My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

技術と経営をつないで起業しやすくする場を、日本に作る

2010-03-23 16:40:50 | 3. 起業家社会論

今日はもう記事一本書いたので、短い記事で。
Twitterで議論してるうち、書きたい気持ちを抑えられなくなった。

日本に起業家を増やす方策のひとつとして、
技術を持った人と、経営を良く知る人を結びつける場を作ってはどうか、と言う話。
実際、アメリカのビジネススクールなどは、こういう場になっている。
特にMITやスタンフォードなどは、学内に、IT、バイオテクノロジー、電池、新エネルギーなど、
技術や知識を持っている研究者がたくさんいる。
彼等が、経営が分かっているビジネススクールの教授や学生たちと結び付けられ、
起業に至っているケースがたくさんある。

私は、某大学で普通の人よりちょっと長めに大学におり、
学部ごとに分断化された大学の中の研究者をつなぐ仕事などに関わったりしていた。
だから、大学とか企業の中央研究所などには、もう少し発展させれば、起業ネタに結びつく技術や、
それを開発できる研究者がたくさんいることを知っている。

しかし彼等は、自分たちの持っている知識やスキルが、実際の製品・サービスに結びつくとは思ってないし、
ましては起業や企業経営なんてそんなに簡単に出来ると思っていない。
だから、大企業とのコラボである産学連携には多少は興味を持つ人でも、「起業」となると、えぇーって人は多い。
更には、自分たちのやってる研究が、お金儲けになる、と言うことに嫌悪感を示す人も多い。

要は、技術やスキルがあるのに、経営が分からないし、興味も無い人たちが相当数いるのだ

一方、その後、世界的にも著名なコンサルティングファームで仕事をすることになった私は、
問題解決のプロで、戦略や財務にも明るく、人を動かす情熱や力もあり、
いずれ起業したいと思っている優秀な人が、世の中に結構いることを知った。
更に彼等は、資金調達など、日本で起業する際にネックになるところも、解決するための人脈や知識も持つ。
しかし、彼等は多くの場合、起業する際のネタとなる、技術や技術者へのリーチが全く無い、または少ない。
その結果、技術とは全く関係ないところで起業したり、起業自体を諦めたりする。

このように、企業経営に必要な、相当な能力も知識も人脈もあるのに、技術へのリーチが無い、
という人たちがそれなりの数いる

もちろん、技術以外の分野での起業も可能だ。
しかし、スケールメリットが効きにくいので、得てして小規模に終わりやすい。
シリコンバレーの近年の成功例を見れば分かるとおり、技術が絡む起業は大きく発展するチャンスが大きいのである。

そして大きく成長させるには、経営を知り、スキルと人脈がある人がかむことは大切だ。
Googleだってラリー・ペイジたちだけでは、ここまで大きく成功しなかっただろう、とはよく言われる。
あくまで経営を知るエリック・シュミットがいたから、あそこまでの成功に導けたのだ。

と言うわけで、技術を知ってるのに経営には興味ない・分からない人を、
経営に興味がありよく知っているが技術をつなげられない人たちと、つなげる、というのは、
日本で起業を促進させ、成功例を増やす、ひとつの方法ではないか、と思う。
だって、明らかにギャップがあるんだもん。

で、どうやるかだが、やはり一番、科学技術研究が進み、研究者の数も多いところを狙い、
定期的に出会いの場を作ることになる。
東大とか、産総研とか、理研とか、もしくは意外と厚木とか。

ビジネススクールや大学の経営学科とコラボする。
若くて優秀な学生で、起業に興味があっても経験がなければ起業できない日本では、
経営に関する経験が多少あり、ビジネスが分かっている人と一緒に起業するのがベストなのだ。
若くて優秀な彼等は大企業からスポンサーを募る際の呼び水にもなる。

そういうところで集いを何度もやり、技術側と経営側の心理的障壁を低くし、
交流を促進して、だんだん起業話に発展させていくというのが、
私がMITのビジネスコンテストで学んだ定石だ。
セミナーと称して、起業にまつわる有名人を呼び、皆が来やすくするのも定石。

大学や、企業や独法の研究所のそばでやるのは大切だ。
どこの国でも、アカデミアにいる人は、お金儲けには興味が無いどころか、嫌う人が多い。
そんな人たちをわざわざ他所に出向かせるのは難しいからだ。

それから飲み会的インフォーマルと、セミナー的フォーマルの両方をやるのは大切だ。
企業からも人が参加しやすくなる言い訳を与えるのは重要だからだ。

こういう会をやるとなると、スポンサーを募る必要が出てくる。
MITのビジネスコンテストの場合は、ベンチャーキャピタルと法律事務所、
そして、そういうところから目が出てきた企業をいずれ買収したいともくろむ大企業だった。
理系や、経営学科のフレッシュで優秀な学生をリクルートしたい、という大企業のニーズにも合うし。
(経産省とかからお金がもらえるなら、喜んでもらいたいが)

もちろん、こんな会をやっても、起業までこぎつけるのは1,2組出てくる程度だろう。
だけど、こういうのをきっかけに、人々がつながり、人材還流の流れが出来ること、
中々外に出てこない大学の中の技術にリーチしやすくなることが重要なのだ。

何度も書いてるように、何が日本に起業家が少ない原因で、どうすれば状況を好転させられるか、
というのは、もう少し考える必要はある。
こういうのが、あくまで局所解なのは、十分分かっている。
でも、こういうNo Regret-やっても損がなく、後悔せずにすぐ出来て、
効果が多少は出てくるだろう方法は、やってしまえばよい。
で、誰かがやると待っていて出来るわけがなく、論じてるだけではなく、自分が始めるのがベストなんだろう。

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15 Comments

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同感!! (いつも読んでいます☆)
2010-03-23 16:58:48
先日、同じようなことを理系出身の知人と話しておりました!
「技術を持った人と、経営を良く知る人を結びつける場を作ってはどうか」
↑↑すごく賛成です!
私は経営学科出身で、起業はしたいけれどITとか全然分からないしなあ・・と常々思っていました。その点、理系の方はITなどの技術に詳しく、しかし経営に関しては良く分からないらしい・・。
この2者がコラボしないと、本当勿体ないですよね!世の中、役割分担です(^v^)
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是非是非おねがいします. (kentosho)
2010-03-23 17:09:03
自分にはその能力がないので誰かにやっていただきたいと思っていたことです.そして,日本の若手研究者の輪にもLilacさんに加わっていただきたいです.民主党政権になってよかったところの一つは若手の声が政界に届きやすくなったことです.内閣府の総合科学技術会議の面々と同列な席に若手研究者が並ぶなどということは従来はまったく考えられなかったことです.日本では今,科学・技術にもう一度世間の注目が集まっており,これはチャンスです.是非ともお願いいたします.
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Unknown (kobayashikoichi)
2010-03-23 17:27:30
大賛成ですね。というか、やってる大学はたくさんあるのですが、うまくいっている大学がない、というのが現状。でも、ブログで指摘されるように、述べられている手法は定石です。だから、続けられて結果が出せる環境を作る努力は大事ですし、私もお手伝いできることがあれば是非。
他のところでの成功事例もしくは失敗事例を見ると、何人かのリエゾンとして機能できる人、つまり技術も経営もどっちも一通りわかる人が必要かと。その点、Lilacさんはうってつけの人材ですね。
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ぜひぜひ (Nobuyuki Yotsuya)
2010-03-23 17:52:25
いい議論ですね。ぜひ協力したいです。
起業家としての私のキャリアは終わったのですが、こういう形で日本をよくしていく活動に参加させていただきたいです。
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これはいいヒントになりそう! (松本孝行)
2010-03-23 20:27:26
 今、友人のベンチャー社長が学生の学生による学生のための就活勉強会をしているんですけど、そういうところにいい人材を探している企業から協賛とかもらえそうな予感!

 と、学生の起業家精神がある人たちと若手ビジネスマンの集まる場所を作る必要ありそうですねぇ。がんばらねば~。
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技術者向けの経営学 (あk)
2010-03-23 21:33:58
(タイトル)を大学内で義務化にするのはどうでしょうか?また、この場合に経営学部の生徒を大量にTAとして配置。また、学ぶ分野も技術者向けの起業論に限定します。
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協力しますよ (手書きマインドマップ画家)
2010-03-23 23:46:57
非常にいいお話ありがとうございます。
常日頃から全く同じ事を考えていました。

当方Involveしている若手理系人のためのキャリアチェンジプロジェクトでは、この3年半で延べ300人程度の博士号、ポスドク、院生と情報共有を行っており、その数倍程度のゆるいネットワークがすぐ構築できる状態です。

ぜひご一緒に、アクションしませんか。

twitter ID: @shyamamo
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こういうことが (Pandy)
2010-03-24 02:16:18
当たり前の社会になれば、イノベーションをどんどん起こせるんでしょうね。

P&GのConnect&Developでも、世界中の中小企業や大学など研究機関から役立つアイデアを広っていますもんね。

私の通っているメリーランド大学でも、Technology Transferということで、エンジニアリングなどで大学が抱えてる技術を、ビジネススクールのアントレセンタを介して、生徒や卒業生、VCとつなげる努力をしています。

技術系の学科においても、自分たち学んでいる技術をいかにビジネス化するか、という点にフォーカスをあてているようですし。

間をつなぐプラットフォームもそうですが、企業側や、技術を持つ側も、それを実際にイノベーションにつなげたい、と思えるようになることが大切ですよね。

応援しています。
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二股ソケット (yumemakura)
2010-03-24 03:33:46
現今の起業事情のむずかしさを読んでまして、ふと昔の事を思い出しました。松下幸之助さんは、天井からぶら下がってる裸電球の付け根のソケットを二股にして、そこからもうひとつ電気をとれるようにしました。ホンダの本田宗一郎さんは、自転車にモーターをつけてオートバイにしました。両者とも、大ヒットとなり、その後の会社の発展の元となりました。
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コメント有難うございます (Lilac)
2010-03-24 05:49:18
皆さん応援有難うございます。
実際に企画を始めるのは日本に帰国してからとなると思いますが、応援いただけるのは大変嬉しいです。

以下一部ですがコメント返信です。

@kobayashikoichiさん
まったくそうなんですよね。
日本の大学だと、東大でも慶応でも、既に同様の試みがあるのを見ますし、早稲田や一橋などビジネススクールがあるところが試みているのも見ますね。

@Nobuyuki Yotsuyaさん、松本孝行さん
実際に起業に成功した人たちをうまく巻き込むのは重要ですね。
スキル・ノウハウだけでなく、エンジェルとしてお金も出してもらわないと(笑)。

@あKさん
まさにMITなんかがやってるのはそれです。
全員じゃないですが、MBAのなかでもアントレに興味がある人のプログラムではこれが必修になっています。

@Pandyさん
米国の大学ではやってるところがたくさんありますよね。
同時に、シリコンバレーやボストンほどに成功している事例がそこまで無い、というのも問題のひとつで、そこはよく検討したいとこです。
「実際にやってみる」というアクションと同時に、理論的な検証も大切だと思ってます。
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