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梨木香歩「雪と珊瑚と」

2013年04月26日 | な行の作家

 

角川書店

2012年4月 初版発行

2012年11月 5版発行

319頁

 

 

シングルマザーの珊瑚、21歳

赤ん坊の雪は、ようやくお座りができるようになったばかり

貯金も底を突いてきて働かなければならないけれど、雪を預かってくれる施設が見つからず、先行きの見通しのたたない毎日に焦りを感じ始めていた

ある日、雪と散歩の途中で見つけた貼り紙

「赤ちゃん、お預かりします」

ごく普通の一軒家で危険への思惑もなくはなかったが、とりあえず呼び鈴をを押してみた

中から出て来たのは年配の女性で、まるで近所の知り合いに声をかけるように珊瑚を家に招き入れた

薮内くららと名乗った女性との出会いが珊瑚の生活に大きな変化をもたらすことになります

 

母親から愛されずに育った珊瑚は、どうしても自分の中の『欠落したもの』を忘れることが出来ません

「強くありたい、一人でも生きていける、雪を立派に育てる」

そんな珊瑚を温かく見守るくららのような人間もいれば、激しく嫌う人間もいます

光があれば影ができる

そういう部分も梨木さんは漏らさず物語に盛り込んでいます

 

 

作中に出てくるくららが作る料理の数々がどれも本当に美味しそうで「新たまねぎのスープ」くらいなら作れそうかな、なんて思いました

でも、それには大地の栄養をたっぷり取り込んだ新鮮な食材が必須なのですけどね

 

雪ちゃんは、美味しい食事の後に「幸せ」と感謝の気持ちを忘れない優しい女の子に成長するのでしょうねぇ

 

堀江敏幸さんの「なずな」とよく似た実に心地よい読後感に包まれた作品でした

 

私の誕生日は雪と同じ3月30日

ン年前のその日は雪の降るとても寒い日だったのだそうです

(^_^)

 

 


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