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小川洋子「凍りついた香り」

2011年04月13日 | あ行の作家

 

幻冬舎文庫
2001年8月 初版発行
2006年7月 6版発行
318頁


何の前触れもなく恋人が自殺してしまった
遺書も残されておらず、自殺の理由もわからない

彼の机の引き出しで見つけたフロッピーディスクに残されていた言葉
「岩のすき間からしたたり落ちる水滴。洞窟の湿った空気」
「締め切った書庫。埃を含んだ光」
「凍ったばかりの明け方の湖」
「緩やかな曲線を描く遺髪」
「古びて色の抜けた、けれどもまだ十分に柔らかいビロード」

これらの言葉をなぞるように恋人の過去を訪ね歩く女性
恋人には自分が知らなかった図抜けた才能があったのです
その才能故苦悩に満ちていた恋人の過去
しかし、彼女は、物語の終りになってようやく恋人が穏やかな時間を過ごしていた場所を見つけることが出来たのでした
といってハッピーエンドではないのですが…


理科や数学系の描写や
主人公が、恋人の弟が自分に思いを寄せているのに気づいていたのかいなかったのか、はっきりと書き著されていないところなど
小川さんらしくて楽しんで読めました

楽しんだ、というのはストーリーが楽しいのでなく読書を楽しんだという意味です

ストーリーは
もし、自分が主人公の女性の立場だったら恋人の「裏切り」に打ちのめされて二度と立ち直れないくらい傷ついてしまうのではないかと思うくらい切なく苦しいものでした

 

 


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2 コメント

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海とこれと (latifa)
2011-04-14 09:22:52
こにさん、こんにちは。
>楽しんだ、というのはストーリーが楽しいのでなく読書を楽しんだという意味です

うっ! こういうの、すごい解ります☆

私的には「海」の方が面白かったかな~。
こにさんの「海」の方のレビューも拝見させて頂きました。
返信する
Unknown (こに)
2011-04-15 09:35:10
latifaさん

トラバ送ったのですが「海」しか反映されないみたいです(泣)
時々トラバが送れないことありますよね~
「海」は短編集でも質が高い印象でした

小川さん
外見と作品のギャップがまた良いです^^
返信する

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