My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

今年成人を迎える人たちって大変な時代に生きてると思う

2011-01-10 10:17:55 | 1. グローバル化論

今日は成人式ですね。
ハタチになる人はおめでとうございます。

私が成人式を迎えた1999年に比べると、たった12年で、時代はまったく変わった、と思う。
当時は「失われた10年(Lost decade)」なんて言葉すら、まだ一般的でなかったけれど、
いまや日本の失われた日々は20年に突入しようとし、「日本破綻→IMF介入論」まで囁かれている。
中国・韓国・台湾も勢い拡大していたが、今ほどの存在感はなく、まだ日本企業が「頑張れば」過去の栄光を取り戻せそうに見えた。
国内を見渡しても、年金問題も、非正社員増大問題も、ワーキングプア問題も、当時は取りざたされることは無かった。
どれも、この12年の間に顕著になったものだ。

私が今年成人式を迎えるハタチだとしたら、どんな気持ちだろう。
正直な気持ち、自分なんかよりずっと大変な時代になってるなと思う。

1) 今の社会人に求められてる以上に、グローバルな能力が必要とされる

たとえば英語。
私がハタチのころは、英語なんて結局のところ出来なくても、一流企業に就職したり、いい就職をすることは可能な時代だった。
もちろん、世界を舞台に働くとかならば英語は不可欠だが、英語力が無くても、責任のある仕事をして、面白い人生を送ることは出来た。

しかし、これからは、企業自体がグローバルに生き残るため、大量の社員が海外に送られ、海外から採用し、果ては社内で英語を公用語としたりする企業も増える。
そうすると面白い仕事をやるためとか、人より出世するためではなく、文字通り生き残るために英語が必要となる。

対人能力もグローバルに。
単に日本人だけの環境で、日本の組織でうまく動けるってだけでは強みにならず、
世界中の色んな文化の人たちを統率し、動かしていく能力が必要になってくる。
根本にある思いやりとか、決断力は変わらなくても、リーダーシップの発揮の仕方は日本人だけの環境とは異なる。

日本は市場としてはまだ大きく、日本だけでも生き残れる産業はたくさんある。
でも、日本市場だけでは小さすぎて生き残れない産業から順に、こういう能力が必須となってきている。
たとえば、化学プラントメーカーなんて、20年以上前からグ、英語やグローバルな対人能力が必要だった。
それが、製造業とか、日本が得意とするところにまでグローバルな波がやってきたということ。
一方サービス業は、まだ日本語の壁に守られているところも多いが、5-10年のうちには、多くのがグローバル化の波に飲み込まれるだろう。

2) 就職戦線ですら、よりグローバルに戦うようになる

今年就職活動をしている1年上の先輩たちが、既に直面しているけど、
より多くの日本企業が「グローバル採用」を目指すようになるだろう。
それは今までのように、日本人中心に、日本語能力を必須として採用するのではなく、
採用される新人の半分以上が日本人以外だったり、
選考基準としても日本語以外の言語が話せること、日本以外の環境での経験があることや、
グローバルな環境でも対応できることを前提とした採用に移行していくということだ。

私の世代が就職活動したころは、採用のグローバル化なんて外資系を受けている一部の人だけ直面していた話だが、
今年ハタチの人たちは、普通に日本企業だけを受ける人も直面せざるを得なくなっている。
現に、世界展開が必須となる製造業やリテールの一部は、採用のグローバル化を開始している。
パナソニック採用の8割外国人 大学生就職深刻になる一方だ-J-CASTニュース
ローソン、ユニクロ、ヤマト運輸・・・増える外国人採用-IZA

採用だけでなく、入社した新人にも、必ず海外で研修したり、海外勤務を必須とする企業は増えていくだろう。

でもこれも結局、大きな日本市場ですら、生き残りが難しくなってきた産業から、グローバルに展開することが求められてるからだ。
お隣の韓国は市場が小さく、韓国だけでは戦えないから、大手メーカーのサムスンやLGなんか、10年以上前からこういう採用や人材育成を行っていた。

3) 今より貧富の差が進んだ格差社会になり、「普通の家庭」では、夫婦二人で働いて漸く家計を維持するのが当たり前、結果として女性の社会進出がより進むだろう。

もうこれは私の世代から始まってるけど、今ハタチの人たちはより顕著になるだろう。
夫が世帯収入の大部分を稼ぎ、家族を支える核家族モデルは、「夫婦合わせて600万円」の収入帯で崩壊しているが、今後はもっと上の収入帯でもそうなってくるだろう。

ちなみにアメリカでは「夫の収入が800万円を超えている収入帯」ですら、奥さんも働かないとカツカツだよねという意識を持つ人は多い。
この国では、医療費も日本よりずっと高く、結果として保険料なども高く、また幼稚園から始まる子供の教育費も金がかかる。
女性の社会進出が日本より進んでるのは、日本人より意識が高いからというより、
女性も働いて稼ぎを家にいれないと、ちゃんとした暮らしが出来ないので、女性が働くのが当たり前だからなのだ。

日本もきっと多かれ少なかれ、こんな風になっていくのだろうと思う。

4) 国は相変わらず頼りにならないだろう

日本企業がグローバル化が必須になり、新人を含めて世界を舞台に戦うようになり、
一方国内では、貧富の差が開いて治安が悪化しても、相変わらず国は頼りにならないだろう。

そう考えると、これからの人たちはますます、自己防衛力が必須になってくるってことだ。

企業レベルで言うと、あれだけ国を上げて法人を守っているように見えるアメリカでも、
先を行く優良企業-GoogleもGEも-国は相変わらず頼りにならないと考えている。
政府が守ってるのが、農業とか、国防とか、一部の分野だけだからだ-どこかで聞いたような話だね。

それどころか、もしかしたら進化論も信じておらず、アフリカが1つの国だと思ってるような人が、核のボタンを握るようになる(大統領になる)かもしれない国だ。
友愛どころの騒ぎではない。

今、世界的に、(一部)企業にカネ余りが生じ、政府にはお金が無いという状況が生じている。
政府が何かをしようと思っても、それを推進するための資金が枯渇しているのだ。
それどころか、財政破綻を免れようと四苦八苦している政府がいかに多いことか。
世界的に、強い資金力を持つ企業への税金を増やしている状況で、
財政破綻を目前にして法人税減税をしている日本政府は、マシなのか、頼りがいがないのか。

国の政策の利用できるところは利用するが、結局のところ、自己防衛をするしかない、というのは今以上に進む、と思っている。

こうやって、考えれば考えるほど今年ハタチの人たちにとって大変な時代が待っていると思う。
でも、大変だというのはある意味で大きなチャンスなのだ。

今の社会人とは違う能力が求められる、というのは、
努力すれば、今の社会人なんか追い抜いていけるということだ。

貧富の差が拡大して、貧困層が増えることで、貧困層向けの市場が大きくなり、
新しいビジネスが生まれるようになる-現に米国でそうなっているように。

国が頼りにならないとは、圧力をかければ規制緩和を推し進める余地があるということであり、
今までの枠組みを壊して、新しい組織やビジネスモデルを立てることが可能になる。

今の日本を立て直すにしても、日本から何か面白いものを出していくとしても、
期待がかかっているのは、私たちの世代とそれより若い世代の人たちだ。
このチャンスをものにして、羽ばたいていきましょうというのが、今年ハタチになる人たちへの私からのメッセージ。

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13 Comments

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はじめまして (andore23)
2011-01-10 11:09:17
はじめましてというか、いつもLilacさんのブログを楽しみにしてた者です。ブログの更新が再開されて本当に嬉しいです。
3日前に自分のブログでLilacさんの今日の記事と似た内容を書き、それからその記事の中でLilacさんの昔の記事を引用させて頂いたので、これはなんたる偶然と思いコメントさせてもらいました。
これからもブログ楽しみにしてます。
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Unknown (NS)
2011-01-10 14:28:12
こんにちは。

アメリカ社会のこの部分、全く同意します。産休・育休のお粗末さといったら驚きます。

女性の社会進出が日本より進んでるのは、日本人より意識が高いからというより、女性も働いて稼ぎを家にいれないと、ちゃんとした暮らしが出来ないので、女性が働くのが当たり前だからなのだ。
返信する
Unknown (@morihiko_jp)
2011-01-10 21:05:04
>ちなみにアメリカでは「夫の収入が800万円を超えている収入帯」ですら、奥さんも働かないとカツカツだよねという意識を持つ人は多い。

アメリカは地域格差が激しいと聞いています。一括りにするのはいかがものかと。
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こんにちは (yuri)
2011-01-10 22:14:30
いつもわくわくしながらブログ読ませていただいております。実は、昨年、ボストンにいたときに日本人交流会にてLilacさんの講演も聴講させていただき、とても感動しました。そのとき声をかけられず、いつお声をかけようか迷っていたところです。新年早々ブログを通してお声をかけさせていただきました。

私も最近大学を卒業したばかりですが、私はとても面白い時代に生きていると考えております。Lilacさんのおっしゃるとおり、大変な時代だけど、自分次第で大きなチャンスをつかめる時代だと思っています。

私もLilacさんのようにグローバルに自分の力で大きく羽ばたける女性になれるよう世界中を動いていきたいと思っています!
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Unknown (HW)
2011-01-10 22:30:39
Lilacさん、
同世代ですから、お互い頑張りましょう。
若い人たち、
あんまり悲観せずに、頑張りましょうね。
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ありがとうございます (Lilac)
2011-01-11 01:52:32
今日は忙しくて、今頃漸く夕ご飯を食べたところです。
もう夕食というより、夜食ですね(笑)

@andore23さん
有難うございます。ブログ拝見させていただきました。
記事を引用してくださって有難うございます。
あのシリコンバレーの記事が、そんな形でお役に立てたと知って、とても嬉しかったです。
と同時に、私もこのところ疎かになっていた自分の志に、もう一度チャレンジしなくてはと思いました。

今年がAndreさんにとって飛躍の年になりますよう。

@NSさん
コメント有難うございます。
そう、でも日本も「女も働かなくちゃ食えないのよ」という時代になれば、こういう社会インフラの整備への要求は高まり、自然と整備されるようになるのかと思います。
もっとも日本の場合「規制緩和」が鍵のように思えますけどね。

@morihiko_jpさん
確かに地域格差、激しいですよね。
日本もそうなんですが、都市部と地方都市郊外などでは全く状況が違う。
そういうところも似てますね・・・。

@yuriさん
コメント有難うございます。
そうですか、ボストンでの講演会でお会いしていたのですね。
最近、私の修士論文がついにMIT Dspaceで公開されたそうです。
あの時の講演内容がさらにパワーアップ(?)、少なくともアカデミックな形に仕上がってるので、もしよろしければご参考ください。

考えてみたら、MBAに来ているアメリカ人など、自分で金払って自分のスキルは身につけないと時代の流れに負けるから、という意識で来ている人が多かった。
そういう状況が日本でもより顕著になってくるのかもしれません。
お互い頑張りましょう!

@HWさん
そうですよね。
同世代として、頑張りましょうね!
返信する
大変だと言う不安マーケティング (hoge)
2011-01-11 08:56:48
Lilacさんの、指摘は正しいと思います。Lilacさんのエントリーを読んでいて、
徳保さんと梅田さんのこのやり取りを思いだしました。

http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050625/p1

梅田望夫さんが見ている、どこか遠い世界
http://deztec.jp/design/05/06/23_real.html
勉強のできない人から職を奪う生き方の提案
http://deztec.jp/design/05/06/25_job.html

これから日本は徐々に地盤沈下して行きますが、新成人でも、中の下の生活で生きていくことは出来るだろうと思います。
徳保さんが書いているように、「四国4県の県庁所在地を全部いえたら「賢い人」に分類されるような世界」は日本に存在します。英語なにそれって世界ですが・・。

Lilacさんのいいたいことは、正しいと思うのですが、誰向けの文章なのか書いていないので、程ほどの人生を生きれば幸せになる人をいたずらに不安にさせてしまうのだろうと思います。

新成人のメッセージとしては、
1),中流より下の生活を受け入れるのであれば、日本国内でそこそこ楽しく生きられます。
2),高給や、大きな権限が得たければ、英語必須、外国人との競争必須なので頑張れ

の二点にしたほうが良いのだろうと思います。
すべでの、新成人が茨の道を歩むとミスリードさせかねないエントリーにしないほうが良いかなって思います。

渡辺千賀さんの海外で勉強して働こう
http://www.chikawatanabe.com/blog/2009/04/future_of_japan.html

が炎上した様に、「不安を煽るマーケティング」は、あまり上手く行かない(このエントリーで発奮する人より反発を覚える人間を多く生み出してしまう)と思います。

Lilacさんは、本欄の読者層は誰だと考えますか?Lilacさんのエントリーは、適切な人にどの程度適切な形で伝わっているとお考えですか?誰に伝わって欲しいと考えていますか?
もしかしたら、學士會会報あたりに載せた方が正しいメッセージとして伝わるかも知れないですね。

この手のエントリーって、梅田さんがやって、渡辺さんがやって、いずれも炎上してしまったような気がします(分析は正しいのに反発ばかりが大きくなる)。もしかしたら、内容ではなくて、伝え方に新しい発明が必要なのかも知れませんね。
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グローバルな就職 (Yoshi)
2011-01-11 10:33:34
こんにちは。グローバルに就職活動、という点、本当に同感です。でもこれは当然のことかと思います。振り返って考えてみると、明治以降、日本人の多くは、少しでも豊かな、あるいは食える暮らしを求めて北米、南米などの海外に移民したり、北海道の開拓地に移住したりしてきましたし、商人は世界中で商売してきました。第二次大戦後、特に高度成長期以後、国内の暮らしで国民のほとんどが安心できたほうが例外かも知れないです。

英語(そして、英語プラス中国語やその他の外国語)を徹底的に学ぶ必要があるのも、これまた当然です。アフリカやアジアの途上国では、英・仏などの外国語を習得することが、ミドルクラスになるための必要最小限の第一歩ですし、歴史的には、西欧におけるラテン語教育や日本での漢文教育など、行政・法律・ビジネスで使える言語習得こそ、教育そのものでした。西欧諸語の習得のハードルが高い非西欧語圏の日本人は、学校の英語教育の良し悪しの不満を言う前に、まずもっと圧倒的に多量の努力を英語習得に注がなければいけないと思います。英語は駄目そうだ、という人は、幸い中国語やハングルは日本人にはアドバンテージがあります。英語や中国語、スペイン語などをかなり自由に使うようになれば、就職の選択肢は飛躍的に増え、日本の好不況なんてあまり心配せずとも済みます。幸い今は円高ですから、一家の、そして一族の将来のために、子供を10代から留学させたり、教育の為に一家で移住したりすることも、多くの家庭で選択肢として考慮してほしいです。駐在員の方も、子供の教育を帰国後のハンディーと捉えず、子供の語学力を伸ばし、子供に駐在先の国の一流大学などに行けるような学力と語学力をつけさせる機会と考えて欲しいですね。

詰まるところ、これからの若者、そして特に若いお父さんお母さん方には、国境や日本語に縛られない生き方をすることを前提として、お子さんを含めた一家の人生設計を練って欲しいですね。そしてそれは同時に日本人としてのアイデンティティー確立の努力をすることも意味すると思います。(長いコメントですみません) Yoshi
返信する
あけましておめでとうございます。 (Eric)
2011-01-12 03:12:08
去年は思いがけず実際お会いすることが出来て嬉しく思っています。日本に戻られてお忙しいようですが、きっとご活躍のことでしょう。ボストンは今日の夜からスノーストームが来そうです。ここの冬は長いです。

それはさておき、今回のエントリ、非常に賛成です。私が就職して数年たった頃、高齢化や金融ビッグバンがとりたざされていて、なんとなくこれから女性も男性と同等に働いて言語能力を鍛えておかなければ生き残っていけないのではと、苦手な英語を勉強するため短期留学をすることにしました。ひょんなことからアメリカに移り住むことになったのですが、あの時の「なんとなく」な感覚が、実際に必要となってきていると最近つくづく感じています。

アメリカにいると「競争」をとても身近に感じます。特に中国の成長はこれから世界の均衡を変えていくでしょう。一人間として、さまざまなスキルを身につけていかなければ今までと同じような生活を保つことは出来ないと思っています。

Lilacさんの仰るように、(体力の残ってる今であれば、)成長するチャンスはまだまだあります。自分も含め(日本だともうおばちゃんですが)、つねに教育を続け、真のグローバルな日本を作っていければと思います。
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普通の家庭 (大手町)
2011-01-16 02:41:10
遅まきながら今頃拝読しましたので感想を。

> 3) 今より貧富の差が進んだ格差社会になり、「普通の家庭」では、夫婦二人で働いて漸く家計を維持するのが当たり前、結果として女性の社会進出がより進むだろう。
> 夫が世帯収入の大部分を稼ぎ、家族を支える核家族モデルは、「夫婦合わせて600万円」の収入帯で崩壊しているが、今後はもっと上の収入帯でもそうなってくるだろう。

シンガポールの一人当たりGDPは額面で日本とほぼ同一、PPPでSGが6割増しと、日本の圧倒的敗北です。
しかし、おしなべると給料は日本の4割引になります。
この給料の差は、女性の社会進出率の高さが原因です。
SGに専業主婦は極めて少ないです。米のように中流家庭が追い詰められて専業主婦率が現象してるのではなく、専業主婦が効率的であった歴史的瞬間をすっ飛ばしてきてる印象です。女性も働きたくて働いてますし、その結果である経済的優位性を家庭の内でも(笑)外でも享受しています。彼女たちには日本の専業主婦志向の女性とかは、依存性の高いリスキー以外の何物にも見えないでしょうね。

ちなみに、PPPで更に差がつくのは、単純労働力を安価な移民で補っていることで、購買力を維持しているためです。
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