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マリ・バマコ襲撃から読み取れるサヘル地域イスラム武装勢力図

2015-11-23 09:20:39 | アフリカ情勢
20日に西アフリカ・マリ共和国、首都バマコで発生したラジソン・ホテル襲撃事件。顛末は昨日の記事で述べたとおりだ。

【号外】マリ・バマコのラジソン・ホテルでテロ攻撃、27人が死亡~アル・ムラビトゥーンが犯行声明

その後の報道で、死者数などに振れがみられる。国連マリ多次元ミッション(MINUSMA)は22名、イブラヒム・ブバカル・ケイタ大統領(IBK)は21名と発表している。死亡者には13名の外国人が含まれ、内訳はロシア人6、中国人3、ベルギー人1、アメリカ人・セネガル人が各1となっている。


今回の襲撃に関し、事件の首謀者についての情報が交錯している。少し整理してみたい。

20日の事件発生後、程なくイスラーム武装勢力「アル・ムラビトゥーン」が、モーリタニアのアル・アクバル、カタールのアル・ジャジーラの二つのメディアを通じて犯行声明を発表した。

アル・ムラビトゥーンは昨日の記事でも述べたとおり、アルジェリア人のモクタール・ベルモクタールが指導者である。彼はアルジェリア系イスラーム過激派GIA、GSPC、そして「マグレブ諸国のアルカイダ」(AQMI)の流れを汲む。2013年1月、「イスラム聖戦士血盟団」の名の下に、アルジェリアのイナメナスガス田襲撃事件を首謀。バマコ市内でも2015年3月に「ラ・テラス」事件(レストラン襲撃)を引き起こしたとされる。

(モクタール・ベルモクタール、RFIウェブサイトより)


仏のルドリアン国防相は20日、TF1のインタビューの中でアル・ムラビトゥーンの関与に言及。マリの情報当局も同じ立場を取っている。

一連の報道の中で、今回の事件には首謀者モクタール・ベルモクタールが「直接」関与している、とのニュアンスが伝わっている。この情報は大変重要だ。モクタール・ベルモクタールは複数回にわたり殺害されたとの情報が流れているが、研究者間でもその真偽は定かではなかった。そんな中、2015年初頭頃からマリ国内に対するアル・ムラビトゥーンの影が目立ち始めている。このような事件の実行力の背景には、ベルモクタールの存在があるのではないか、やはり生存していたのではないか、との憶測を呼ぶ。


またもう一つの注目点。今回のバマコ襲撃事件の犯行声明では「兄弟たるAQMIとの協力関係のもと実行された」と合わせて述べられている点だ。

関係筋によれば、AQMIのマリ北部領域を主導しているのはアルジェリア人のヤヒヤ・アブ・アマン。彼の関与が最も疑わしいという。本名ジャメル・オカシャ、2004年頃からマリ北部に入り、のちにAQMIのマリ北部における首長に任命される。2013年に指導者アブデルアミド・アブ・ゼイドが逝去すると後継者の一人と指名された人物だ。


さらに、新しい情報が飛び込んできた。現地時間22日夜、マリ中部モプチ州を根拠とするマシーナ解放戦線(Front Libération de Macina: FLM)もまた犯行に関与したことを声明した。このこととアル・ムラビトゥーンの犯行声明との関係はまだ分かっていない。

(RFIフラッシュニュース)


このFLM、実態がまだよくわかっていない。首謀者はプル族のマリ人、アマドゥ・クファ。2015年初頭からマリ中部で襲撃、人質事件などを活発化。8月マリ中部のセバレで発生したホテル襲撃事件を首謀したとされる。さらに同月、コートジボワール国境に近いマリ南部の襲撃事件でも関与があったとされる。

FLM はイスラーム武装勢力アンサール・ディーンに近いとされるほか、上記のセバレ事件ではアル・ムラビトゥーンとも共謀したと報じられる。しかしFLM自体が発出した文書やSNSなどは一切確認されていない。組織体そのものもほとんど分かっていないのだ。

あるマリ研究者によれば、FLMは「イスラーム武装勢力」というよりは「フルベ人の歴史的主張を代弁する過激派勢力」と言えるのではないか、という。また別のイスラーム研究者からは、イスラーム武装勢力であれば、本来主権国家の概念を否定する立場にあり、'Libération'の名称はそもそも相容れない、との指摘もある。なるほど、トゥアレグ族のアザワド解放戦線(FNLA)も'Libération'を標榜しているが、彼らは断じてイスラーム武装勢力ではない。

ここへきて首謀した実行犯は二人、英語を話す黒い肌の、非常に若い男たちであったという。ナイジェリア人ではないかとの推定のもと、特定が急がれている。FLMとの関係はあるのか?



まとめに入ろう。AQMI、アンサール・デイーン、アル・ムラビトゥーンといったサヘルの武装勢力間にはライバリティと衆参離合、共同歩調など多面相の関係がある。しかしここへきて、協調関係のトレンドにあることは危惧される。

またFLMなどマリ国内の新しい過激派勢力、それまで比較的平穏であった中部地域、また首都バマコを含むマリ全体の治安コンテクストの悪化が、国民和解と再統合の進展とともに今後のマリを占う大きな注目点となろう。

(つづく)

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