月末の金曜日の午後から休みましょうという「プレミアムフライデー」が浸透しないので、週明けの月曜日午前中を休む「シャイニングマンデー」をはじめましょう、なんて感じの報道がされてネットで騒ぎになっていたけれど、事実はちょっと違うようだ。
つまり、経済産業省内で「プレミアムフライデー」を取れなかった経産省職員が月曜日午前に振り替え休みを取る際の愛称が大げさに伝わったらしい。
「自分の役所すらなかなかできないことを企業に押し付けるな」とか、
「そもそも月末の金曜日なんて忙しいに決まっているだろ」といった正論はさておき(おけないが)、
「経済産業省」というお役所のことを考えてみた。
もとは「通商産業省」略称「通産省」といった。
通産省の官僚といえば、城山三郎の「官僚たちの夏」である。
官僚たちの夏 (新潮文庫) | |
城山 三郎 | |
新潮社 |
高度経済成長期を支えた通産省官僚たちの群像劇。所得倍増計画で知られる池田勇人から佐藤栄作のころだから、もう50年前の時代を扱っているわけだが、そのころの通産省官僚たちのそれぞれの想いが面白い。
「官僚指導経済」
とは、この小説の主人公格にあたる風越の言葉である。とかく過当競争など暴走しがちな民間を行政指導によって正しい道に導こうという考え方である。
戦時下から敗戦直後の統制経済から自由経済への過渡期であればこの志向は正しい。池田首相も偉かったが、当時の官僚も偉かった。敗戦国の日本を奇跡のように立ち直らせたのだから。だから、この小説は熱い。映像化もされる。
だけど、通産省から経済産業省に変わった今でも、この小説の背景から50年経ったいまでも、経産省官僚のみなさんは、こんな幻想を抱いておられないだろうか。
「自分たちが日本の国を導いている」と。
月末の金曜午後から休みましょう!→どっかーんと消費拡大!
クールジャパン戦略っ! → ニッポンのモノが海外でどっかーんと売れまくる!
皮肉なことに、「官僚たちの夏」の風越は、通産省そのものの存在意義に悩んでいる。いや、この昭和三十年代~四十年代ほど通商産業政策が重要だった時代はなかったと思うけど、悩んでいるのだ。
他の省庁と比べて予算も許認可権も少ないし、かといって海外との関係でむかしのようには行政指導もやりにくい。となると単発の、打ち上げ花火のような政策しかない、なんて言ったら懸命に仕事をしておられるみなさんに失礼だけど、そう思ってしまう。
小説の官僚たちは、冷房もない庁舎で激論を戦わせて、政策を練り上げていった。いまの官僚たちは涼しい部屋で、広告代理店やコンサルタントのパワーポイントによるプレゼンを聞きながら、カタカナ言葉を連発してマウンティングに余念がない。そんな薄ら寒い光景が浮かんでくるのは、私だけだろうか。