飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(奈良):橿原市木原町 耳成公園木原

2015年09月20日 | 万葉アルバム(奈良)


耳成(みみなし)の 池し恨めし 我妹子(わぎもこ)が
来つつ潜(かづ)かば 水は涸(か)れなむ     
   巻16-3788 作者未詳=


耳無の池は何と恨めしいことだろう。私の愛しい人がやって来て身を投げたら、水が涸れてほしかったものを…。という意味。

昔、三人の男がいて、それぞれが一人の女に求婚した。その女が嘆息をついて言うには、「一人の女の命のはかなさは、露と同じで、三人の男の気持ちの和らぎ難いことは岩のようだ」と。そこで遂に池のほとりを彷徨い、女は身を投げて水中に没した。その時、男たちは深い悲しみに耐えられず、それぞれに思いを述べて作った歌三首〔娘子は名を縵児(かづらこ)といった〕、そのうちの一首がこの歌。

万葉集には、複数の男子が一人の妻を争った挙句、女性が自殺してしまうという伝説が数多く残されている。この耳成の"縵児(かづらこ)伝説"の他には、"桜児(さくらこ)伝説"、"真間(まま)の手児名(てこな)伝説"などが有名。

耳成山は、大和三山の中でも一番秀麗な姿をしていて、富士山のように円錐形をしている。その西麓の木原の地に縵児伝説の池があったとされているが、今は涸れてなくなってしまったようだ。写真の池は耳成山の南麓に近世になって新しく作られた池(古池)で、伝説上の池とは異なるが現在は公園になっており、美しい耳成山の姿を映して往時を忍ばせてくれる。
 
 

 この万葉歌碑は、橿原市木原町 耳成公園の池のほとりに建つ。