反乱軍の目の前で、反乱軍リーダーのコーザが"国王軍"によって撃たれた。
それが国王軍ではなく、国王軍の中に紛れ込んでいたバロックワークス社員の仕業であることなど、人々が知る由もない。
撃たれて意識が遠のきながらも、コーザは皆に伝えようとした。(戦うな・・・!!反乱軍・・・・!!!)
だがビビの声が、少年カッパの声が群集の声にかき消されて届かないのと同様、コーザの声も反乱軍に届くことはなかった。
チャカの命を犠牲にしてコーザとビビの戦争を止めようとした行為は、反乱軍の怒りに劇的な油を注ぐという皮肉な結果をもたらし、広場は一気に戦闘の場となった。
ビビは王宮から戦いを辞めるよう叫ぶが、その声は銃声と罵声にかき消されて届くことはない。
国王コブラも、始まってしまった戦闘に「ここまでか・・・!!!」と諦め、「逃げなさい!!ビビ!!!!その男から逃げるんだ!!!!」と父として娘に敗退の指示を出した。
だが、ビビは諦めない。 「まだ・・15分後の砲撃を止めれば犠牲者は減らせる!!!」
クロコダイルが呆れたように口を挟んだ。 「目ェ醒ませお姫様・・・見苦しくてかなわねェぜ、お前の理想論は。理想ってのは実力の伴う者のみ口にできる"現実"だ」
クロコダイルにその首を掴まれ、締め上げられながらビビは抵抗を続けた。
「見苦しくたってかまわない・・!!!理想だって捨てない!!!お前なんかにわかるもんか!!!私はこの国の王女よ!!!お前なんかに屈しない!!!私はこの国をーーーーー」
だが、その理想をクロコダイルは嘲笑とともに打ち砕く。
「広場への砲撃まであと15分、まだまだ反乱軍の援軍はここに集まってくる。"さっき"国王軍に広場の砲撃を知らせていたなら、何万人の命は救えたはずだ。全てを救おうなんて甘っちょろいお前の考え方が、結局、お前の大好きな国民を皆殺しにする結果を招いた。
この国の人間はどいつも笑わせてくれたぜ。2年間我が社へのスパイ活動、ご苦労だったな。お前のくだらない理想に付き合わされて、無駄な犠牲が増えただけだ・・・・教えてやろうか、お前に国は救えない。」
2年前、この国を飛び出した時から、クロコダイルの掌の中で踊らされていたなんて・・・・・。ずっと涙をこらえ続けていたビビも、この"現実"に、この"結果"に"自分の無力"に涙がこぼれた。
ビビの足元では、ビビが命を懸けてでも止めたかった国王軍と反乱軍が戦い、殺し合っていた。
もうすぐ、この人達の頭上に砲弾が撃ち込まれる・・・。何も止めることが出来ないばかりか、戦争の引き金をひき、人々が逃げる機会を奪ってしまった・・・。
ビビは、クロコダイルの手によって、国王軍と反乱軍が戦う広場の上に落とされた。
ビビの無念を、娘が殺されるのを何も出来ず見るしか出来ない父の苦悩を、国を愛する国民達を、国の崩壊を、アラバスタの全てをクロコダイルは高らかに笑いとばした。
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