日本ではTwitter利用人口が増え、米国利用者の半数に達したとか、ミクシィを越えたとかいう話も飛び交っている。
今回は、そんなTwitterを、利用者としての視点でなく、イノベーション創出の視点から見てみる。
ミクシィやFacebookのような、ネット上で他の個人とネットワークするためのサービスを、業界用語ではSNS(Social Network Service)と呼ぶ。
Twitterが他のSNSと大きく違うのは、重要なコア機能の多くが第三者によって提供されている、というところだ。
インターフェース(API)が非常にオープンなので、第三者が自由に機能を付け加えることが出来るのだ。
Twitter自身が提供している機能は、@をつけると返信出来るとか、RTを押すとRetweetできるなどといった機能しかない。
Twitterが使いやすい理由の大部分は、第三者が提供してくれる機能によるものなのだ。
例えば、URL短縮機能。
Twitterは一度につぶやける文字数が140字と制限されているため、長いURLをそのまま打ち込むとイイタイコトがつぶやけなくなってしまう。
そこでURLを短縮するサービス、というのがTwitterでもかなりコアな機能として皆に使われている。
このブログのURL http://blog.goo.ne.jp/mit_sloan は http://bit.ly/qUyw2と短くなる。
こういったサービスを提供しているのは、Bit.ly (http://bit.ly/) といった第三者企業でTwitterではない。
同様に、つぶやきに「タグ」をつける Hashtag という機能があり、タグを付けたい言葉の前に# をつけるだけで、あらゆる人の呟きをタグで管理することが出来る。
これも #Hashtags (http://hashtags.org/) という第三者企業によって提供されている。
また、Twitterを長時間利用している多くのユーザが、Twitterのホームページからではなく、
Hootsuite、TweetdeckなどのTwitterのヴューワーをつかってアクセスしている。
Twitterのホームページと異なり、自分がフォローしているつぶやきをリストごとに管理できたり、
統計機能がついていたり、携帯電話からTweetしやすい機能がついていたりなど、
こういうTwitter専用のビューワーのほうがホームページを使うより使いやすいからだ。
第三者が機能を付け加えるSNSなどはFacebookなどにもFacebook Connectなどがあるのだが、
中心的な機能を第三者に任せているのはTwitterくらいなものだ。
こういう第三者アプリ企業は、Twitterに自分達のつくったツールを無料で提供し、Twitterの豊富なユーザベースを活用して、自ら広告などで稼ぐビジネスモデルを取っている。
AppleのiPhoneアプリも同様で、このようにお互い共生関係にある企業が沢山ある状態を、ビジネス用語で「生態系」と呼んだりする。
このように
・自社のインターフェースを非常にオープンにすること
・第三者アプリ企業が稼げるようにしてあげること
によって生態系を作ることで、第三者のアイディアや技術を次々に、自社のサービスの一環であるかのように取り込むことが出来る。
まさにTwitterがやっているのは「オープンイノベーション」というやつなのだ。
さて、現在Twitterが苦しんでるのは、他のWeb企業と同様、ユーザベースは取れても、十分な収益源が余りない、ということだ。
現在は、Twitter SearchというTwitter内のつぶやきを検索できるサービスをGoogleとMicrosoftに売っているくらいで、それ以外の目だった収益源はないという状況だ。
もっと言うと、Twitterは上記のように中心的な機能を第三者に任せているため、そこをベースにした収益を得ることが出来ない、という事情がある。
例えば、上で紹介したHashtagは、タグごとに広告スポンサーをつければ更なる広告収益を得ることは可能なはずだが、
Hashtagの機能は第三者が提供してるので、Twitterはそういうことが出来ない。
URL短縮も、アフィリエート機能をくっつけて、AmazonやEBayなどに売るモデルも考えられると思うけれど、それもTwitterの機能ではないから出来ない。
「ホームページに広告」というベーシックな方法すら、多くのヘビーユーザが第三者によるTwitter Clientを使ってる状況ではあまり意味がない。
要するに、自社のインターフェースを余りにオープンにするのは、他人のアイディアを生かしたイノベーションには最適だが、自社が収益を囲い込むには不適当だ、ということだ。
実際、これが一般にオープン・イノベーションモデルの限界と言われている。
それで、Twitterは最近どういう方策に出ているかというと、第三者アプリの買収である。
先日も、上でも紹介したURL短縮のBit.ly買収を視野に入れて、VCから追加投資を受けることを発表したり。
ベンチャー側は大反対の声を上げているが、彼等も買収価格が適当であれば文句は言わないだろう。
Twitterをベースとしてやってる商売だから、Twitterに買収されること自体が問題ではないはずだ。
このように、最初はインターフェースなどもオープンにして、ベンチャーを育成し、最終的にベンチャーを立ち上げた技術者達が満足する適正な買収価格で買収する、というのはオープン・イノベーションの一つの型であるといえる。
ベンチャーサイドが「搾取された」と思わない、適正な買収価格、というのは重要だ。
よくCVC(社内ベンチャーキャピタルのこと)で話題になるように、「技術のコアな部分だけ奪って、買い叩く」とかいうことはやってはいけない。
ベンチャーの人たちの信用を失い、誰もついてこなくなるからだ。
またよくあるCVCのように「自分達は投資するだけ」というのもオープン・イノベーションとしては失敗例だろう。
Twitter然り、最初の技術のベースの開発や、ユーザベースの提供くらいはする方が良い。
その方が、自社とのシナジーもあるし、VCじゃなくCVCでやることの強みが生かされるはずだ。
(それを買収価格にどう反映させるかは技のいるとこだが)
以上。
Twitterのビジネスモデルを見ると、多くの日本企業も苦しんでるCVCのあり方、オープンイノベーションのやり方も参考になるのでは、と思って書いてみた。
まとめると、
・技術のインターフェースをオープンにし、周りのベンチャーにわらわら開発させて、ある程度設けさせることで、自社技術をプラットフォームとする生態系を構築
・最終的に、自社の大きな収益源になるようなめぼしいベンチャーは買収して取り込む
というやり方がオープン・イノベーションとして最適ではないか、と言うこと。
そして、CVCへの意味合いとしては、
・ただVCとして投資するんでなく、あくまで自社の技術をベースに発展するような(英語でEnvelop、と言うが)技術、自社が生態系の中心となれるような技術への投資を行い、オープン・イノベーションを発展させるやり方を目指すべき
・優秀なベンチャー企業の信用を勝ち得るため「技術だけ奪って、買い叩く」はやっちゃダメ
といったところか。
あ、これを機にTwitterつかおうと思った方。こちら私のアドレス。よろしく〜→http://twitter.com/Lilac_log
参考文献:HBS Case "Facebook's Platforms" 9-808-128, Jan 2010
HBS Case "Twitter" 9-709-495, Aug 2009
TechCrunch, Business Week, etc












いつも勉強させて頂いています:)
上記のTwitterに関する考察、刺激的でした。
EvanやBiz自身が当初からどれだけ狙ったかはわかりませんが、(結構焦っていたとは思いますが・・)1つのモデルを創りましたよね。
日本でこういったモデルを如何にゼロから創るのか?考えると非常にわくわくします。
@Doubles9124さん
こちらこそ、コメント有難うございます。
そうですね、彼等がそれを最初から狙ってた、というわけではなく、Bitlyなどを買収する方策でないと更なる投資をしないといわれたのかもしれませんし・・
報道だけでは分からない部分も多々あるかと思います。
ただ、こういう事例から学べることは大きいので、ケーススタディとして面白いかな、と。
オープン・イノベーションは普及レベルに達するスピードを(タダにするという形で)買うところが目的のはず。
その上で、あるレベルまで普及してきたら
・薄く広く有料化する
・広告を仕込む
というやり方が合っているかなぁ、と。
Twitter使い慣れてきたら、「場代」として月額300円払ってと言われても、喜んで払う人大半なのでは。
寄付感覚で払える程度の額にすることと、一定期間は無料で使ってもらうことがキモと思います。
>オープン・イノベーションでできた周囲のエコシステム(生態系)は多種多様なので、その一部を買収していくというやり方、出口戦略としてはあまり魅力的でないです
それを言ってしまうと、シスコやインテルなどが行っているオープンイノベーション戦略が魅力的でないと否定してしまうことになりますね。
実際には、魅力的かどうかは「他社として残して協業関係を続けていく方が長期的に自社の利益となるか」に尽きるので、一概に魅力的でないとは断定できないでしょう。
また、Twitterの有料化は困難だと私は思います。
Facebook Update、Google Buzz、Amebaなうなどへの乗り換えが簡単に起こってしまうでしょう。
複数のSNSの同時管理が出来るViewerはそれこそTwitterのおかげでメジャーになりました。
仮にTwitterが有料化すると、企業やTwitterで発信することがPRとなる一部の著名人などは有料化しても使い続け、一般の人はこういうTweetを閲覧しながら自身ではアカウントを持たず、
自分のTweetは他のツールで行うということが一般化してしまうでしょう。
実際には、Bit.lyを買収してアフィリエイト広告収入を得るとか、Hashtagsを買収して、タグ別広告収入を得る、というやり方のほうがずっとTwitter自身には将来性があると私は思います。
シスコやインテルの事例をよくわかっていないのですが、彼らは「次に来る(ビジネスになる)技術が何か」「自社の技術に結びつけることによって相乗的に生まれる価値が何か」を彼らが他の誰よりもわかっているので、買収戦略が成り立つという構図のような気がします。
Bit.lyやHashtagsを買うというのは、「Twitterだけが気付く隠された付加価値」がありそうな気がしないんですよね。あくまでも"勘"レベルの話ですが。
有料化が易しい話ではないのは確かです。ユーザーの乗り換えコストは下回らなければなりませんが、あんまり取る金額が薄すぎるとこんどは徴収コストがかかりますから。
でも、「乗り換えコスト」意外と高いと思いますよ。全く違うアカウントを取りなおしてFollowしていた対象を別のサービスで見つけ直してってのはかなり面倒くさい。そもそもFollowしていた人がそのサービスを使っていない可能性も高いですし。
それくらいなら、アカウント維持代として月額300円くらいいいよってなりそう。
ということは、一定期間というよりはFollowとFollowerの和が一定数超えた後でないとオカネは取らない、というのが大切なポイントです。
Facebook Update等のサービス使っていないので、見落としている観点があるかもしれませんが、その点はご容赦ください。
初期的に「オープン・イノベーション」として、他企業や大学、ベンチャーなどを巻き込んで開発を行い、
後になってめぼしいベンチャー企業を買収したり、大学から技術を買ったり、というExit戦略は、私はオプションの一つとして考えておくべきだと思います。
もっとも、それが最適な戦略かどうか、はケースバイケース。
買収してExitすることが多いシスコの場合でも、買収をやらないケースはもちろんあります。
インテルやシスコのケースについては、チェスブロウのオープン・ビジネスモデルやマイケル・クスマノのプラットフォームリーダーシップといった本に詳しいです。
特に、私のポイントは文中に書いたように、既に企業としてCVC(Corporate Venture Capital)を持っているようなケース。
こういうところはオープンイノベーション戦略と絡めてCVCを活用するのが一つの有益な方法だと論じてるわけです。
Bit.lyやHashtagをそれなりの高値で買っても成り立つのは、それだけのシナジーを持つTwitter社だけだと思います。
「隠された」何かがあるからではなく、単に他社にはTwitterほどのシナジーがなく、Twitter社にはそのシナジーがあるというだけのことだと思います。
>一定期間というよりはFollowとFollowerの和が一定数超えた後でないとオカネは取らない、というのが大切なポイント
これはどうでしょうね。
Follow数はともかく、Follower数は本人にはコントロールできないファクターですからね。
勝手にフォロワー数が増えていき、その分をチャージされるという論理ではユーザが怒るんじゃないかと思います。
いずれにせよ、無料ではじめたサービスの有料化で成功している例って余りないと思いますし、
Twitterの最大の競合がFacebookとGoogleであることを考えると、これらが無料なのに弱者である自分が有料化するっていうのは余りよい戦略とは思えません。
自分は、電機メーカーのR&Dで研究者をしております。技術の高度化と投資金額の増加、不確実性の増加によって、自社で多くの研究領域を扱うのが限界に近づいていると考えております。
そこで、オープンイノベーションのコーポレートベンチャーキャピタルがこの状態からの脱却のキーとなるのでは、と考えてこの記事にたどり着きました。
この分野を詳しく知るために、参考となる本があるましたら教えてください。