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ブルキナファソ・ホテル襲撃事件(3)~いくつかの考察(その1)

2016-01-18 07:30:12 | アフリカ情勢
15日に発生したブルキナファソのホテル襲撃事件。ここまでの情報に基づいて、いくつか考察を行ってみたい。

過去関連記事
ブルキナファソのホテル襲撃事件
(1)速報(1月16日)
(2)続報(1月17日)~ここまでの展開


◆まず、その後のワガドゥグの様子
まず暫定値として、今回の事件での犠牲者数は29人、負傷者は30名以上にのぼった。死亡者の詳細はまだ明らかにされていないが、シモン・コンパオレ内務大臣によれば、ブルキナファソ人8人の他、大多数、少なくとも14名は西欧人。また7人の身元はまだ確認されていない。

判明しているところでは、ブルキナファソ人8、カナダ人4、ウクライナ人3、フランス人、スイス人、オランダ人がそれぞれ2。ポルトガル人が1(ただしもう一人、ポルトガル人と推定されている犠牲者がいる模様)。

他方で実行犯の捜査が行われている。何人の犯人グループがいたのか、さまざまな証言があり、これまで特定できていない。殺害された3人のジハーディストはいずれも男性で「かなり若い」。治安当局は事件現場付近、ゾーンを拡大して捜査を進めており、すでに129のホテルで捜索を行った。

現在のワガドゥグの状況は、少しづつこのショックから戻りつつある。ロシュ・マルク・クリスチャン・カボレ大統領は、ティナアコフの憲兵隊基地襲撃、ジボでのオーストラリア人夫婦誘拐事件、スプレンディッドホテル襲撃事件を、野蛮、卑劣、卑怯な、そして前例のない規模の行為、と断じた。国内の主要な道路では厳しく検問が行われている。

ここまでの主な参考記事
Après l'attaque terroriste de Ouagadougou, le deuil et les questions(RFI)




ではここから先、ンボテ独自の考察を加えてみたい。

◆考察1~襲撃事件の戦術論
まず今回の事件で起想されるのは、マリ・バマコのラジソンホテル襲撃事件と酷似していることだ。

特にその軍事的意味の酷似が目を引く。人の寝静まった深夜ではなく、朝や夕の人の動きのある時間を狙った犯行。外国人が多く集まる高級ホテルに照準。聖戦士、というよりはいわば「鉄砲玉」のような形で若年の実行犯動員。爆発→襲撃→放火と、少人数が短時間で現場を混乱の極みに陥れ、最大の被害と攻撃目標の制圧を目指す戦術(tactique)。この作戦を成功ならしめるため、表通りの道路に面した戦略的縦深性の薄い構造物を選択、など。バマコでの事件の死亡者は27人とされたが、被害者数が似通っているのも、作戦の類似性と無関係ではないと思われる。

このような類似性から、単純な断定は慎むべきだが、一報を耳にした時から、アル・ムラビトゥーンの犯行を疑った。


◆考察2~アル・ムラビトゥーンの政治論
すでにンボテブログでも繰り返し述べてきているが、隣国のマリではこのように外国人を狙った無差別襲撃型のテロは、昨年以降3件立て続けに発生している。そしてそれらへのアル・ムラビトゥーンの関与が疑われている。

マリ・バマコ襲撃から読み取れるサヘル地域イスラム武装勢力図

3月のバマコのレストラン「ラ・テラス」襲撃事件、8月のモプチ州セバレのホテル襲撃事件、11月のバマコにおけるラジソンホテル襲撃事件。どれも襲撃、制圧、人質という手口が取られてきた。またこれらの事件、いずれも金曜日に発生している。ここに必然はあるのか。

またこの事件、2013年1月16日に発生したアルジェリア・イナメナスガス田襲撃事件から、ほぼちょうど3年目に発生している。このことは関係しているのか。そういえばこれも、アル・ムラビトゥーン首謀のモクタール・ベルモクタールが「血盟団」の名で引き起こした事件。この時の作戦も襲撃、制圧、人質という戦術だった。いわば「おはこ」の攻撃パターンとしてはまってきている。


◆考察3~イスラーム武装勢力の地政学
2013年のイナメナス事件は、仏軍のマリ北部奪回作戦開始とともに引き起こされた。その後、仏軍作戦進行とともに、イスラーム武装勢力は同地域からは一時的に影を潜めてきた。そんな中、リビア南部は一つのエルドラドとなってきた。

その後、仏軍作戦の縮小と再編、マリ北部における和平交渉の遅れ、マリ当局の実効支配能力の欠如などを背景に、2015年初頭ころからイスラーム武装勢力が再びこの地にプレゼンスを示す兆候が報じられ、一連の襲撃事件発生につながっている。

こういった中、フランス外務省は自国民に、東部のニジェール国境に近い地域と、パルク・ドゥブルヴェ(Parc W)国立公園への渡航を禁止する渡航情報を発出した。ちなみに同国北部~北西部のマリ、ニジェール国境は、すでに渡航禁止の措置が取られてきた(下記記事参照)。

パルク・ドゥブルヴェ(Parc W)には行かないでください~西アフリカの動物事情(8)

ンボテは12月21日にアップしたこの記事の中でこのように述べた。
これまでイスラーム武装勢力の活動勢力がまだ浸透していなかったブルキナファソ。しかし今年の4月4日、マンガン鉱がある北部のタンバオでルーマニア人が誘拐され、アル・ムラビトゥーンが犯行声明を発出している。また10月9日、マリ国境に近いブルキナファソ領内の町でもでもジハーディストによるものと思われる襲撃で7名がなくなっている。

パルクWはニジェール川に沿って、マリ北東部のガオにつながるルートを持ち、またその経路上にはニジェールの首都ニアメが位置する。地政学的にジハーディストがここに拠点を設けるとすれば、治安当局にとって好ましくない状況となる。


奇しくも今回の事件、この推定の延長線上に位置付けられるようにも見える。だとすれば、当面ブルキナファソには警戒が必要ということになるだろう。


だいぶ長くなってしまったので、続きは次回としたい。

(つづく)

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