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九月の蠅

2013-09-20 09:00:00 | おすすめ記事
 「五月蠅い」と書いて「うるさい」と読みます。
では「九月蠅い」では何と読むのでしょうか? 私は「いとしい」と読みたい。


        ★          ★          ★


 珍しく家の中に一匹の蠅がまぎれ込んできました。
この時期の蠅は、とても人懐こく(?)恐れを知らない大胆な素振りをします。
朝夕かなり寒くなったので、ほどよく発熱している人間の体が大好きなのです。
私の頭の上をぐるぐる飛び回ったり、素肌が出ている部分にしつこくつきまとって煩わしいことこの上ありません。
キッチンに行けば一緒についてくるし、おやつを食べていると物欲しそうに近寄ってくる。
パソコンで遊んでいれば足下で執拗なソフトタッチを繰り返したりと、まさにやりたい放題です。

 「いや~ん、も~う、かなわんワ

 私は丸めた新聞紙とアースジェットの二刀流で、敢然と敵に立ち向かいます。
アースジェットは細かな霧を噴射しながら蠅の行方を追いかけますが、私の意図と行動を読み切ったか、素早く姿をくらましてしまいました。

 私はもう蠅退治は諦めて、ソファに横になって本を読みながら昼寝をすることにしました。
するとまたどこからか現れて私の読書と昼寝の邪魔を始めるブンちゃん(蠅・仮名)です。
おや、いつの間にか名前までついてしまいました。

 私はブンちゃんと戦っているうちに、晩年のももちゃん(愛犬)の姿を思いだしました。
そう言えばももちゃんも、いつも私を求めていました。ひたすら私を求めるだけの一生でした。
こんなに私のことを求めるブンちゃんは、もしかしたらももちゃんの生まれ変わりかもしれない・・・
孤独な(暇な?)私の心の空隙に忍び込んだ小さな一匹の蠅の生命。
もうこれ以上無用な殺生はしたくない。
私はブンちゃんを私のペットにすることに決めました。
そして命ある限りブンちゃんに寄り添ってみようと思ったのです。

 二日目の朝がやってきました。
私がリビングに入って30分ほどすると、どこからともなくブンちゃんが現れました。
昨日より元気はないものの、今日も私の後を追いかけてくるブンちゃん。
なんともいじらしい姿です。私を認識しているかのような動作も嬉しい。
ペットにすると決めてからは、どんなにまとわりつかれても不快ではなくなりました。
この日は終日ブンちゃんにつき合って遊びました。

 三日目の朝がやってきました。
なかなか起きてこないブンちゃんを起こしてあげようと思いました。
居場所を探すのは簡単です。家の中で、私以外に心地よく発熱しているものを探せばよいのです。
いた!いた!ブンちゃんはテレビの裏側でぐっすりおねんねしていました。
今日も少し元気がなく、動作がちょっと緩慢です。 頑張れ、ブンちゃん!
 
 四日目の朝がやってきました。
テレビの裏側を覗いてもブンちゃんはいません。
ブンちゃんの気配がどこにもないのでとても心配になりました。
外遊びに行って迷子になってしまったのでしょうか・・・イヤな予感。
そこにオットーがやって来て

 「夕べ、うるさい蠅が1匹部屋に入り込んできたから、完膚なきまでに叩きのめしておいた

 ああ、やっぱり・・・私は返す言葉もなく呆然と立ち尽くすだけでした。
たとえ百万言費やしても、私の動揺と衝撃がオットーに伝わることはないでしょう。
西の危険区域(オットーの部屋)には魔物が棲んでいるので、近寄らせないように注意しなくてはならなかったのです。
蠅の寿命はたったの6週間、もう少し長生きさせてあげたかった。

 蠅をペットにすることの実験的行為はたった三日で終了しました。
そしてまたいつも通り何ごともない日々が過ぎて行く秋です。






 

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
含蓄ゆたか (燃える闘魂)
2013-09-20 21:13:28
なんだか深いですねえ。

世の中とか、人の気持ちとかって、難しい。
「哀れ蚊」という風流な言葉もありますね。
燃える闘魂さんへ (nihao)
2013-09-20 22:16:34
闘魂さん、ありがとうございます。

笑い話として書いたつもりだったのですが、何だかしんみりしてしまいました。
たとえ蠅一匹でも生死に関係することは重くなるのですね。
ももちゃんまで登場したら、もう涙、涙のnihaoです(笑)

「哀れ蚊」は俳句の季語なのですね。
哀れ蚊も秋の蠅も、すでに勢いがなくなり、ひっそりと死ぬのを待つだけの身。
そこはかとなく悲しいです。
Unknown (又三郎)
2013-09-21 22:52:01
ふむぅ~確かに深い!
最近我が家では、全く見なくなりましたが、家のなかで、ゴキブリに遭遇すると、間違いなく、新聞紙を丸めて、退治してしまう。そのゴキブリとは違うかもしれないし、そこに愛着を感じることも無理ですが、ブンちゃんに対するnihaoさんの慈愛は超越してますね。蠅を五月蝿いと思わず、人懐こいと受け止めるnihaoさんの感性は、桃ちゃんを彷彿させて、秋の日のウ“ィオロンなってるのかも
又三郎さんへ (nihao)
2013-09-22 10:16:55
あまりにも暇な毎日、秋の蠅と闘いながら、はたして蠅をペットにすることは出来ないだろうかと考えました。
我ながらバカだと思うのですが、慈愛深い人間と誤解していただけるのならありがたいです。

>秋の日のウ“ィオロン
「秋の日のウ“ィオロンのためいきの身にしみてひたぶるにうらかなし」
上田敏の訳だとこうなりますが、堀口大学だと↓なります。
「ウ”ィオロンの節ながき啜り泣きもの憂き哀しみ 我が魂を痛ましむ」
どちらも素敵ですが上田君のビール瓶の方が快調な音がする?
    
Unknown (又三郎)
2013-09-22 23:32:36
そそ!

上田君の家は酒屋で
ビールの空き瓶を叩くと
快調?海潮?な音がする

ひたぶるに うら悲し!
秋だにゃあ~!U+1F63A
Unknown (およよ)
2013-09-23 17:13:33
文学的な会話が続いておりますなぁ。

秋の蝿は本当に 飛ぶ力もよわよわと、動きものろのろしていて つまんでしまえそうです。
こんな蝿を見ると 昔の武将が箸でつかんだ話も信じてしまいますね。

さて、nihao様はペット化にいそしまれたハエですが ウチでは9月に限らず 屋外へ逃がすのが慣わしです。
ハエは明るいところを好みますので 電気を消して窓側へおびき寄せて出て行ってもらいます。
叩き潰した後の処理が面倒なので…
ハエ (すずめ)
2013-09-23 21:42:26
動いてるいるものは殺処分できませんが、蝿とか蚊は殺虫剤をブシューとやります。
蜘蛛や蟻なんかは外にだしてやりますけど。
主人は蟻の巣穴の前に砂糖を置いたりして観察してます(笑)
Unknown (うらら)
2013-09-24 14:47:25
nihaoさんといい、すずめさんのご主人といい、小動物への慈愛に満ちた生活を送っているのですね。天国への道を約束されそうです。

虫、特に飛ぶ系のものは大の苦手です。
若い頃、いまは夫となった彼と歩いていた時、寄ってきた蛾に驚いて繁華街の真ん中で大きな声で叫んだのは私です。
蠅や蚊なら退治できますが、蛾となると今でも叫びそうです。
又三郎さんへ (nihao)
2013-09-25 17:37:37
上田敏『海潮音』
これは又三郎さんの試験対策暗記術でしたよね。
ここまで工夫して頑張った又三郎少年を想像すると可笑しくてたまりません。
これはとても印象に残っている記事です。
およよさんへ (nihao)
2013-09-25 17:41:44
お返事遅くなってごめんなさい。
>昔の武将が箸でつかんだ話
宮本武蔵ですね。
蠅の動きや飛ぶ方向に法則性があるなら武蔵なら掴むことができるかも。
およよさん、蠅を屋外に逃がすのですか?
蠅は回帰性があるのでまた戻ってきますよ(←嘘です)

昔初めて招待されたお家で、甘いお茶が出てきましたが、家の方が席を外した時、お茶の中にぽとっと蠅が落ちました。
戻られてお茶を勧められ・・・若かった私は蠅が入っているとは言えず我慢して飲みました。
今でも思い出す度に具合が悪くなります(笑)

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