星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

新橋演舞場 花形歌舞伎 夜の部「伽羅先代萩」

2008-11-23 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    花形歌舞伎 夜の部
劇場     新橋演舞場
観劇日    2008年11月23日(日)
座席     1階





一、通し狂言 伽羅先代萩(めいぼくせんだい はぎ)
序幕  鎌倉花水橋の場
二幕目 足利家竹の間の場
三幕目 足利家御殿の場
同   床下の場
四幕目 問注所対決の場
大詰  控所刃傷の場



政岡:菊之助  八汐:愛之助  荒獅子男之
助:獅童
絹川谷蔵:男女蔵  足利頼兼:亀三郎  松島:吉弥
沖の井:門之助  栄御前:右之助  仁木弾正:海老蔵
細川勝元:松緑  渡辺外記左衛門:男女蔵  渡辺民部:亀三郎
山中鹿之助:宗之助  山名宗全:家橘



足利頼兼は廓通いに明け暮れ、大磯の廓からの帰りに襲われるが事なきを得る。
(「花水橋」)。
御家横領を企む首謀者の仁木弾正と妹八汐は、鶴千代の乳人政岡を陥れようと
して失敗(「竹の間」)。
政岡が鶴千代とわが子の千松のために御膳の用意を始めると、そこへ管 領山名
宗全の奥方栄御前が、鶴千代に菓子を持参して訪れる。すかさず飛び出 して菓
子を口にする毒見役の千松。苦しみもがく千松を見て、八汐は息の根を 止める
が政岡は顔色ひとつ変えない。栄御前は、政岡が鶴千代と千松を取り替 えてい
たのだと思い、政岡に連判状を預ける。ひとり残った御殿で、政岡はわ が子の
死に号泣。そこへ八汐が斬りかかってくるのを政岡は見事に仕留める が、連判
状は鼠に持ち去られてしまう(「御殿」)。
その鼠を、床下で荒獅子男之助が捕まえるも取り逃す。鼠の正体こそ実 は仁木
弾正(「床下」)。  
一方この内紛は幕府の問注所で評決を受けることになり、山名宗全の裁 きによ
り弾正方に有利になる。その危急に細川勝元が姿を現して…(「対決・ 刃傷」)。


さっき観劇を終えたばかり。
じつは私、新橋演舞場デビュー、ほやほやなんです。
マイPCが長期入院中なので、この伽羅先代萩だけでも遠征中に書いておきたくて。
思いついたまま、とりとめもない文章だけど。

この公演「花形歌舞伎」という言葉がほんとに似合う座組みだなって思う。
勢いがあって、うまさも加速中の人気役者がそろってる。
ちなみに劇場ポスターになっているのは、海老蔵さん、菊之助さん、松緑さん、
そして愛之助さんと獅童さん。この5人以外では吉弥さんも楽しみだったけれど、
夜の部では門之助さんもよかった。男女蔵さんも。

今回は「それぞれの塾の先生に習った生徒が一堂に集まったようなもの」という
意味のことを愛之助さんが雑誌インタビューで話していた。
特にこの演目は師匠の舞台の記憶が鮮明なだけに、私はかなり楽しみだった。
  仁木弾正:團十郎 → 海老蔵
  政岡:菊五郎 → 菊之助
  八汐:仁左衛門 → 愛之助
  渡辺外記左衛門:左団次 → 男女蔵  
はたしてその生徒たちは単なる型の持ち寄りだったりコピーに終わらず、さらに自
分の工夫を加え、先生とは少し違う味付けになっていた。それが面白かったんだ
なあ! 一番驚いたのは菊之助さん。藤十郎さんにも習ったんだろうか?むむ。
ストーリーに関しては今年の七月大歌舞伎の際にたっぷり書いたので、今回は
それぞれの役者さんの印象だけ、ってことで。

愛之助さんの八汐。足利家竹の間の場の第一声を花道で発した時から、一気に八汐
ペースに巻き込まれていった。存在感ありありだ。
それにしても師匠にほんとによく似ている。
顔は正面を向いているのに目の端で相手を見据えてすわっている時。
ふだんは低い声なのに突然大きく高い声を出す時。
口角を片方だけ上げる、あの憎たらしい顔まで。
愛之助さんは小気味いいほど遠慮なしに八汐を演じていた。
楽しそうにさえ見える。
そのせいか師匠よりコミカル色が濃く、私はいっぱい笑わせてもらった。
これでさらに不気味さが増したらと想像してみる。八汐はクセになる。また見たい。

海老蔵さんの仁木弾正は場面ごとにかなり印象が違う。
すっぽんから登場した時、怖さはなぜか感じなかった。
この仁木は美しく華があって、「妖」気ではなく「陽」気を感じてしまった。
それでも花道を悠々と引っ込む姿は團十郎さんにそっくり。
問注所対決の場での声音は仁左衛門さんを意識したのではと思った。
一番よかったのは問注所対決の場。外記左衛門を探す場面では客席を見渡すのが
観客としてもうれしい(笑)。鷺の見得とか特徴的な型を決める時、海老蔵さんの
大きな目が威力を発揮。登場シーンよりもこっちの顔のほうがよほど迫力がある。

菊之助さんの政岡。花道の登場シーンからひきつけられるものがある。
眉がない(笑)。もうそこからして、いつもの美しい可愛い菊ちゃんとは違う。
特に千松が殺された後、義太夫とピッタリ息の合った場面はすごい迫力で、真っ
赤な涙とともに、今日一番の胸が熱くなる場面だった。
糸に乗って語ったり、朱色の布を懐剣に見立てたりするのは、藤十郎さんの演り方
に近いのではないかと思う。菊五郎さんの政岡は違っていたと思うんだけど。
「でかしゃった」と繰り返した後、母親の心情を初めて吐露する時、「毒を食べ
てし・・・し・・・死んでくれとは」の部分を地の台詞で語ったり、観客に伝わる
方法を自分で工夫しているのかな、とも思う。
花形とか大歌舞伎とかを超えて、魅せられる役者さんの一人だと再認識した。

男女蔵さんの渡辺外記左衛門。
年齢的によぼよぼした感じは難しそうだったけど、やはり左団次さんに似ている。
特に仁木に追いかけられる場面から後、ひとさし舞って駕籠にへたり込むところ!

予想外に迫力のあった獅童さんの男之助。最後まで毅然としていた松緑さんの細川
勝元。女どうしの舌戦を盛り上げた門之助さんの沖の井もうまかった。吉弥さんは
昼の部の万野とこの松島でぐっと舞台に厚みを加えていた。

予想していたよりも大健闘の花形歌舞伎の「通し狂言 伽羅先代萩」だった。
時間がなくなったのでここまで。
あとはPCが退院してから・・・?



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12 コメント

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お疲れ様です~ (桜吹雪)
2008-11-24 13:56:13
若手花形役者での伽羅先代萩ってどんな風になるのかなぁと思っていたのですが、皆様大健闘だったようですね♪
愛ちゃんのコミカルな味のする八汐、観てみたかったなぁ。あのニヤリと笑って下がって行く場面でゾクッとしたかったです。
海老ちゃんの仁木はやはり華があったのですね。彼はマスコミでは面白おかしく書かれることが多いけれど、團十郎さんのご病気や自身の足底の怪我を経た辺りから、歌舞伎への取り組み方により凄味が増してきたように思うんですが。
で、驚いたのは菊ちゃんの政岡です!
音羽屋さんと山城屋さんの両方を観たことのあるムンパリさんの感想だけに、今回のやり方を伺ってみて、菊ちゃんは七月の藤十郎さんに影響を受けたのでしょうかねぇ?役づくりのところを是非お聞きしてみたいものですね。
5年、10年後にまた同じ座組で観てみたいですね!
では、PCちゃんが早く元気になってお手元に帰って来られることをお祈りしておりまする。
返信する
Unknown (midori)
2008-11-24 23:20:27
えぇ~~~!!!
ムンパリさん演舞場に居らしたんですか?!
(@@;
実は今日、知人のフラの発表会でヤクルトホールだったんです。
目と鼻の先じゃあないですか!!
無念…。
(--;
でもまあ、近いとこに居たということがなんか嬉しいです。
(^m^)

演舞場、結局は観られずに終わっちゃいます。
先生たちの教えを更に自分たちなりの挑戦で演じ上げていらしたとのこと。
興味深く拝見しました!
書いてくださったキャストを見比べたら、どちらも魅力的ですよね。
(*--*)
どちらも観れなかったので、ムンパリさんの感想を読み直して鑑賞することにします!
(^^;
返信する
ありがと~~! (しろう)
2008-11-25 12:53:54
ムンパリさま、お元気ですか。
わたしも結局一緒にお休みしてしまってました(笑)
でもこの舞台、きっと書いてくださると信じて待ってました♪
>単なる型の持ち寄りだったりコピーに終わらず、さらに自分の工夫を加え、先生とは少し違う味付けになっていた。
さすが人気実力兼ね備えた花形役者さんたちでうね。
師匠たちもきっとそうしてこられたのでしょう。
そうして繋がっていくところが、歌舞伎の面白さであり、
長く愛される理由なのかもしれませんね。

こちらを興味深く読ませていただいたら、ますます観たくなっちゃいました~。
どこかで放送してくれないかな。
返信する
祝デビュー! (スキップ)
2008-11-26 04:21:58
ムンパリさま

新橋演舞場デビュー、おめでとうございます(笑)。
再来年、歌舞伎座が建替え期間に入ると、
ますます通う機会が増えるかもしれませんね。

私は今月の花形歌舞伎は夜の部のみの観劇でしたが、
「伽羅先代萩」とても観応えありましたね。
菊之助さんは今回の政岡役、玉三郎さんに教えて
いただいたそうですよ。
お父様からのアドバイスが「玉三郎さんに教わりに
行きなさい」だったのですって。
なんだか“らしく”てちょっと笑っちゃいましたが、
「親子は教えずとも似るもの。あえて違う指導者に」
という音羽屋さんのお考えがあるのだとか。
返信する
さっそくありがとうございます! (ムンパリ)
2008-11-26 12:45:52
桜吹雪さん、行ってまいりました!
私は夏の松竹座と、歌舞伎座版は映像を見ただけですが、
それを継承する生徒たちの舞台がこれほどワクワクする
舞台とは知りませんでした。
そっくりでも、違うやり方でも結局は面白いんですね!
それが伝統芸能というものなんでしょうか・・・ナンテネ。

愛之助さんの八汐、初めからインパクト大で、物語の前半
を引っ張っていく大事な役を堂々と演じきっておられまし
たよ。あの顔も声も当分は忘れられないでしょうね(笑)。
返信する
ありゃま! (ムンパリ)
2008-11-26 12:46:17
midoriさん、予告もせずに遠征しちゃってごめんなさい。
あの日は朝から夜まで劇場にいましたので、どなたにも
お会いできないと思い込んでおりましたが。
そ、そ、そこはかなりお近くだったのでしょうか~~~。
midoriさんも神出鬼没、じゃなく(笑)多方面でご活躍ですね♪

私はなにぶんビギナーなのでよくはわからないのですが(汗)、
たまたま先生たちの舞台と見比べる幸運に恵まれまして、
とっても楽しめましたよ♪
何年か先にまた同じ座組で見てみたいです。
返信する
見てきましたよ♪ (ムンパリ)
2008-11-26 12:46:42
しろうさん、えへ!
おかげさまでこんなに元気です。
しろうさんもお忙しい時期なのですねー。

> そうして繋がっていくところが、歌舞伎の面白さであり、
> 長く愛される理由なのかもしれませんね。
そう思います。
ただ私にとっての<刷り込み>は仁木も八汐も、間近で
見た仁左衛門様ですからね。
あの凄みと重みは若手にはまだまだ・・・と思いました(汗)。
存在そのものから醸し出される、プラスアルファの何かが
これからどんなふうになっていくのかも、花形歌舞伎の
役者さんを見る楽しみですよね~。
放送があるといいですね!
返信する
ありがとうございます、スッキリ! (ムンパリ)
2008-11-26 12:47:25
スキップさん、恥ずかしながらデビューです(笑)。
この劇場とのおつきあいが始まったのでしょうか。

> 菊之助さんは今回の政岡役、玉三郎さんに教えて
> いただいたそうですよ。
へえぇぇぇぇ~!! そうだったのですか。
玉三郎さんの舞台は拝見したことがないですが、あの方なら
義太夫との息の合わせ方、「かわいや~」で千松を抱きかか
える感情表現等、合点がいきます。
ひゃあ、スッキリ。ありがとうございます。

>「親子は教えずとも似るもの。あえて違う指導者に」
おお、な~るほど。
翌日、お父様の三五郎を幕見して、菊五郎さんらしくて
いいなあと思ったのでした(笑)。
返信する
来年2月は。。。 (くすのき)
2008-11-27 00:04:16
大阪松竹座「二月花形歌舞伎」の演目と配役が決まりましたね。
愛之助さん、「女殺油地獄」の与兵衛、ついに、です。すっごい楽しみです。

ムンパリさんが観劇された新橋演舞場の「花形歌舞伎」といい、愛之助さんの「仁左衛門チルドレン」ぶりが気になる今日この頃です。
返信する
あらー! ()
2008-11-27 00:47:02
上京されてたんですね。
新橋演舞場デビュー、おめでとうございます♪Part2(笑)

「愛」あるところにムンパリさんアリですね♪(笑)
来年の1月も、、、来る?
返信する

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