むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

「台湾軍の歌」が出てきたNHK番組を「左翼史観」と罵倒するウヨクこそ売国奴

2009-05-10 01:34:13 | 台湾その他の話題
NHKスペシャル「アジアの”一等国”」で、ウヨクがケチをつけている問題だが、ウヨクから見たら極左に見える立場でいくらウヨクの誤りを指摘しても、一向に埒があかないので、角度を変えてみよう。番組の末尾のほうで、元日本軍兵士の台湾人のおじいさんたちが、教育勅語とともに「台湾軍の歌」を歌っているシーンについてだ。
「台湾軍の歌」をうれしそうに歌う老人たち。
柯徳三のいったことがカットされたからNHKは「媚中左翼、バランスがなく不公平」だというなら、このシーンは使うなんてありえない。本当に媚中左翼偏向なら、「台湾軍の歌」などという、80年代の台湾独立派が独立と親日の願いをこめて好んで使ったものを流さないだろう。
「台湾軍の歌」のシーンは、日本統治時代には日本に不満は多かったものの、戦後の国民党統治を経て親日になってきたという点を再確認し、バランスと公平さをとっているという意味で、きわめて重要なシーンだ。それなのに、それを素通りしてひたすら「公平ではない」と罵るウヨクは、単に「台湾軍の歌」を知らなかったに違いない。

おそらく今時のウヨクは、まともに戦前の歴史を勉強していないから、「サヨンの鐘」も見たことないんだろうし、だからこそサヨンの鐘でも挿入歌として出てくる「台湾軍の歌」も認識できなかっただけではないか?

あの名曲を知らない、認識できないレベルで、NHKに文句を言うなんて、噴飯ものだ。

私が「台湾軍の歌」のメロディを知ったのは、1988年ごろ、民主化運動でよく流れていた歌の一つがこのメロディを使ったものだったから。歌詞は、政治犯だったことがある柯旗化さんが台湾語でつけたものが最もよく使われたが、ほかの人によるバージョンもある。そういう意味では台湾ではわりとポピュラーだ。

私は末尾のほうで元日本兵士が歌っているのを見て、民主化初期のころを思い出したりして、ぐっと来るものがあった。
実際、あの歌はよくできている。日本の軍歌の中でも、名曲トップ3に入るのではないか?
(軍歌の中では、個人的には、戦中よく歌われた「海ゆかば」が一番嫌い。大伴家持の歌をわざわざ使ったのに、なんだ、あの中途半端で盛り上がりに欠け、しかも尻切れトンボな曲調は?まだあれなら歌詞はアホっぽいが「月月火水木金金」のほうが音楽的にはマシだ。それから、軍歌ではないが、「君が代」も、軍国主義がどーたら言う以前に、音楽技巧的にはあまりレベルが高くないと思う。国歌として優れているのは、1位が文句なしにソ連、2位が北朝鮮。日本と中国が一番ダメ。中国は文革のときみたいに「東方紅」を国歌にすべきだろう)

ところが、ウヨクの言い分を見ていると、「笑顔で台湾軍の歌をうたう老人」部分はすべて素通り。やっぱり、「台湾軍の歌」って知らなかったのではないか?
あの歌の来歴と今における意味を考えたら、あの歌が流れた時点で、「媚中左翼」どころか、むしろ台湾を親日だという点を再確認し、番組全体のバランスを取っているといえる。
それを素通りしているウヨクは、「愛国」を自任する右翼としては失格だし、NHK番組に噛み付く資格があると思っているのだろうが、そもそも日本人として失格だ。

大体、ウヨクは、台湾軍の歌はもちろん、いまでも警察や陸自も歌う「抜刀隊の歌」なども含めた軍歌を知らないんだろうね。
だから、北朝鮮もあんなに嫌う。しかし、北朝鮮の革命歌の多くって、実は日本の軍歌やそのアレンジだったりする。「朝鮮は一つだ」とか。日本の革命歌も「聞け万国の労働者」みたいにいかにも日本的な曲調もそのまま歌われている。速度戦のポスターのデザインや文字のスタイルは、戦時中の「一億火の玉だ」と同じものを感じる。
歌の好みや芸術スタイルというのは、かなりその人たちの心情とか風習の近さを示すもの。だとしたら戦前の軍歌やポスターデザインなどをいまだに活用している北朝鮮を、「戦前は悪くなかった」と言いたがるウヨクが嫌うのは、自己矛盾もいいところだろう。

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