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あかね空

2009-04-27 11:40:00 | 読書

           
                
  山本一力 【あかね空】 文藝春秋 H13年

 2002年の直木賞受賞作。
背景となる年代は江戸中期寛政の改革の頃。
京都の豆腐屋で修業のあと、江戸深川で豆腐屋を開業する永吉とその妻、子どもたち、家族を取り巻く事件や家族を支える人々を描いた人情物語。
家族間の愛憎やそれぞれの心の葛藤が温かみのある視点で表現されている。

 市井の人々の暮らしを描いた時代小説はあまり読んだ経験がないので、この小説は新鮮な読後感をもたらした。
現代小説では、日本人の心の深層に流れる「人情」という情調を描くことはなかなか難しい。
時代小説だからこそ、貧しい暮らしの中で他人に金銭を施したり、困っている人に無償で力を貸すことなどの、人としての自然の営みをおおらかに描くことが出来るのではないだろうか。
この物語の中にも、そのような気の良い人物が数多く登場する。
もちろん親切な大家さんや長屋の店子も........

 ということで『夫VSたな子』の物語のその後。

 古びた実家を『ゼロゼロ物件(敷金・礼金無し)』で貸家にしたところ、やっと我らのチェックにパスして入居することになったたな子嬢。
しかし早一ヶ月目から家賃が支払われず困惑したことは既に書いた。
参考→【夫の苦悩】【春の嵐

 なんとたな子嬢、約束通り給料日に一ヶ月分入金してきて、ひとまず我らは胸をなで下ろした。
しかし前家賃制なので、まだ一ヶ月分が未払いのままだ。
たな子嬢の月収では、家賃二ヶ月分を一気に支払うことがいかに困難なことかは推測できるが、何としても今月中に未回収分を回収しなくてはならない。
どうしたらよいだろうと考えていたら......夫が突然
「このままではたな子も大変だろうから、前家賃制を破棄する!」
と言い出し、さっそくたな子に電話をかけた。
確かにたな子嬢はとても楽になる......。

 夫のこの裁量を、優しい大家の人情深い行為と見るか?
または戦わずして白旗をあげた大家の権利の放棄と見るか?

 電話口のたな子嬢は、この申し出に一瞬息を呑んだ。
しかし、このたな子嬢は案外立派な店子である。
「心配かけてすみません。遅れている家賃は必ず今月中に払います。」
と夫の申し出を断ったのだ。
そして、今まで狭いアパートで苦労してきたが、現在は子どもたちに独立した子ども部屋を与えることが出来、みんなのびのびと快適に暮らしていると、夫が一番喜ぶことを言ってくれたのである。
そして.......数日前、たな子嬢は約束を守り残りの家賃を入金した。

 ※ご心配をおかけしました。今月はなんとかクリアしました。
我らの心も『あかね空』です。