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コスタリカの通知表

2009-10-11 08:04:44 | Weblog
“世界の表彰・評価”から、“指標”を定めて、“数値”で、
日本の通知表”をみたが、同じ指標で、
コスタリカの通知表”は、どうなるだろうか?

コスタリカは、コロンブスが1502年に発見した中央アメリカの国。
通貨の単位コロンに、コロンブスの名残がある。
北アメリカと南アメリカを、廊下のように結ぶ細長い国で、
北はニカラグア、南はパナマに接し、
西は太平洋、東はカリブ海に面している。

「コスタリカは、“Morning Industry”の国だった」
「コスタリカは、“平和憲法”で軍隊を持たない」
「コスタリカは、“環境保護国”で、国立公園や自然保護区は、
国土の26パーセントを占める」
これらは、コスタリカ人がコスタリカを紹介する言葉であり、誇りである。

“Morning Industry”と聞かされて、なんのことかわからなかったが、
「コーヒー、バナナ、砂糖がコスタリカの主産業で、
どれも朝食のときの食材だから、Morning Industryと呼んでいる」
と言う。
Morning Industryは辞書を引いてもないから、“朝食産業”と名づけた。

コスタリカには、純正品“ブリットBritt”がある。
コーヒー豆の栽培から収穫、豆挽(ひ)き、乾燥、
焙煎(ばいせん)、梱包まで、全ての作業をコスタリカで行って、
高品質のコーヒーを提供し、価格競争に陥ることを避けている。
純正品のコーヒーが味わえるカフェー・ブリットを、サン・ホセの街で見かける。

これは、食後のコーヒー。首都サン・ホセのレストラン。

昼食はチキン。グリルしたチキン、蒸したチキン、詰め物をしたチキン。
色、形、そして味が違ったチキンは、どれもうまかった。
チキン三昧のあとは、もちろんコスタリカ名産のコーヒー。

ウェートレスが、コーヒーを淹(い)れるセットを、
テーブルまで運んで、目の前でコーヒーを淹れる。

トレイには、木で組み立てたスタンドがあり、その下にはカップが置いてある。
スタンドの上には、コーヒーの粉がたっぷりと入ったフランネルの袋があって、
最初に少しのお湯を袋にそそいだ。そして、しばらく蒸らした。
それから、お湯を注ぐ。泡が立つと、ウェートレスは、写真のように、
スプーンでつっついて、さらに、中までねじり回した。
いい香り、アロマがただよってくる。

ドリップが終わると、フランネルの袋をスタンドから取り外して、
ねじるようにしてコーヒーを、カップに絞り出した。

さて、味は……? うまい! コスタリカ純正品の味は格別だ。
コスタリカ人は、砂糖をスプーンに3杯入れて飲んでいた。
甘いと思うが、コスタリカは砂糖の産地である。

このコーヒーを淹れるセットを、客のテーブルまで運んで、
目の前で淹れるパーフォマンスは、コスタリカ以外では経験がない。
コスタリカ純正品のコーヒーがあるからできる。

コーヒーの木は高温多湿を嫌うから、中央高地で栽培している。
東のカリブ海と西の太平洋にはさまれた海抜1,000メートルの、
中央高地が適している」
と、コスタリカ人は言う。

「コーヒーが輸出の90パーセントを占めたときがあって(1890年)、
コーヒーで経済はうるおい、コスタリカが近代化された。
中央高地の首都サンホセには、パリを見習って、
国立劇場ができ、図書館ができ、博物館、病院ができた」

「しかし、第1次世界大戦でコーヒーの輸出は激減した。
さらに、コーヒー豆の輸出価格は、1960年当時に比べて、
25パーセントまで下落してしまった。これは、
コーヒー生産国のブラジルが生産量を増やしたほかに、
ヴェトナムやインドネシアが新たに栽培国として参入したから、
コーヒー豆がダブついて、価格が下落した」

「コーヒーの木が実をつけて収穫できるまでには、3年かかる。
ほかの作物に切り替えたら、簡単に戻すことはできない。
コーヒー価格の下落によって、農家は収入が激減し、
土地を手放したり、国によってはコカインの栽培に、
走ることもあって、コーヒー生産国の政治、経済、社会問題である」

「コーヒー生産国が結束した国際コーヒー機関(ICO)が、
豆に含まれる水分量と、300グラム中の不良豆の上限を定めた、
品質水準をつくり、良質のコーヒー豆だけを輸出する決議をした。
粗悪品の輸出を防止して、値段が下がることを防止している」

「しかし、輸入業者は品質がいいコスタリカの豆と、
品質が悪いコーヒー豆をブレンドして、
味がいいコーヒーとして消費者に販売するから、
品質水準の決議は効果が薄い。それに、
日本やヨーロッパの輸入業者は品質水準の決議に縛られない」
日本のコーヒーの消費量は、アメリカ、ドイツについで世界3位である。

「コスタリカでは、気候、高地、土地に最適なアラビカ種のみの生産を、
法で定めた。さらに、コーヒー豆の栽培から梱包まで、全ての作業を、
コスタリカで行う独自ブランド、“ブリットBritt”を1980年代に作った。
高品質を確立して、価格競争におちいることを避けている」

バナナは高温多湿を好むから、カリブ海側で栽培している。
熱帯雨林に開拓したバナナのプランテーションが広がって、
1890年にはコーヒーを抜いて、輸出総額の1位になった。
コーヒーとバナナがコスタリカの経済を支えてきた」

「しかし、コーヒーもバナナも価格変動が大きい。
それで、朝食産業からの脱出をはかってきた。
パイナップルやメロン、観葉植物が輸出産業になってきた。
日本には、クリスマス用にポインセチアを輸出している」

「ほかに、朝食産業からの脱出には、半導体、医療製品が育ってきている。
アメリカの半導体会社、インテルを誘致できたことが大きい」

「それに、コスタリカは、“平和憲法”で軍隊を持たない。
軍事費を、教育費、社会福祉に回して国民の生活を向上させてきた。
時の大統領オスカー・アリアスに、ノーベル平和賞が授与された(1987年)」

「コスタリカの国土の26パーセントは、国立公園や自然保護区である。
ヒメウミガメの産卵を見ることができるし、ジャングルのツアーもある。
映画ジュラシック・パークは、コスタリカで撮影された。
自然環境を壊さないエコロジー・ツアーが盛んで、
ツアー・ガイドが、少人数でツアーをする」

“Morning Industry”で近代化をはかり、
“平和憲法”で軍隊を持たず、
“環境保護国”で、エコロジー・ツアーが盛んな、
コスタリカの通知表”をみたい。

ランク…AA=3位以内 A=10位以内 B=20位以内 C=30位以内 D=40位以内。
1)創造力: ノーベル賞の受賞者はない→ランクF。
2)芸術力: カンヌ映画祭でパルム・ドール受賞作品はない→ランクF。
3)学力:  PISA2006の15歳の知識と技能は参加せず→ランクF。
4)文化力: 文化遺産と複合遺産17はない→ランクF。
5)運動力: サッカーのランキングは39位→ランクD。
陸上競技世界記録はない→ランクF。
6)経済力: 国民総生産は82位→ランクF。
7)援助力: 政府開発援助はない→ランクF。
8)総合力: ランクF。


コスタリカのレーダーチャート(2009年10月)。

[総合評価]
残念ながら、面積のあるレーダーチャートにはならなかった。
人口が450万人で、福岡県504万人よりも少なく、
国土が日本の7分の1のコスタリカが、
各指標で高得点をあげるのは、困難である。

コスタリカ人が誇りにする、
平和憲法”で軍隊を持たない、
Morning Industry朝食産業”から半導体、医療製品への転換に注目したい。

「平和と友好の国を目指して、軍隊の廃止を盛り込んだ、
平和憲法を制定した(1949年)。
軍事費を減らして、教育や福祉、通信に回している。
教育立国をめざして、国家予算の20パーセントを教育費にあて、
要塞よりも学校を、兵士よりも学生を、警察官よりも先生を増やしている」

平和外交に徹して、国民のエネルギーを経済復興に注ぐのは、
日本と共通している。それで日本は経済大国になり、
コスタリカも同じ道を歩んでいる。

世界の国別の“軍事費”はどのくらいだろうか?
SIPRI(Stockholm International Peace Research Institute)、
ストックホルム国際平和研究所に軍事費のデータがある。

SIPRI Year Book 2009を参考にして、世界の軍事費のランキングを作成した。
あわせて、日本の軍事費を1として、各国と比較した。

アメリカが断然の1位で、シェアは41.5パーセントである。
2008年の特徴は、2007年に比べて、中国が2位に進出したことである。
フランスがイギリスをわずかに抜いて3位、イギリス4位、ロシア5位が続く。

日本は7位、463億USドル、5兆円に近い。
1989年にベルリンの壁が崩壊し、1990年に東西ドイツが統一、
1991年にソ連が崩壊して、“東西冷戦”は終了した。
戦争の脅威が薄れてから、中国を除く世界は軍事費を縮小しているが、
日本は軍事費を伸ばし続け、防衛庁を防衛省に格上げしている。

コスタリカの軍事費は119位と推定される。そして、日本との比率は0.002。
つまり、コスタリカの軍事費は、日本の軍事費の500分の1である。
平和憲法で軍隊を持たないことが、少ない軍事費に表れている。

コスタリカが国際政治の手段としての戦争を禁ずる平和憲法を持つのは、
日本も同じだが、敵国の脅威を感じたり、攻撃されたらどうするのだろう?
「いざというときには、軍隊を再整備し、国家防衛の戦争をすることができる」

「しかし、軍隊を廃止し、平和教育を徹底し、清潔で公正な選挙制度で、
政治の腐敗を防ぎ、平和外交を展開しているから、
外国から突けこまれる隙(すき)がない」
と、自信にあふれている。

ノーベル平和賞が、時の大統領オスカー・アリアスに授与された(1987年)。
これは、平和憲法制定から数10年の戦争のない平和外交の実績と、
世界への平和宣言が評価されたからである(1982年)。

コスタリカは、軍事費を日本の500分の1にして、
「教育費、社会福祉に回して国民の生活を向上させてきた」
教育費に、国家予算の20パーセントをあて、
「コスタリカを中央アメリカのシリコン・バレーに」
をスローガンに、高等教育に力を入れ、“技術立国”をめざす。
日本は教育費に、国家予算の9.5パーセントをあてている(2005年)。
これは、OECD加盟国の最下位である。

銀行で会議をすると(国民銀行Banco Popularと相互銀行Mutual Alajuela)、
出席者は仲間内でも英語で話す。いちいちスペイン語に変えないから、
会議はスムーズである。
“コスタリカは教育水準が高い”といわれているが、それを感じた。

銀行では、もうひとつ感じたことがあった。
比較的、“治安”がいいのである。
日本では当たり前のことだが、銀行の周りを囲む“鉄柵”がない。
だから、だれでも、銀行のカウンターに近づくことができる。

ほかの中南米では、銀行は高い鉄柵で囲われて、侵入を防いでいた。
腰に“銃”をつけた警備員が、顧客が来るたびに、
鉄柵の内側から、いちいち用件を聞いて、
問題がなければ、一人ずつゲートを開けていた。

コスタリカは社会福祉に国家予算の47パーセントをあてている。
まだ国民の20パーセントが貧困層にあることから、
医療制度や年金制度を整え、障害者の支援に力を入れている。

つぎに“Morning Industry朝食産業”から半導体、医療製品への転換である。
「コスタリカを、中南米のハイテク産業の集積地とする」
という大統領のスローガンのもと、
半導体のインテル社を誘致することができた。
それに、医療製品会社の誘致にも成功した。

インテルが、中南米の半導体の生産拠点として、
コスタリカを選んだのには、わけがあった。
まず、政治が安定している。そして比較的、治安がいい。
フリー・ゾーン制度という、税制の優遇措置の地域があった。
教育水準が高く、コスタリカ大学はハイテク技術者の供給基地になる。
半導体の生産に使う多量の水は、豊富な地下水があった。
それに、温暖な気候、距離的にアメリカに近いのも魅力である。それで、
インテルは、ファン・サンタ・マリア国際空港の近くに工場を建設した(1998年)。

ファン・サンタ・マリア国際空港。中央高地にあって、山に囲まれている。

首都サン・ホセの中心街、国民銀行まで16キロメートルとアクセスがいい。

「コンコルドが来るというので、見に行った。
着陸して、滑走路の端、ぎりぎりのところで、やっと停まった。
集まっていた観衆から、歓声が上がり、拍手がわき上がった」

「3,000メートル級の滑走路が1本で、
利用客が増えているので、新しい滑走路を、造ろうとしている」
と言う。

さて産業は、半導体、医療製品は輸出額の27パーセントでトップとなり、
バナナ9パーセント、コーヒー3パーセント、パイナップル3パーセント、
観葉植物1パーセント、メロン1パーセントを抜いた(2002年)。

それに、観光の収入はコーヒー、バナナの輸出額を抜いている。
温暖な気候で、アメリカに近いから、カリブ海と太平洋に面した、
ビーチのリゾートや国立公園はアメリカ人観光客でにぎわっている。

「アメリカのバスケット・ボール・プレイヤーのマイケル・ジョーダンは、
太平洋側のビーチにテニス・コート、ゴルフ・コースのリゾートを造って、
休暇を過ごしている」
と言う。

コスタリカ人は、人がよかった。そして、
Morning Industry朝食産業から脱出して、ハイテク産業に転換し、
平和憲法で軍隊をなくして、平和と友好を進め、
環境を大切にしながら、自然そのものを楽しむエコロジー・ツアーで観光客を集め、
世界から注目される国造りをしている。
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