原題 Le troisieme mensonge
訳・堀茂樹
ハヤカワepi文庫
2002年3月 発行
2014年10月 8刷
255頁
「悪童日記」に始まる三部作のうち
第二作「ふたりの証拠」に続く完結編
ベルリンの壁崩壊後
双子の兄弟の一人が子どものころの思い出の小さな町に降り立った
少年時代を思い返しながら町をさまよい、何十年も前に別れたままの兄弟をさがし求める
本作では双子は55歳になっています
時系列としては物語の続きのようですが、本作に登場する双子の過去は「悪童日記」「ふたりの証拠」のそれとは全く違います
同じ名前の登場人物はいるものの全くの別人、両親も双子の辿ってきた人生も別世界
本作が第三の嘘ならば第一、第二の嘘も存在するわけで、それは「悪童日記」「ふたりの証拠」なのです
作り話、事実ではないけれど事実であり得るような話、こうあって欲しかったという思いに従って描かれた話
著者の実体験を基に綴られた双子の物語
戦火の下で生き残るために必死だった子供時代
戦後全体主義体制の重圧下で生きる青年時代
ベルリンの壁崩壊後を生きる、人生の秋ともいえる初老の時期
望まぬまま自ら難民となってしまい、母国喪失の悲しみを胸に亡命先のフランスでフランス語で作品を発表したアゴタ・クリストフの人生と重なります
三冊、一気に読み終えました
今、力量のある作家の作品に触れることができた喜びに満たされています
アゴタ・クリストフを知るきっかけになった映画・悪童日記のお蔭でもあります
なかなか読み応えのある、今年読んだ本の中でも、1,2番に衝撃的というか、インパクトのある作品でした。
映画にならなければ知らなかった本ですし、映画のお蔭で本の世界に入りやすかったです。
あの双子君の次回作があれば是非観たいものです。