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さすらうキャベツの見聞記

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『塩一トンの読書』 参

2011-03-20 21:08:50 | ひとこと*古今東西
(干上がったボリビアのウユニ塩湖。
 この下には世界の埋蔵量の半分を占めるリチウムがある…という。)


           


 「自分で読んでみる」という、私たちの側からの積極的な行為を、

書物はだまって待っている。


 現代社会に暮らす私たちは、本についての情報に接する機会には

あきれるほどめぐまれていて、だれにも「あの本のことなら知って

いる」と思う本が何冊かあるだろう。

 ところが、ある本「についての」知識を、いつのまにか「じっさいに

読んだ」経験とすりかえて、私たちは、その本を読むことよりも、

「それについての知識」をてっとり早く入手することで、お茶を

濁(にご)しすぎているのではないか。ときには、部分の抜粋だけを

読んで、全体を読んだ気になってしまうこともあって、「本」は、

ないがしろにされたままだ。

 相手を直接知らないことには、恋がはじまらないように、

本はまず、そのもの自体を読まなければ、なにもはじまらない。


            (須賀敦子『塩一トンの読書』から抜粋)



              

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