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熊谷達也「荒蝦夷」

2011年04月12日 | か行の作家

 

集英社文庫
2007年12月 第1刷
解説・佐藤賢一
380頁


大和の軍勢に敢然と立ち向かった蝦夷の英雄アテルイの父親、呰麻呂(アザマロ)の活躍を描く歴史小説
アテルイが主人公の「まほろばの疾風」の前日譚と想像していましたが、かなり違うものでした

貞観地震の約100年前
8世紀後半の陸奥国
大和の東北支配拡大の拠点であった多賀城、アザマロが支配する伊治城、蝦夷同士で攻防が続く胆沢城

大和の軍勢に立ちはだかるアザマロと配下の者たち
不敵な笑いを浮かべ敵を打ち払うアザマロは魅力的である反面、非情さや残虐さもかなりのものです
非人道的な行為の描写が多く出てきますが、その時代の人間をリアルに描いているのだと思います
 
逆に、アテルイと坂上田村麻呂は、小説に彩りを加えるためにかなりの部分創作された『英雄』として描かれており、アザマロの毒々しさを和らげるような一風の爽やかさを運んでくれます
田村麻呂は学校の歴史では征夷大将軍として蝦夷地を平定した人物と教わりました
そうすると、彼は純粋な大和人と思いがちですが、そうではなく、渡来系なのです

そこには諸民族が入り乱れた当時の日本の姿があったのです

その時代からおよそ1200年が過ぎた今
大和も蝦夷も渡来人も無く
日本国民が一丸となり復興、再生を目指す時でしょう

 

 

 


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