即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

将棋の100年後

2008年07月19日 01時07分58秒 | 将棋
将棋 (日本の名随筆)

作品社

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古本屋で(105円で)買ってきた1991年発行のこの本。

名随筆というタイトル通り、ご覧のような豪華ラインアップです。

将棋(菊池寛)
聴雨(織田作之助)
将棋名人戦を見る(深田久彌)
将棋記者の立場(天狗太郎)
決戦前夜(芹沢博文)
将棋ごころ 抄(加藤治郎)
駒台の発案者/手数将棋(関根金次郎)
降級前後 抄(山田道美)
将棋評―童馬山房夜話146(斎藤茂吉)
将棋の話(外村繁)
八段二上達也(山口瞳)
真剣勝負(内藤国雄)
将棋名人戦見物(上林暁)
2人の名人 1(倉島竹二郎)
将棋の話―風神帖1月10日(亀井勝一郎)
将棋の来た道日本篇 抄(大内延介)
不惜身命―金子金五郎九段(東公平)
新手一生―升田将棋の在り方(藤沢桓夫)
プロは孤独(蛸島彰子)
升田先生の素顔(桐谷広人)
坂田三吉―王将(吉屋信子)
67歳の鉄人・大山康晴(湯川恵子)
将棋の相手(木山捷平)
将棋の部屋(滝井孝作)
女流名人・林葉直子(国枝久美子)
将棋の鬼(坂口安吾)
将棋(井伏鱒二)
極道将棋(団鬼六)

いろいろ紹介したいのだけど、
まずは、内藤九段の随筆「真剣勝負」
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「100年後将棋はどうなるか?」、という座談会の話。
(まだコンピュータ将棋、ソフトなどというものはほとんど影も形もない頃だと思う。)

将棋術はどんどん進歩していくであろうから、百年後には結論が出ているのではないか、と。

もしそうであれば、

A.将棋は一手でも早く相手の玉を詰めたら勝ち。したがって先手必勝だ。
B.後手勝ちだ。互いに同じように駒を進め合ったら、敵味方の歩が向き合う形になり、先に突いた方は全部取られてしまう。
C.千日手無勝負になる。

いずれにしろ結論が出てしまうと、タイトル戦など意味がなくなり、プロ棋士は解散を余儀なくされる。

でももしそうなったら、その時には、香が一つだけ後ろに下がれるというルールに変えればいい。それでまた100年はもつでしょう、と。

内藤九段の予想。

「将棋の未来は、無勝負引き分けになるように思う。
ただし100年やそこらでは絶対に結論が出ない。

それはともかく、
神に近いような最高の技量の二人が争えば、
中盤睨み合ったまま、互いに動けなくなるのではないか。
だから無勝負。
動けば斬られるとすれば、じっと待つよりない。」

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これを読んですぐに思い出すのは、先日のプロフェッショナル 仕事の流儀でも取り上げられた今回の名人戦。
予期せぬことにどれだけ出会えるかが勝負の羽生・森内の戦い方。

ものぐさ将棋観戦ブログのshogitygooさん書かれていたような

「深遠感、難解感、晦渋感、重苦しい感、駆け引き感、繊細感、哲学感、手細工の工芸品感、緻密感」

参考:《名人戦の文章力》《名人戦の文章力・その2》

そして、
羽生名人自身がインタビューで答えていたように、

「難解、我慢、優劣不明、じりじりとした神経戦。」

月刊文藝春秋8月号で羽生名人が書かれていた、

「お互い有効な手がなくなり、双方ともパスをできるものならしたいような局面」(第4局に関して)

という記述。

「飛車を浮いたり引いたり、金を寄ったり戻ったり、銀が出たり引っ込んだり・・・・。
 そんな応酬が延々と続き、わがことながらちょっと呆れました。」(同上)

今回の名人戦のような印象は、以前には多分なかったのではないかと思います。

それだけ、内藤九段の言われている、

「神に近いような最高の技量の二人が争えば、中盤睨み合ったまま、互いに動けなくなるのではないか」

という状況が、一歩一歩現実化しているような気がする。

地球温暖化で、ツバルの海面が年々数cmずつ上昇しているように。

「無勝負」、という未開の土地に向かって、将棋と言う生き物がぬるぬると進んでいるような気がしてならない。
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2 コメント

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暑いですね(関係ないタイトル) (shopgitygoo)
2008-07-19 19:34:55
内藤先生は「予言者」ですねー。
ご紹介ありがたいけど、私の言葉なんかと並べてもらったら恥ずかしいじゃないですか(笑)。
それはともかく、名人戦の例もそうですが、深く読めば読むほど大技がかかりにくくなるというのは、常識的に考えてもそうなのかもしれません。現在は、技術が飛躍的に進歩したといっても、まだまだ「粗い」段階なのかもしれませんね。羽生さんも、「将棋の神様から見たら、まだまだ現在の将棋は穴だらけだろう」とどこかで言われていました。
ついでに言うと、現在猛威を振るっている穴熊も、さらに将棋の読みの正確性があがると、それほど優秀な戦法とは評価されるなくなるんじゃないかと、ひそかに思っています。
それにしても、いい本見つけられましたね。よだれが垂れそうな名前がズラズラと・・。
返信する
北京五輪、もうすぐですね。(関係ないタイトル) (nanapon)
2008-07-25 23:39:42
shogitygooさん、こんばんは。

>それはともかく、名人戦の例もそうですが、深く読めば読むほど大技がかかりにくくなるというのは、常識的に考えてもそうなのかもしれません。現在は、技術が飛躍的に進歩したといっても、まだまだ「粗い」段階なのかもしれませんね。

そうですね。
粗いところをひとつひとつ皆でつぶしていってるわけですね。しらみつぶしで。

>ついでに言うと、現在猛威を振るっている穴熊も、さらに将棋の読みの正確性があがると、それほど優秀な戦法とは評価されるなくなるんじゃないかと、ひそかに思っています。

そうかもしれません。あれだけの戦法が流行っては廃れ、どんどん進化してます。
今の常識はいつまで持つんでしょうか。
ごきげんもごきげんでなくなる時が。。。

>それにしても、いい本見つけられましたね。よだれが垂れそうな名前がズラズラと・・。

syogitygooさんだったら、膵炎で死にそう、じゃない、垂涎ですね。想像つきます。

亀井勝一郎、そして、なんと言っても坂口安吾ですか。
なんならお貸ししましょうか?
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