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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

共食(ムギブンmegibung)

2016年04月21日 | 家・わたくしごと

 バリ東部には、ムギブンmegibungとよばれる共食の習慣がある。日常ではなく、さまざまな儀礼の中で、4,5人が一皿を囲み、三合近いご飯に少しくぼみをつくり、そこにバリ料理ラワールやサテーなどをおきて、これを各自が手をつかって食べる、というものだ。「一つ皿を囲む」というが、まさにその延長戦上にある。
 まだ20代のころ、生まれて初めてこの食事方法を経験したときには仰天だった。取り皿がないため、手でとったおかずやご飯を直接、自分の口に運ぶわけで、それを繰り返す。つまり写真に写っているまだ共食前の美しい光景は、数分後には、ぐちゃぐちゃのすごい状況へと変わっていくのである。(さすがにその光景は写真に撮影しなかった。だいたい手がベトベトで写真なんて撮影できない。)
 仲間意識がなければ、なかなかこの食事には抵抗があるだろう。「不潔」という二文字で片づけてしまうことだってできよう。しかし「同じ釜の飯を食う」、「一つ皿を囲む」という表現がどれも食事を扱っているように、それが不思議と「仲間意識」を生むというのもまた事実である。このムギブンは、まさにその究極といっても過言ではない。
 ちなみに、この食事とともにカランガッスム地域の成人男性は、椰子の木から採取した液体を発酵させた醸造酒トゥアッtuakを飲むことが多い。彼らにとって、ムギブンとトゥアッの組み合わせの食事は最高の至福の時らしい。ちなみに私はちょっとすっぱいこのお酒が苦手であるが、ムギブンには抵抗がなくなってしまった。慣れというのは不思議なものである。


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