秀策発!! 囲碁新時代

 「囲碁は日本の文化である」と胸を張って言えるよう、囲碁普及などへの提言をします。

私はこう考える ~定石とは何か

2010年07月10日 | 囲碁の話題
 先日、5月末に『碁席秀策』へお邪魔した時、
 「根本さんはいくつ定石を知っているのか」
 と太田亮君に聞かれた。それについてはさすがに数えたこともなく、答えられるはずがないので、「それは知らない」と返事したと思う。
 そもそも、この手の質問は下手が上手にするものである。この質問をした太田君は、元院生。プロになるための修行をした経験がある実力者。プロを引退された金島先生にはたしか定先でけいこを受けている。仮にも下手である私にする質問ではないだろう。
 これは「失礼であるか」どうかの問題ではない。仮に私が本気で考えて返答したところで、太田君の囲碁の実力向上には「何の役にも立たない」。無益の質問なのである。

 なぜ、太田君はこんな質問をしたのか。以前聞いた限りでは、太田君は囲碁を始めたのが遅く、また誰かに囲碁を学んだこともなかったらしい。それでいて、自分が思うより早く強くなりすぎたようなのだ。そんなことで、一般的な囲碁ファンがするような会話などをする事もなく、院生になったのだろう。それに、今では人に指導する立場である。本来尋ねるべきは、私である。
 太田君の質問は「無益の問い」ではあろうが、太田君が今後指導者として活躍できるよう、私がこれまで考えてきたことを、率直に書いてみようと思う。それが何かしらの役に立てばありがたい。

 A;定石はいくつ知っているのか? いくつ覚えればいいのか?

 囲碁を覚えたばかりの方、あるいは初段を目指す方が良くする質問。囲碁に指導要領があれば書いてあるだろうが、残念ながら指導要領など無いし、定石学習の目安になる目標数値もない。長年囲碁の指導しているプロに聞いてもなかなか答えは出そうにない。
 ただ、私が読んできた棋書を総括すると、
 ;アマチュアが使い易いといわれる基本定石は30から50程度。
 ;基本定石から枝分かれして出来た変化図を含めると100から300程度。
 ;これまでに『定石』と認定された数は一説には1万以上。あるいは10万とも。
 以上三つが通説。さらに私の見解では、基本定石の中にも除外したほうがいい形があるのではないかと考える。それが、以下の2つである。
 ;手数は初手から10手を超えるもの。
 ;黒石と白石がすべてくっついているもの。ダメが空いていないもの。
 私がとの条件を加えたのは、私が5級の時までに覚えられた定石の主だった特徴である。手数が短く、形が簡単で、覚えやすく、使いやすい。これぞ基本定石の必須条件であろう。

 ちなみに、『定石』という漢字二文字を読み下すと、
 ①「石を定める」
 となる。これを私は、
 「(白石、黒石の双方共に)打った時点で、すぐに攻められたり、取られたりしない。そんな心配のない形」
 と解釈。

 これに対しての反論が、「守るだけでは囲碁は成立しない」という、梶原武雄先生の意見である。そこで私は、
 ②「(狙う)石を定める」
 として、定石という言葉に攻撃性のある言葉を加えてみた。梶原先生はすでに鬼門に入られたが、きっとお気に召していただけると思う。