ってしまう。

本能として仕方が無いし、改善点を見つけるために疑う過程は必要と思います。

 

しかしながら、ゴールラインに向う最終段階で、自身のパフォーマンスに集中することから気がそれてしまっては決して良い結果は生みません。

選手を職業にしてからは最高の機材を用意して頂く時間が殆どでしたが、もし、自分の弱さゆえにそんな気持ちが出てきそうになった時には

 

「俺はこのバイクを乗りこなす」

 

「この機材を使いこなしてやる」

 

と、心のなかで唱える事でエネルギーが湧き集中力が増す気がします。

身体に機材を合わせるのではなく、機材に身体を合わせる。

 


人は最高の環境にあるときにだけ最高のパフォーマンスが出るわけではありません。

不利な環境、危機的な状態を跳ね返そうとする時にも、感情をコントロール出来れば大きな力が湧きあがります。

‘雑草魂’や‘火事場の馬鹿力’も実際、そんな状態を表した言葉なのではないでしょうか。

と、言う事で競技者であってもそうでなくても、ネガティブな感情にとらわれそうになった時には、そんな言葉を繰り返してみる事、お勧めします。。

 


ところで、人生で初めて利用する172.5㎜のクランク。

私の身長185㎝(-内緒㎝)には長すぎます。

いくら選手の頼みだからといって、いきなりそんなものつけたら身体が拒絶し、関節を傷めてしまうではないか!と考えていました。

 


が、昨日一日利用して、感じたこのは。。。いや、自分がそんなものを使用している事を思い出したのは、実は通勤往復30㎞を終え自宅でゴージャスな晩餐を楽しんでいた時の事でした。

あれ?そういえば!と。

 


ワタクシ、今まで「乗りこなしている」と思っていた機材、実は鈍感で何も感じていなかっただけかもしれません。

「いや、俺もう選手じゃねーし。」  と開き直ってみるテスト。

立場上、製品使用感について聞かれる事もありますが「野寺はやめとけ」と自ら広めておくべきか。

 


弘法筆を選ばず。

弘法さん、実は自分の筆がどれか解っていなかっただけなんじゃなかろうか…。

 

で、結局何が言いたいかと言えば、

機材の前に自分を疑え!!

と、いうことです。

 

・・・と、いうことなのか?

 

ま、いいや。

 

ちゃおー。

コメント
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