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政府与党:尋常ならざる事態

2015-08-08 07:20:02 | 政治
三日前、全国調査ではないが、北海道新聞が行なった北海道内における「内閣と集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案に関する全道世論調査」の結果が発表された。

「内閣不支持58% 全道世論調査 強行採決が影響」(北海道新聞 8月5日)

それによると、
●安倍内閣を「支持しない」:58% 「支持する」:40
●安保法案について「反対」:47% 「賛成」:18
●政党支持率では
自民党:31.4%・民主党:10.1%・共産党:6.2%・新党大地:3.7%・公明党2.9%・社民党1.2%・維新の党0.5%・生活の党0.5%・支持政党はない:42.6%
だった。

政党支持率で共産党が公明党の倍に伸びているのは驚きだが、それでも自民党は依然として30%台を保っている。
だが、内閣の不支持率は最早60%に届く勢いだ。これはおそらく道内に限ったことではなく、今後また随時発表されるであろう全国調査の結果を暗示していると思われる。

自民党の支持率はさておいても、政府としてはいよいよ尋常ならざる事態となってきた。
それでも「戦争法案」の成立を狙う安倍。それを固持した上で何とか支持率を回復しようと、一方ではかなり躍起になっている。
しかし、あっちを立てればこっちが立たず状態にて右往左往。党内で混乱が続いているのは明らかだ。

さて、支持率回復、あるいはせめて下落ストップの方策はないものかと考えを巡らす。
以下、効果があるのかどうか、中には却って事態を悪くするのではと思われるものもあるが、ここのところの政府与党の動きをいくつか。


①沖縄・辺野古基地建設問題

先月10日、米軍普天間飛行場移設をめぐり仲井真弘多前知事が下した名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認について、県が設置した有識者の第三者委員会が、当時の審査に法的な不備があったと指摘する内容の報告書作成を検討していることが分かった。
次いで16日、県の第三者委員会(大城浩委員長)は「法の要件を充たしておらず、法律的瑕疵が認められる」とした報告書を翁長雄志知事に提出した。

「「埋め立て承認に不備」=沖縄第三者委が指摘へ」(時事ドットコム 7月10日)
「沖縄・基地建設 辺野古承認に瑕疵 第三者委が報告書 知事「取り消しも」」(しんぶん赤旗 7月17日)

これを受けて、翁長知事は埋め立て承認の取り消しを検討、その考えを示唆していた。

ついては今月になり、8月4日に突然、菅官房長官が辺野古移設に関する作業を10日から9月9日まで1ヶ月間中断すると発表。これは、反対姿勢を強める沖縄県の翁長知事との対立激化を回避するための対応とみられた。言い換えれば、「点数稼ぎ」とも捉えられるが、菅官房長官は「集中的に協議する」とするものの、その後の工事再開、辺野古移設についてはあくまでもそれを堅持している。
一方、翁長知事は、協議の期間中は名護市辺野古沖の埋め立て承認の取り消しを含めた判断をしないという考えを示した。しかし、翁長知事は翁長知事で「辺野古に基地を作らせない」姿勢を崩してはいない。

「辺野古移設作業を1カ月中断 政府「沖縄と集中協議」」(沖縄タイムス 8月4日)
「普天間移設 工事中断し沖縄県側と協議へ」(NHK 8月4日)
「辺野古作業1カ月中断 翁長沖縄県知事会見の全文」(沖縄タイムス 8月4日)

ただ、国民には“突然”ではあったが、これには多少のウラがあった。

「政府と沖縄県2カ月前から極秘裏調整 下地幹郎議員が仲介」(沖縄タイムス 8月5日)

>4日、菅義偉官房長官により電撃的に発表された辺野古新基地建設作業の「一時中断」だが、交渉は約2カ月前から政府、沖縄県の間で極秘裏で進められた。
>5月下旬、菅氏と当選同期で親しい下地幹郎氏(維新)の呼び掛けで菅氏、安慶田光男副知事、外務、防衛幹部の計5氏が都内で顔をそろえた。
>席上、下地氏が「普天間基地移設交渉プラン」と書かれた紙を菅氏へ差し出し、一時中断を切り出した。プランには(1)工事を停止した上で交渉期間を設置(2)政府側の窓口は菅氏とする-などが盛り込まれていた。
>菅氏は県との決定的な対立を回避するため、外務省に米側との水面下での交渉を命じた。
>関係者によると、7月4日、翁長雄志知事と菅氏が都内のホテルで会談した際に、工事を停止する時期や期間について協議。同31日、翁長氏と菅氏が首相官邸で会談し、8月10日からの一時停止で正式に合意したという。


維新の党が絡んでいるとなると、どうしても何か目論見があるのではないかと考えてしまうが、いずれ政府側は極力国民の反発を抑える方向にもって行き、柔軟姿勢を見せることで支持下落にストップをかけたいのだろう。ここは駆け引き。
政府にしてみれば菅官房長官の腕の見せ所なのだろう。だがプレッシャーも相当大きいはずだ。
一方の翁長知事はこれを受けてどう判断するのか。
この1ヶ月の間に、翁長知事側で潜水調査を行なうとしている。その結果、珊瑚への影響など、更なる環境破壊がみられれば、それを根拠に埋め立承認の取り消しに拍車がかかることにもなるだろう。


②「戦後70年談話」

注目を浴びている安倍首相の「戦後70年談話」であるが、一方で天皇が戦後70年の節目の終戦記念日である8月15日に「天皇の談話」を発表するという話がある。正式な発表はまだないが、可能性は大きいとされる。
前記事で書いたように、安倍の談話に「お詫び」が盛り込まれるかどうかは不確定的だ。また、天皇が「政治的な発言」を行うことは「厳に慎むこと」にはなってはいるが、だがもし「天皇の談話」に「お詫び」が盛り込まれていたとするなら、「お詫び」のない安倍の談話はどうなるのか。場合によっては全否定されかねない。それを見据え、官邸はかなり神経質になっていると思われる。ここでまた下手をすると、更に支持を失いかねない大事な局面だ。

ところが、7日になってまた今度は、⇒「「侵略」踏襲しない方向で調整 首相談話」(日テレNEWS24 8月7日)とのニュース。果たしてどういうつもりなのか。

>来週発表する戦後70年の首相談話について、安倍首相が過去の村山談話などに盛り込まれた「侵略」との表現を踏襲しない方向で調整していることがわかった。

余程認めたくないのだろう。こうしたことは従来から対韓国、対中国において、時に歩み寄り、時に牽制するなどして推移し、どうにも定まらないところがある。
それにしてもである。またこれでますます支持を失うことを覚悟の上で、「戦争法案」ありき、ということなのか、そうであれば到底理解が出来ない。
果たしてそれを懸念してか、昨日、公明党の山口代表が安倍首相との会談で、「戦後70年談話」に近隣諸国への「お詫び」を盛り込むよう求めたという。

「公明、70年談話おわび明記要求 首相「歴史認識継承」調整」(共同通信 8月7日)

>安倍晋三首相は7日、戦後70年談話に歴代内閣の歴史認識を全体として継承すると明記する方向で調整に入った。政府関係者が明らかにした。首相は7日夜、公明党の山口那津男代表と会談し、談話の原案を説明。山口氏は、1995年の村山富市首相談話に盛り込まれた先の大戦に関する「おわび」や「植民地支配と侵略」を70年談話に明記するよう求めた。首相は「おわび」の記述には慎重とされる。公明党の要求を受け入れるか最終判断し、14日午後の臨時閣議で決定する。
>会談には自民党の谷垣禎一幹事長、公明党の井上義久幹事長、菅義偉官房長官も出席。


昨今の事態において、公明党も兢々としている様子が窺える。


③岸田外相のマレーシア訪問

「米中韓 70年談話に関心 岸田外相歴史認識の説明に注力」(産経新聞 8月6日)

>岸田文雄外相は6日(日本時間同日)、クアラルンプール市内で米中韓3カ国とそれぞれ外相会談を行った。3カ国からは、安倍晋三首相が14日にも発表する戦後70年談話への関心が示され、日本側は、歴代内閣の歴史認識を全体として引き継いでいることを改めて説明し、理解を求めた。
>また、米国と70年談話の内容に警戒感を強める中国と韓国に対し、日本政府として今後も歴代内閣の歴史認識を全体として引き継ぐことを伝え、先の大戦の反省に基づく未来志向の関係構築に向けたメッセージになることを訴えた。


こうなると、政府内でどの程度疎通が図れているのかやや疑わしくも思うが、もとより官邸と岸田外相の間に多少の温度差があると見て取れなくはない。


④北朝鮮による拉致被害者の早期帰国

岸田外相の大きな目的はここにある。

「岸田外相、北朝鮮に速やかな報告求める」(日テレNEWS24 8月7日)

>岸田外相は6日、訪問先のマレーシアで北朝鮮の李洙ヨン(土へんに庸)外相と会談し、拉致被害者らに関する調査結果を速やかに報告するよう求めた。
>会談で北朝鮮の李外相は、拉致被害者らに関する全面的な調査について、「誠実に履行している」と説明した。これに対し岸田外相は、「調査開始から1年以上たった時点で具体的な見通しが立っていないのは、誠に遺憾だ」として、速やかに調査結果を報告するよう求めた。


出来得れば事態を急進展させて、内閣支持率の持ち直しに寄与させたい考えだ。実現すれば今最大の切り札となる。


⑤岩手県知事選

「平野達男元復興相、岩手県知事選の立候補取りやめへ」(朝日新聞 8月7日)

>岩手県知事選(9月6日投開票)に立候補を表明していた元復興相の平野達男参院議員(61、無所属)が7日、立候補を取りやめる意向を固めた。午後に岩手県庁で記者会見を開いて表明する。安全保障関連法案を進める安倍政権の支持率が下がるなか、苦戦を強いられている埼玉県知事選に続き、岩手県と平野氏辞任に伴う参院補選で3連敗しかねない事態を避けるべきだという自民党本部の意向が働いたとみられる。

負け戦に挑まないとするのも、ある意味、支持下落防止策だろう。


⑥安倍首相、9月訪中を断念か

「安倍首相が9月訪中を断念か、「敗戦国として謝罪」で支持率低下の恐れ―米メディア」(Record China 8月6日)

>4日、米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ中国語版は、日本の安倍晋三首相が9月訪中を取りやめる可能性が高いと報じた。中国を訪問すれば、「敗戦国として謝罪した」ことに怒った右派の支持者が離反し支持率低下につながる可能性があるとしている。

>9月上旬の訪中が取り沙汰されていた安倍首相だが、計画を中止する可能性が高い。安保法制の議論において、安倍首相は当初、脅威の対象として中国の名前を挙げていなかったが、7月28日の国家答弁で、尖閣近海の領海侵犯と南シナ海での活動活発化と突然中国の脅威に言及した。訪中計画を捨て、安保法制に専念する方針転換を示すものとみられる。


先頃、中国を名指しで「脅威認定」したのは確かだ。差し当たって「戦後70年談話」の問題もあり、それとの兼ね合いは大きい。もとより安倍は中国の意向に沿うような談話を出すはずも、出すつもりもない。次いでとにかく「戦争法案」の成立の行方を見定めるのが先決だとし、いずれ下手に訪中を決め、支持率を左右するより現状維持とする方が賢明だとしたのだろう。


⑦新国立競技場建設問題

「自民党の関係部会、新しい国立競技場を建設しない案も提示」(フジTV FNNニュース 8月6日)



>新しい国立競技場は建設しない案も提示している。
>建設計画が白紙となった新国立競技場について、自民党の関係部会は、既存の施設の活用や、民間の活力を生かすなどの見直しプランをまとめた。
>開会式・閉会式とサッカーなどのために、6万人規模の球技場を造り、陸上競技は駒沢競技場を改修して行う案や、新しいスタジアムの建設はせずに費用を抑える案など、いくつかの案を提示していて、民間の活力を生かすことなども盛り込まれている。
>自民党は、党内手続きを経たうえで、7日、首相に提出する予定。


「新国立競技場 民間活用で国民負担軽減を」(NHK 8月7日)

>新しい国立競技場の整備計画について、自民党は、新たな競技場を建設せず、既存の施設を改修して活用することも検討したうえで、仮に建設する場合は、費用を抑えると同時に、東京オリンピック・パラリンピックのあとの運営は、民間事業者に任せることなどを求める提言をまとめました。そして7日、自民党の稲田政務調査会長らが、総理大臣官邸を訪れ、安倍総理大臣と遠藤オリンピック・パラリンピック担当大臣に提言を提出しました。
>これに対し安倍総理大臣は、「民間の力を活用するのは重要なことだ。東京オリンピック・パラリンピックの開催に間に合わせなければならないという時間的な制約があるなかで、国民の負担が最終的に少なくなるよう努力をしなければならない」と述べました。


うまくすればかなりの点数稼ぎにはなりそうだが、一方でまた、改めて杜撰な管理体制が発覚した。

「900億円違う2つの見積もり 文科省資料で判明 情報共有も杜撰、第三者委での徹底調査困難」(産経新聞 8月7日)

>白紙に戻った新国立競技場の整備計画策定の経緯を検証する第三者委員会の初会合で7日、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が設計側と施工側の間で総工費が900億円も異なる2つの見積もりを文部科学省に報告していたことが分かった。一方、見積もりが大幅に乖離(かいり)する異常事態の解決に向け、共同歩調をとるべき文科省とJSCとのずさんな情報共有も判明、対応の鈍さが改めて浮き彫りになった。


とにかくこの期に及んで安倍も政府内もやることがグダグダ、バラバラ。
いよいよ追い詰められ、慌てるあまりに身動きが取れなくなっているとも思えるが、これで支持率回復、起死回生はどう見ても至難の業ではないだろうか。

ほか、自民党総裁選も混沌として不透明な状態であるし、また一方の与党、公明党においては、いよいよ痺れを切らせた支持母体の創価学会が反旗を翻す傾向にあり、既に数字に表れているように公明党はその支持を失いつつある。党内においても離反、造反の動きも出てきている。


さて、彼らに支持率を持ち直す方法はあるのか。

その特効薬がひとつだけある。

それは、即時「戦争法案」を自民党政府自らが撤回、廃案にすることだ。それしかもう生き延びる道はないだろう。

厚顔無恥、心臓に毛が生えている安倍の、テレビの画面の向こう側に見る顔色は、さすがに最近はどうも芳しくない。

だが何があろうともしがみつく「戦争法案」。そんな安倍晋三はどこへ行くのか・・・。


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