朝日杯将棋オープン戦の準決勝、決勝の観戦に行ってきました。
500名の定員の3倍を上回る1800通の応募があったとのこと、かなりの倍率を突破しないとここには来られません。
その人気の大きな要因は、準決勝に残った豪華な顔ぶれということもあるけれど、もうひとつはトップ棋士の熱戦を至近距離で観戦できること。
対局の臨場感をこれだけガチで味わうことのできる機会はまたとないと思います。
開場の10時よりちょっと前に行ったのだけど、すでに長蛇の列。僕の後ろにも知ってる顔も含め、どんどん列が長くなります。
女性も子供もたくさんいて、将棋の普及は確実に進んでいることを実感。
10時20分開演。
ホールでは大盤解説会が行われます。
解説は藤井九段、聞き手は上田女王。
この二人のコンビは天下一品。難しいプロの将棋の醍醐味を楽しく、わかりやすく伝えてくれる。
まずは準決勝二局を左右に移動しつつ、交代に代わる代わるの解説。
羽生三冠vs.渡辺竜王という今一番注目の一局と谷川九段vs.菅井五段という関西ベテラン新鋭対決。
最初はしばらく藤井九段の見どころや序盤の解説を聞きながら二局それぞれの成り行きを見守っていました。
そして中盤にさしかかったあたり、ホールを抜け出して対局室の方に移動しました。
すでに緊迫感でいっぱい。
対局者を取り囲んでいる椅子席のまわりに幾重にもファンが集まって真剣に注視しています。
静寂と緊張感と穏やかな熱気。
これが準決勝の羽生・渡辺戦が始まる前の対局室の風景です。(もちろん対局中は撮影禁止)
大きな会場のステージ上の対局を客席から観られるJT杯とか達人戦のような公開対局とはまた全然違う。
対局者の表情、息遣い、見え隠れする微妙な心理など、これほど近いところで同じ空気を吸いつつ観戦できるというのは、これは将棋ファンにとってはまたとない至福のとき。
この空間の中で終局までの数十分間、後ろの方からではあったけど、準決勝の二局をドキドキしながら観戦していました。
盤の周辺、その一角の空間だけ空気の濃密感が違う。
何かの計器で測ったらそこだけ色が違うのではないかと思えるような不思議な世界。
すべての脳細胞を総動員して読みの深淵の限界を極めていく。
盤を囲む棋士たちの脳波や魂のぶつかり合い、そこから立ち上る凛とした空気が波紋となって対局室全体に広がっていく。
観戦している我々をどんどん包み込んでいく。
我々が次第にその空気に、波動に感染していく。
観戦者が感染者になっていく。
思考の深さ、一点の曇りもない研ぎ澄まされた精神世界に身を委ねてみる。
駒の音、チェスクロックの音、そして秒読みの抑えた声。
それ以外は静寂が包んでいる。
席を立つ人、動き回る子供たち、多少の混雑で気が紛れそうなこともあるけれど、
ファンの食い入るような視線の強さが対局だけを浮き上がらせている。
ほんの2メートルほど先で、あの羽生三冠とあの渡辺竜王が盤を挟んで苦悶している。
深遠な闇の中をもがきつつ進んでいきながら一局のまた新しい素晴らしい将棋を生み出していく様。
最善手を生み出すための魂のうめき声がかすかに聞こえる気がしてくる。
空気が濃密だからこそ、その波紋が伝わりやすいし、どこまでも勢いが衰えることなく伝播していく。
崇高で、まっすぐで、真摯で、気高い波動。
謎に満ちて、熱を帯びて、ビンビンと伝わってくる。
ここはあたかも深海のようだ。
ピーンと張りつめた空気は重い。
しかし、息苦しいわけではなく、有機質の温かさがどこかにある。
どこかに洞窟はないのか、どこかに湧水があるのでは。
ゆったりとした時の流れの中で深海探検の旅は続く。
『負けました。』
ちゃんと聞き取れる穏やかな声がした。
将棋の内容は他のサイトを見ていただくことにして結果は渡辺竜王と菅井五段が勝って午後の決勝戦に進みました。
お昼を食べに外に出て再び会場に戻るといよいよ決勝戦。
いつもどおり準決勝で敗退した棋士も大盤解説に加わって、藤井九段や上田女王との掛け合いが始まります。
まずは谷川九段。新会長としての激務の中、運営だけでなく棋士としてもここまで残っていられる実力、大したものです。
そしてお待ちかねの羽生三冠。
羽生三冠の解説はなかなか聞けないのでこれは貴重です。会場は皆目が輝いてました。
決勝が終わり、対局者が登場。感想を述べる。
渡辺竜王が無類の強さを発揮して、準決勝、決勝とも快勝。
3連敗中だったこともすっかり吹き飛ばして堂々の初優勝です。
たいがーさんたちとのアフターも含め、すっかり将棋の素晴らしさに浸った一日でした。
ありがとうございました。
500名の定員の3倍を上回る1800通の応募があったとのこと、かなりの倍率を突破しないとここには来られません。
その人気の大きな要因は、準決勝に残った豪華な顔ぶれということもあるけれど、もうひとつはトップ棋士の熱戦を至近距離で観戦できること。
対局の臨場感をこれだけガチで味わうことのできる機会はまたとないと思います。
開場の10時よりちょっと前に行ったのだけど、すでに長蛇の列。僕の後ろにも知ってる顔も含め、どんどん列が長くなります。
女性も子供もたくさんいて、将棋の普及は確実に進んでいることを実感。
10時20分開演。
ホールでは大盤解説会が行われます。
解説は藤井九段、聞き手は上田女王。
この二人のコンビは天下一品。難しいプロの将棋の醍醐味を楽しく、わかりやすく伝えてくれる。
まずは準決勝二局を左右に移動しつつ、交代に代わる代わるの解説。
羽生三冠vs.渡辺竜王という今一番注目の一局と谷川九段vs.菅井五段という関西ベテラン新鋭対決。
最初はしばらく藤井九段の見どころや序盤の解説を聞きながら二局それぞれの成り行きを見守っていました。
そして中盤にさしかかったあたり、ホールを抜け出して対局室の方に移動しました。
すでに緊迫感でいっぱい。
対局者を取り囲んでいる椅子席のまわりに幾重にもファンが集まって真剣に注視しています。
静寂と緊張感と穏やかな熱気。
これが準決勝の羽生・渡辺戦が始まる前の対局室の風景です。(もちろん対局中は撮影禁止)
大きな会場のステージ上の対局を客席から観られるJT杯とか達人戦のような公開対局とはまた全然違う。
対局者の表情、息遣い、見え隠れする微妙な心理など、これほど近いところで同じ空気を吸いつつ観戦できるというのは、これは将棋ファンにとってはまたとない至福のとき。
この空間の中で終局までの数十分間、後ろの方からではあったけど、準決勝の二局をドキドキしながら観戦していました。
盤の周辺、その一角の空間だけ空気の濃密感が違う。
何かの計器で測ったらそこだけ色が違うのではないかと思えるような不思議な世界。
すべての脳細胞を総動員して読みの深淵の限界を極めていく。
盤を囲む棋士たちの脳波や魂のぶつかり合い、そこから立ち上る凛とした空気が波紋となって対局室全体に広がっていく。
観戦している我々をどんどん包み込んでいく。
我々が次第にその空気に、波動に感染していく。
観戦者が感染者になっていく。
思考の深さ、一点の曇りもない研ぎ澄まされた精神世界に身を委ねてみる。
駒の音、チェスクロックの音、そして秒読みの抑えた声。
それ以外は静寂が包んでいる。
席を立つ人、動き回る子供たち、多少の混雑で気が紛れそうなこともあるけれど、
ファンの食い入るような視線の強さが対局だけを浮き上がらせている。
ほんの2メートルほど先で、あの羽生三冠とあの渡辺竜王が盤を挟んで苦悶している。
深遠な闇の中をもがきつつ進んでいきながら一局のまた新しい素晴らしい将棋を生み出していく様。
最善手を生み出すための魂のうめき声がかすかに聞こえる気がしてくる。
空気が濃密だからこそ、その波紋が伝わりやすいし、どこまでも勢いが衰えることなく伝播していく。
崇高で、まっすぐで、真摯で、気高い波動。
謎に満ちて、熱を帯びて、ビンビンと伝わってくる。
ここはあたかも深海のようだ。
ピーンと張りつめた空気は重い。
しかし、息苦しいわけではなく、有機質の温かさがどこかにある。
どこかに洞窟はないのか、どこかに湧水があるのでは。
ゆったりとした時の流れの中で深海探検の旅は続く。
『負けました。』
ちゃんと聞き取れる穏やかな声がした。
将棋の内容は他のサイトを見ていただくことにして結果は渡辺竜王と菅井五段が勝って午後の決勝戦に進みました。
お昼を食べに外に出て再び会場に戻るといよいよ決勝戦。
いつもどおり準決勝で敗退した棋士も大盤解説に加わって、藤井九段や上田女王との掛け合いが始まります。
まずは谷川九段。新会長としての激務の中、運営だけでなく棋士としてもここまで残っていられる実力、大したものです。
そしてお待ちかねの羽生三冠。
羽生三冠の解説はなかなか聞けないのでこれは貴重です。会場は皆目が輝いてました。
決勝が終わり、対局者が登場。感想を述べる。
渡辺竜王が無類の強さを発揮して、準決勝、決勝とも快勝。
3連敗中だったこともすっかり吹き飛ばして堂々の初優勝です。
たいがーさんたちとのアフターも含め、すっかり将棋の素晴らしさに浸った一日でした。
ありがとうございました。