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皆川博子「伯林蠟人形館」

2010年08月07日 | ま行の作家
第一次大戦の敗戦からナチスが台頭するまでのドイツ・ベルリンで起きた破壊と幻想の物語

貴族として生まれるも母の再婚から家を出て職業軍人となり、果てはジゴロに成り果てたアルトゥール
ロシア貴族でありながら革命によってドイツに亡命し内戦の中でシナリオライターに憧れるナタ―リャ
貧しい家に育ち、流浪の末ナチ党員として銃弾に倒れるフーゴー
ドイツ系ユダヤ人の裕福な家庭に生まれ、差別に悩まされながらもドイツ人として戦争に参加するハインリヒ
蝋人形師として名を成すマティアス
そしてこの物語の中心人物とでもいうべき歌姫ツェツィリエ

これら六人の物語がそれぞれ微妙にリンクし、絡み合い、最後のツェツィリエの章でひとつの物語に収束します

しかし、これが年代が前後したり(巻末の解説の瀬川さんによる年表が大変参考になります)、物語の舞台が突然飛んだり、手の込んだ作りになっており頭の中で整理しなければなりません
内容も、いったいどれが真実なのかと困惑してしまう

最後の最後
「書簡」の章で全ての謎が解けた
ような
ちょっと待って
のような

そこを楽しみながら読むのが面白い

ミステリーを楽しみ、ドイツ国家と民族の歴史を学び、また戦争について考えた1冊でした

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