My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

電子書籍はフォーマットとアプリを制したものが勝つ

2010-05-24 13:15:58 | 2. イノベーション・技術経営

というのが、私の現在の仮説だ。
特に、電子書籍に出遅れた感のある日本の出版社が、どうやって電子書籍業界の趨勢を帰られるか、と考えると、
フォーマットとアプリ
を押さえ、圧倒的な機能を持たせて、ユーザのベースを奪うことが鍵、と私は思っている。
ちょっと大胆な仮説だし、これだけではイミフメイなので、ちゃんと解説するデス。

1. 電子書籍では、「本」はコンテンツ、フォーマット、アプリ、デバイスの4層に「モジュール化」。
今までのようにコンテンツと流通を押さえても、勝てなくなった。

そもそも、電子書籍化で何が一番大きな事件だったか。

それは、今まで、一つの物理的実体として垂直統合されていた「本」が、
コンテンツ(本の中身)、フォーマット(.pdfとか.azw)と、それを読むためのアプリ、デバイスの4層に
「モジュール化」されたことで、競争環境が全く変わってしまったことである。

この「モジュール化」によって、人々はこの4層から好きな
組み合わせを選んで、読めるようになった。
(実際にはこれに電子本屋が加わった5層のスタックが新たな競争環境となった)

例えば、今までは、文庫本を読むとしたら、570円とかで売ってる本を買ってきて、読むしかなかった。
電子書籍では、同じ内容(コンテンツ)を読むのに、例えばタダで手に入るpdfのフォーマットで、
iPad、またはPCを使い、その上で一番使いやすいアプリを使って読む、というように、各層でユーザが「選ぶ」ことが可能になった。
(註: 一部のフォーマットやアプリ、デバイスが垂直統合してるので、完全なモジュール化ではない)

 

では何が問題かと言うと、
こうなることで、出版業界で「勝つ」ための条件が変わってきたのが、おおごとなのである。
「本」に垂直統合されてた時代は、「コンテンツ」とその流通を押さえていれば、勝てた。

しかし、モジュール化−つまり水平分業されてしまったあとは、コンテンツだけ押さえても、価値がスルスルっと他のモジュールに抜けやすくなってしまったのだ

例えば、コンテンツを持っている出版社が、強いデバイスを持つAppleと不利な条件で交渉し、
Appleに価値が流れていってしまったりする。
コンテンツは重要だが、それだけ持っていても、垂直統合されていた時代ほどの価値を持たないのだ

デバイスメーカーも、仮にデバイスだけ押さえても、
MP3プレーヤーの時のように、韓国や台湾の安価なメーカーが出てきて、コモディティ化を免れないだろう。

2. コンテンツプロバイダーが評価する堅牢性の高いフォーマットと、
ユーザが評価するユーザビリティの高いアプリを有するのが、電子書籍業界を牛耳る鍵になる

このように「モジュール化」した市場で勝つためには、一般的に
1) ボトルネックになるモジュールを押さえる
2) 全体のモジュール構造を支配するための統合ルール(Design Rule)を押さえる
の二つが、鍵になる、と私は考えている。

ということを、いくつかの製造業で精細に示して一般化したのが、私の修士論文。
でも非製造業である電子書籍では論文では全く議論してないので、この議論は応用編になります)

ボトルネック、というのは「全体のシステムの中でそのモジュールの機能を上げると、全体の価値が上がる」ようなもののことである。
そこを押さえて、爆発的に発達させるのが、モジュール化した業界では業界全体に力を持つための鍵になるわけだ。

で、電子書籍業界においては、ボトルネックであり、統合ルールにもなりうるのが、
フォーマットとアプリケーションである、と私は主張しているわけである。

例えば、今電子書籍の業界でのボトルネックの一つは、著作権問題であるが、これはフォーマットで解決しうる。
つまりフォーマットは、出版社にとってのボトルネックモジュールになるのだ。
例えば、「5回までしかコピーできない」とか「一つのデバイスで使ってる間は他のデバイスで使えない」などのコピーライトに関する制御をフォーマットに埋め込むことで、問題解決が出来る。
あるいは、B&NのNookが提供しているような、「貸本機能」も、フォーマットに埋め込んで提供することが出来る。
そうすれば、著作権問題だけでなく、ユーザにとっても圧倒的に使いやすくなる。

また、フォーマットには、業界全体を牛耳って、お金が落ちる仕組みを埋め込むことも出来る。
例えば、既にClosedなフォーマット戦略でそれを狙ってるのがAmazonだ。

Amazonは独自のフォーマット.azwを使うことで、自社デバイスKindleを使ってるユーザは
確実にAmazonで買った本しか読めないように囲い込みをしている。

更に、2009年にはiPhoneやブラックベリーなどの端末で動くKindleアプリを出しており、
デバイスにはこだわらず、どんなデバイスを持っている人でも、
Kindleアプリを使えば、Amazon.comから本を買えるようになった。
つまり、それぞれのデバイスが持つ広範なユーザベースを利用しつつも、
フォーマットを押さえることで確実に、Amazon.comというマーケットプレイスにお金が落ちるようにしてるわけである。

Amazonのように確実にお金を取りもらさないようにするにはClosedなフォーマットは重要だが、
日本の出版社が今から超Closedにしても、ガラパゴスになって終わるだけなので、
最初はオープンにして攻めるのが戦術的には恐らく正しい。

このように、出版社にとってもユーザにとっても今までより価値のあるフォーマットを確立するのが、
出遅れた出版業界が、電子書籍業界での影響力を高めるのに重要だと思う。
出遅れてるので、ユーザベースを獲得するためにある程度オープンにする必要があるし、
まずは日本語というニッチなところで攻めるなど、戦術としては色々あるが、
大枠の戦略として、フォーマットを抑える、というのが重要だと思うのだ。

もう一つのボトルネックモジュールでもあり、業界を牛耳る鍵にもなるのが、電子ブックアプリだと思う。
ユーザがデバイス上で実際に電子ブックを読むためのソフトウェアのことだ。
このソフトウェアの機能やユーザビリティは、今以上に圧倒的に上げることが出来る、と思っている。

iPadのiBookという電子ブックアプリは素晴らしく、本を読んでるみたいにページをめくる機能や、
検索機能、ハイライト機能、書き込み機能など色々付いていて、読むのには便利だ。
しかし、これが電子書籍のあるべき姿か、といわれると、私はもっともっと上があると思う。
例えば、本に書き込むだけでなくTweetしたりして、他の人と書き込みを共有したり、
過去に読んだ人の書き込みを参照できたり、写真や絵をリンクしたり、他の本をリンクしたり、
今思いつくだけでも、もっと色んな機能がついていてもおかしくない、と思っている。

だから、E-bookのアプリは、今後もっと機能やユーザビリティを上げることで、
電子書籍全体のユーザエクスペリエンスを上げられると言う意味で、ボトルネックモジュールなのだ。
圧倒的な機能やユーザビリティを持つアプリを有することで、ユーザを引き寄せ、
今決まりかけている電子書籍の趨勢を、変えることが出来る力を持っている、と思っている。
と、同時に、こういう機能を業界標準に推し進めていくことで、業界全体への影響力を持たせることも出来る。

3. このアプリ・フォーマットを、金が儲かるその他の要素にロックインするのが成功の鍵

で、このアプリとフォーマット抑えて、今は無い圧倒的な機能で出版社とユーザを引き寄せるだけで成功するか、というとそうでもない。

アプリとフォーマットは、出版社とユーザをひきつけるための重要な役割を担うが、
余りお金にはならない部分だからだ。

お金に直結できるのは、コンテンツ、マーケットプレイス(本屋)、デバイスだけであり、
この3つの機能にちゃんと結びつけることで、確実にお金が落ちる仕組みを作ることが鍵である。

日本の出版社連合がやる場合は、著作権問題をクリアした独自のオープンフォーマットで、
iPadやPC、Sony LibrieやNookなど、Kindle以外の主要デバイスに対応したアプリケーションを頒布し、
Amazon以外の全ての電子書店で流通させる形を取るのが理想的だろう。
そのうちAmazonで流通させてやっても良いが、圧倒的なユーザベースを獲得し、
Amazonが.azwではないこのフォーマットを扱っても良い、と言い出すまでは、Amazonは八分とするのが良い。
こうすることで、コンテンツから確実にお金を得られるようにするのだ。

このオープンフォーマットは、現在流通しているEPUBより圧倒的に優れている必要がある。
例えばEPUBが現在対処できないコミックや図表の多い本も対応できたり、
「5回までコピーOK」のような、少し複雑なDRM(著作権コントロール)に対処出来ることが要件である。

もう一つ、手でスキャンしてPDF化を進めてるようなユーザを敵と思うのでなく、
彼等を取り込むようなフォーマットを形成することが鍵だ。
ユーザが自分で取り込んだPDFをこのフォーマットに簡単に変換することで、
DRMを付けられるが、色んなアプリの機能を使えるようになる、とかね。

出遅れた日本のデバイスメーカーが、どうやって巻き返すか、という問いは考え中。
AppleのiPadと正面衝突すると負けるので、別の方法を考えないとならない気がする。
一つはiPadのようなマルチな機能を持つデバイスではなく、電子書籍にフォーカスし、
上に書いたような圧倒的なアプリケーションで巻き返しを図ることだが、
コンテンツの品揃えがそろわないと結局負けてしまうので、出版業界を儲けさせられるようなフォーマットとともに提供するのは手だろう。

そんなわけで、出遅れた日本の企業たちが、電子書籍業界で巻き返しを図る鍵になるのは、
アプリとフォーマット−それも圧倒的に優れたやつでユーザを味方につけること−しかない、
と思ってます。

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ジャンル:
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Unknown (麻)
2010-05-24 13:37:28
 仰る点、同意です。ほぼ同様の手法(フォーマット+アプリを掌握する)でコンテンツ側が主導権を握った規格がDVDとBlu-rayだと思いますが、正しい理解でしょうか? この手法の成功の鍵は(Blu-rayの際にも問題がありましたが)コンテンツ業界全体で足並みが揃うかどうか、でしょうか。
早いっすね (Lilac)
2010-05-24 13:47:20
@麻さん
さっそくコメント有難うございます。
ちょっと違うかなと思うのが、まずDVDとBlu-rayはフォーマットだけで、コンテンツ業界を先にてこにしてユーザを集めた、って話ですよね。
また、このフォーマットって上に書いてる「ボトルネック」じゃないと思ってます。

にわとり卵とは言いますが、電子書籍の場合は、コンテンツ業界の支持だけでなく、ユーザの支持を得るのもかなり大きな鍵になる、その点で、ユーザビリティの向上につながるアプリ、というのがキラーモジュールって話です。

後もう一つ、今回強調したいのは「一度取られた業界で巻き返しを図る」場合にも、ボトルネックツールの取得は鍵になると思ってます。
電子書籍において「勝つ」とは? (丸山高弘)
2010-05-24 13:59:01
まずは、電子書籍において、1)何をもって、2)誰が誰に「勝つ」とされているのか…ちょっと不明。

どのプラットフォームが生き残るのか…ということであれば、理解できますが、出版コンテンツとフォーマットが何らかの制限があるのか…というあたりが、まだよくわからないですよね。この小説はKindleでしか読めないとか、こてはiPad(iBooks)でしか読めない…とか、そういうことが起きるのでしょうか? むしろ出版社はできるだけ多くのプラットフォームに自社コンテンツを販売できる方向に…ながれてゆくのではないか…と。

ただ…これだけは言える事ですが、電子書籍においては全文検索が可能となる「英語文献の勝ち」。全文検索の許諾を得られない「日本語文献の負け」。より多くの人類の知見が「英語」記述される流れることが、今以上に電子書籍の世界で実感できるのではないだろうか…と、思うのです。
「勝つ」とはバリューチェーンの中で最も力を持つプレーヤになることです (Lilac)
2010-05-24 14:07:29
そのバリューチェーンの一レイヤーでシェアトップになっても、十分な利益を挙げられない限り、「勝った」とはいえません。

プラットフォーム、と言う言葉も色んな意味を持つと思いますが、
アプリケーションとフォーマットの組み合わせを「プラットフォーム」と呼びたければ読んでも良いと思います。
でもプラットフォームは、決してデバイスだけのことではありませんので。

>この小説はKindleでしか読めないとか、こてはiPad(iBooks)でしか読めない…とか、そういうことが起きるのでしょうか?

そうならないように、オープンフォーマットにしろと言ってます。

個人的には英語文献も日本語文献も全て検索可能は当然で、それ以上の機能がつくような世界がやってくると思っていますよ。
それは避けられないと思ってます。
日本の出版社がやらなくても、誰かが必ずやるでしょう。
翻訳機能とかはどうでしょう? (松本孝行)
2010-05-24 14:13:29
日本語に翻訳できる機能なんかを付加すると言うのはどうでしょう?今は多くが英語の電子書籍ばかりですから、そういうものを翻訳できる機能があれば面白いかと。
今のウェブ翻訳だと弱いですから、もうちょっとバージョンアップ必要なのでしょうけれども。

個人的に電子書籍はホントにほしいです。本は邪魔ですし、ページ検索もPCの方が楽ですからね。

プラットフォームについては佐々木さんが口すっぱく言っていましたね。私もインフラは良くわからないですが、プラットフォームを掌握するというのであれば、グーグルの例があってわかりやすいです。

今後は出版社以外から電子書籍のカギを握るアプリなどが出てくるんじゃないかと考えると、結構ワクワクします♪
アプリと言ったのは (麻)
2010-05-24 15:57:01
Blu-Rayでいえば「しおり機能」やPicture-in-Pictureなど、視聴のユーザー体験を高める機能です。
厳密にいえばこれらはアプリではなく「技術仕様」で、実際にアプリを作っているのはソフト屋さんです。電子書籍の例でいえば、出版社はアプリを作るのではなく、アプリの仕様(DRMやファイル形式、本に関する評価、感想、ツイートなどの情報を読み書きできるWebAPI)を定義するという戦略もありえるかと。電子書籍アプリはボトルネックである分、その分野にコア技術を持たない出版社が自ら手掛けても失敗率は高そうと考えます。
Kindleは他のフォーマットも表示できますよ (kino)
2010-05-24 16:15:39
はじめまして。

> Amazon は独自のフォーマット.azwを使うことで、自社デバイスKindleを使ってるユーザは
> 確実にAmazonで買った本しか読めないように囲い込みをしている。

ここは事実誤認かも。
Kindleでは.azw以外にも例えば.mobiフォーマット(.azwのベースになったと言われている)の電子書籍が読めます。例えば最近私が The Pragmatic Bookshelf から買った Hello, Android(Androidアプリ開発の解説本)
http://www.pragprog.com/titles/eband3/hello-android
は mobiフォーマットも出してますが、Kindle上でazw本同様問題なく読めます。The Pragmatic Bookshelf社のWebから直接購入です。
他にもO'Reillyでも同じように mobiフォーマットで買えるものもあります。

このサイトを見ると分かるように mobi以外にも epub、pdfでも出していて、eBookとして纏められていて全てのフォーマットのファイルをダウンロードできます。どうもフォーマットに拘るというより、メジャーなあらゆるフォーマットを用意してユーザーが自由に選べるようにして、自社のサイトで直販するという戦略の会社もあるようです。
Amazonだと.azwフォーマットのみですがこのサイトのように複数のフォーマットを使えるのはメリット大きいです。
Unknown (Lilac)
2010-05-24 16:35:31
@松本孝行さん
翻訳、と言うのは確かについていたら便利な機能ですね

@麻さん
なるほど、失礼しました。
確かに出版社が直接アプリやフォーマット形成に動くと失敗するかもしれないので、仕様定義ー出来ればそれも複数の専門家との協業−が望ましいですよね。
E-bookの未来に対して、ある程度展望を持ってる複数の専門家を入れて、仕様を作るプロジェクトを作るのが望ましいように思います。
B&NのNookのようにうまく他社との協業で出来るのがベストな解ですよね

@Kinoさん
有難うございます。
Kindleが.mobi(そして.txtや.pdfも)が使えることは把握していたのですが、EPUBほどメジャーなフォーマットではないため、Amazonとしてはそれが.azwの価値を下げることにはならないと判断したのだと思います。
むしろKindleではEPUBが使えず、戦略としては.azwでの囲い込み戦略であることを強調したく、捨象してこういう書き方にしました。
でも、ご指摘有難うございます。
フォーマット論争 (TAO-TAO)
2010-05-24 16:36:23
 そのあたりの論争はPCやPDA向けの電子書籍が売られ始めた昔から、それはもう10年以上まえから、古くは、画像式かテキスト式か、テキスト方面でもPDFかT-TimeかそれともXMDF(ZBF)か、いやいやプレーンテキストかといったところですが、結局のところユーザーは使いやすければ文句はありませんし、版元は安く作れれば文句はないので、どのフォーマットが勝とかではなくそれぞれ得意な分野を受け持つような形で落ち着いています。

 顕著なのは携帯電話向けのフォーマットで、キャリアごとにそれぞれ複数のフォーマットが存在しますが、販売サイトごとにフォーマットが決まっているだけで、版元はそれぞれ好きなように出していますし、ユーザーは指定されたアプリを落として自由に使っていますので「ボトルネック」たりえません。

 というか、「ボトルネック」の意味は通じるんですが、使い方が微妙じゃないですか?(笑)
ボトルネック (Lilac)
2010-05-24 16:43:06
@TAO-TAOさん
携帯電話で電子書籍(コミック)読んでれば良かったニッチな時代と、電子書籍が主流になる今後では、状況が異なると思います。
今後は「版元が好きなように出せばよい」ではすまないだろう、という認識です。
ですので、これはボトルネックになっていくと思います。

ボトルネックは実は本来はこういう意味なんですが、もし気持ち悪く感じるようでしたら、ボトルネックを改善することで大幅な利を得られる逆転の発想、と思っていただければ幸いです。
この意味でのBottleneckの定義は、「デザインルール」で有名なBaldwin教授が今年の2月出の論文で明らかにしているほか(Harvard working Paper)
同じ意味で活用した論文としては、私が今回出版した論文が多分二つ目と思います。
私の論文は6月以降にはGoogle ScholarやD-spaceで検索可能になります。
フォーマットとアプリ (Tokushige Kobayashi @TokKoba)
2010-05-24 18:11:32
面白い考察です。
但し、「制する」「勝つ」の意味が理解できないので教えてください。

・フォーマットを制するとは多くの出版社が採用するコンテンツ配布形式を生み出すということだろうと思いますが、これは言ってみればデファクトスタンダードになりますが、デファクトスタンダードを作るという意味で良いでしょうか?

・デファクトスタンダードであるとすると、これを安心して採用してもらうためには、仕様を公開する必要があるでしょう。つまり、PDFのように、仕様を公開して誰でも使えるようにしないと普及しないです。

・主にフォーマットを処理する機能を実装したものがアプリケーションということになります。フォーマットの仕様を公開するとアプリケーションを実装するベンダが増えます。ということは供給者が増えるので、市場を押さえるのは結構大変だし、競争上、価格的にも安くなる。恐らくは無償になりがちだと思います。

・結局、フォーマットやアプリを抑える=シェアの高いものを作っても、その事業者は利益をだすことができないのではないかと思います。

・フォーマットとアプリのデファクトスタンダードができると、Amazon、Appleの垂直統合を破壊でき、オープンな市場にできるというメリットはありそうですが。
コミックの話などしておりませぬが (TAO-TAO)
2010-05-24 18:16:02
>>ボトルネック
概ね了解。

フォーマットについてですが、従来は、コミックとテキストベースのもの、版元が管理するものとプロアマ含む同人が扱うもの、重くてリッチなコンテンツを扱うものと多少プアーでも軽くハンドリングの良いモノ、特定の機器での再生を想定したものと汎用性の高いもの、それぞれ特化したフォーマットが存在します。

さて、「新しいフォーマットを作って全部取り込もうぜ」というのはわかりますが、一番わからないのは「複数のフォーマットがあることそのもの」に何か問題があるのかです。

「紙の本が全部文庫になったら出すのも買うのも楽じゃね?」といえば、たぶんそうなんだろうなぁとは思いますし、そのことだけを取り上げればそれは正論なんですけど、そうはならないであろうことは直感的に分かると思います。

とりあえず、セルシスやボイジャーがやっていることや、シャープが現在どういった展開をしているかなどをもう少し突き詰めてみるとまた別の一面が見えてくるのではないかと思います。
デファクトではないが、3−4のスタンダードだけが残る世界 (Lilac)
2010-05-24 23:07:31
@TokKobaさま
コメント有難うございます。ただ全体として、記事と他のコメントを読むと分かるんじゃないかということが多かったのですが。

>制すると勝つ
上のコメントにも書いたとおり、バリューチェーンの中で最も力を持つプレーヤになるということです。
もっと具体的に言うと、業界全体の技術やデザインの基準を決めるプレーヤーとなり、付加価値の貢献度が高いと同時に利幅も大きいということになります。

>フォーマットとアプリのデファクトスタンダードができる

フォーマットとアプリによるデファクトスタンダードを作ることに近いです。
ただこの世界のフォーマット・アプリはWinner Take Allではなく、複数のフォーマットが共存しうるとは思っていますので(下記参照)デファクトスタンダードと言うといいすぎかと思いますが、市場に残る3,4のうちの一つになる、ということだと思います。

>フォーマットやアプリを抑える=シェアの高いものを作っても、その事業者は利益をだすことができないのではないかと思います

記事文中にも書きましたが、実際に金になるのは、デバイス、マーケットプレイス、コンテンツの層ですから、これとしっかり結び付けないといけません。

@TAO-TAOさん
>コミックの話などしておりませぬ
なるほど失礼しました。

上のコメントにも書いてますが、私もこの業界がDVDなどの業界とは違い、複数フォーマットやアプリの形態が共存しうる世界だと思っています。
これもCusumanoが議論してますが、いわゆる一つの「デファクトスタンダード」だけが支配するのは
1)ネットワーク効果が強い
2)ユーザーにとってMulti-homing(同時に複数所有すること)が難しい
3)Differentiation(商品差別化)の余地が小さい
業界ですが、フォーマットもアプリも2)、3)は満たしていないからです。(3は微妙)
ただネットワーク効果は非常に強いので、最終的には恐らく世界で3,4(5個とかかもですが)のスタンダードだけが残る結果になるでしょう。
その中の一つにならないといけない、という話をしています。
それは日本という狭い島国ですら複数の標準が生き残るというレベルではないと思ってますがどうでしょ。
鍵はコンテンツですね (freedom)
2010-05-25 03:27:20
想像してみて下さい。村上春樹氏が次の作品を何で出すか。
Kindleで出せばAmazonが、iTunesで出せばAppleが勝つわけですね。あるいは新潮社か講談社で出せば、まだ紙の書籍が勝つわけです。
フォーマットやアプリは複数存在してもデバイスでなんとかすることになるでしょう。

日本の出版業界に応援の意味で書いておられるのでしょうけど、CDの現状を見ているので、彼らは電子出版には最後まで徹底抗戦するでしょう。だから黒船であるAmazonが日本語市場も切り開くことになるでしょうね。
新聞は既にネットに侵食されて購読する人が少なくなってきて、日経がマードック氏を見習ってネットの有料購読を始めたが、大方の予想に反して成功を収めつつあるから、それを見て裏切る出版社がでれば面白くはなるでしょうが、元々書籍の価格が安い日本では電子書籍が主流になるにはまだもう少し時間が必要でしょう。
いろんなものがくっついて… (yumemakura)
2010-05-25 04:28:09
私は本はねっころがって読むので従来の本でないとこまるが、電子書籍は単に従来の本の文章がそのまま載ってるのではなくいろんなものがくっついて便利で楽しく面白くなるのではないか。

あの新しい本のにおいがなくなるのは少し残念だが。電子書籍であるほうが絶対便利でよいものとそうでないものとに分かれると思うが。
利便性と利益 (Vertigo)
2010-05-25 06:29:58
電子出版は考えれば本当に様々な形態が生まれそうですね。
現時点では各業界がそれぞれ独自のプラットフォーム、フォーマットで面白いのですが、少なくとも日本の出版業界からは良案が生まれる可能性は低いですね。
http://japan.cnet.com/blog/sasaki/2010/04/14/entry_27039063/

いかにユーザーの利便性を高めるかという視点に立つのではなく、いかに自分たちの中抜きを阻止するかという視点に立っていては勝てるはずはありません。
それどころか権益を死守するあまり、日本がさらに立ち遅れるか高コスト体質のガラパゴスとなる可能性もあるのが怖い。

iPodにしてやられたSONYも権利問題がひとつの敗因だったと言われていますが、結局出版でも同じ轍を踏んでいるなと感じます。(コンテンツがプアなLIBRIeは終了し現在はReader)
日本ではビジネスモデル云々の前に電子出版を視野に入れた柔軟な権利形態(余計な利権が挟まれないようにほぼゼロベースから考えたものが好ましい)を構築しないとなかなか前に進まないような気がします。

それはともかく日本の出版形態は独自の進化をしています。
コミックフォーマットなどはニッチでプアですがそれでもマーケット規模はまだアメリカより上です。
そこにはフリーな世界が常識のWebと線引きされている、課金プラットフォームが最初から存在するという要素が大きい。

自分が注目するのは新聞です。
アメリカでは金融危機で大手新聞社も次々と廃刊、縮小に追い込まれているようですが、日本は配達制度が普及したためアメリカよりはなんとか持ちこたえているのが現状です。
ただしこのままなら縮小してくのは必至なのでまだ大きな内に次世代のプラットフォームを作る手もあるかと思います。

新聞の読みやすさに特化した専用デバイス&フォーマット。

新聞の主な読者は中堅層から年配層になってきたのでKindleのように文字を大きくする、読み上げ機能はもちろんのことインターフェースはものすごくシンプル(ただしカスタマイズによって細かな管理機能も有する)で、目に優しいなどです。
詳細機能としては記事の全文検索や動画記事、事件を時系列で閲覧できる機能、記事単位で購入、他誌との比較、クラウドで管理し記事を自由に切り貼り出来るスクラップブック、記事の共有など色々考えられます。

なぜ新聞を取り上げたのかというと
・他の書籍と読書スタイルが異なる。(定期購読など)
・ある一定の大きなマーケットを持っている。(特に日本では)
・しかし現在のビジネスモデルに破綻が生じている。
・だからといって新聞の公的な役割がなくなってもよい訳ではない。
・生き残るには利便性を向上しつつ新たなビジネスモデルを確保しなければならない。

そこで専用デバイス&フォーマットであれば無線で同時配信出来るため配達しなくてもよい。(コスト減)
あえてデバイスとフォーマットで囲うためWebへの流出もしにくい、従って不法コピーもさせにくい。
Webでは極めて難しい課金も容易になる。といったメリットがあるのではないかと考えてみました。

そういった理由から新聞社と家電メーカーの協力によって専用プラットフォームを作っても良いと思うのです。
ただし成功するにはパソコンなど普段使わないような層でもスムーズに移行できるように操作性、サイズ、重さ、グラフィック、質感、など徹底的にユーザビリティを考え抜く必要はあるかと思います。

こういう案をだすとまたガラパゴスか!と言われそうですが利益がちゃんと出るものならむしろ日本から世界に発信できるビジネスモデルとして攻勢に出られるのではないでしょうか?
成功すればMurdochにも注目されるかもしれません。

21世紀なのでもうそろそろ新聞も新しい形になっても良いと思うのです。
Unknown (裏目の鶏 @uranometree)
2010-05-25 18:46:37
修士論文がついに書き上がったのでしょうか?(そうだとしたら)お疲れ様です。

このエントリはまず、とてもわかりやすかった。それから多方面からのコメントも含めて大変面白かったです。(5つのレイヤーでの説明、僕は初見。)

「勝つ」という言葉に拘る方って(勝ち負けでシンプルに考えたいという気持ちはわかるが)、デジタル産業を見る発想が遅れていると思いました。難しくてわかりにくいと感じると、揚げ足を取りたくなるのが人間らしい(苦笑)。少なくとも、ブログ主さんはこのエントリでこの産業を「支配する」と「カネを儲ける」を明瞭に区別していると僕には理解できました。もちろんAmazonやAppleやGoogleは両方を狙っているわけで。このエントリ、「フォーマットとアプリだ
」という結論とその論拠が秀逸です。

ボトルネックというんですね。僕の専門である化学反応では「律速」(rate-limiting)といいます。化学でも本質は一緒で、律速のファクターを僕らは攻めるわけです。問題点は攻めるべき点。そこがまさにチャンスでもあるんですよね。明らかに、デバイス性能はボトルネックではないです。「デバイス価格」はどうでしょうかね。電子書籍はコンテンツが安価なのでデバイス価格は重要かもしれません。

電子書籍にソーシャル化を望むという一番新しい記事が別の意味で面白かったので、そちらにもコメントしたいです。
Unknown (Lilac)
2010-05-26 01:09:48
@freedomさん
コンテンツだけ持ってても、儲かりませんよ、発想変えないと、というのが本文の趣旨です。

さて、私はいわゆる物理的な「本」もずっと残り続けると思いますヨ。
少々重いですが、紙メディアを越えるものって実はまだどこにも生まれていませんからね。
紙を凌駕する圧倒的なユーザビリティと機能がなければ、電子書籍は本当に「本」を置き換えることはないだろうと私は実は見ています。
それは安心材料じゃなく、やるべきこととして。

@Vertigoさん
コンテンツとして、多くの人が出版社だけを論じがちですが、新聞と雑誌が鍵を握る、というのは私も全く同意見です。

これからの時代、雑誌は積極的に電子化していかないと、ハッキリ言って他のWebメディアにどんどん取り残されていくと思ってます。
まさにイノベーションのジレンマなので、大変でしょうが、これはやらないと本当に雑誌だけは無くなると私は見ています。

新聞については同意見、ただしデバイスを独立してやるのは反対です。
デバイスはMultihomingが非常に困難。
二つは買いませんよ。
全て手元のデバイスで読める状況にするのが大切。
その鍵を握るのも、フォーマットとアプリだと思います。

@UramenoToriさん
終わりました。漸く。
それでブログを書く時間を取れています。

私は、自分の属しているコミュニティで使われている言葉を自然と使ってしまうので、指摘されることで私が学ぶことも沢山あります。
発信する、というのは外部の人に理解してもらうこと。
それを達成するために、色んなレベル感の記事を書いてます。
この記事は、電子書籍業界をわかってるひとや、IT業界の経営関連の言葉を良く知ってる人向けに書いてますが、
例えばその次の記事は、そういう言葉に不慣れな人でも分かるように書いてるとか。
同じコンセプトを、いくつもの言葉で書き記そうとしています。

ボトルネックという言葉をこの意味で使ってるひとは、上のコメントにも書いていますが、まだ数少ないと思います。
ボトルネックはあくまで全体の機能における話で、価格はこの意味ではボトルネックとは呼びません。
なるほど。 (裏目の鶏 @uranometree)
2010-05-26 16:06:36
>ボトルネックはあくまで全体の機能における話で、価格はこの意味ではボトルネックとは呼びません。
なるほど、そうなんですね。価格はボトルネックとは呼ばない。ありがとうございます!
5層のそれぞれ (yrkats)
2010-06-06 13:37:27
 5層目のコンテンツですが、絶版になった古いコンテンツは、さほど売れないでしょうね。読者は、意味もなく新しい情報を欲しがっています。ですから、今後、著者が出版社を無視して、電子書籍をみずから作るようになれば、出版社は無用となります。
 4層目のフォーマットですが、ePubで決まりでしょう。他に何がありますか。特殊な組版を
必要とするのは、グラフィック雑誌、新聞、漫画、これだけです。この内、新聞は文字が主体ですから、ePubでも問題ありません。
 3層目のマーケットですが、これは価格戦争になります。技術の問題ではなく、価格です。
電子書籍をどれだけ安く販売できるかの消耗戦
になるでしょう。
 2層目のアプリですが、要するにアプリとはウェブ・ブラウザに他なりません。しかも、チープなハードで動かせるブラウザが求められます。驚異的な機能が搭載できるはずがありません。夢みたいな機能は、夢で終わるでしょう。
 1層目のデバイスですが、パソコンを越える高機能は望めず、チープなものとなるでしょう。携帯に便利で、電池が長持ちし、値段が安い、となれば、ハードはチープになるはずです。
 結局、遠い未来は見えないものの、近未来を見る限り、普通に字が読めれば上出来ということになるかと思います。


Unknown (hrs)
2010-08-21 03:15:27
いつも愛読させていただいています。ありがとうございます。

コメント欄でも何人かの方がご指摘されていますが、電子書籍の世界でも、価値の源泉はもちろん引き続き「コンテンツ」レイヤーですよね。このコンテンツは作家の能力のみで産み出される訳でなく、特に出版社の持つ編集者というプロデューサー機能が、売れるコンテンツ作りに大きく貢献しています。その意味で、出版社は引き続きキープレーヤーであり得ると思います。

問題はその出版社が、社内の紙部門とのカニバリ(紙の売り上げは現状、電子の10倍以上あります)や、そもそも、他業界プレーヤーと戦略的に対話し交渉するバックグラウンドを持ち合わせていないことで、電子書籍市場で上手くビジネススキーム構築できていない点だと思います。今後は、デバイスやマーケットプレイスレイヤーのキープレーヤー(Apple、Amazon)と如何に、自分達の主導権をなるべく持ちやすく、利幅を確保しながら、ポジショニングするか、が重要になると思います。ここが、電子書籍の考察研究しがいのある切り口かと。

また、ご指摘の「アプリ」「フォーマット」は、それ単体ですと技術的障壁も低く模倣が起きやすいため、主戦場にはならないと思います。それら要素はやはり、前述のコンテンツプロデュース能力を持ったプレーヤーとの関係性において初めて意味をなしてくると考えます。

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