太極・無極

宇宙を意味する「太極・無極」のなかに、「人」は生きています。限りある「人生」を有意義に生き抜いていきたい。

(短い小説)ひさしぶりの電話

2008-03-30 14:52:55 | 読書
 ひさしぶりの電話
「父さん、おれだよ、おれ」
信雄を“父さんと”と呼ぶのは、一人息子の
勇一だけだ。
「どうした勇一。いきなり電話なんかかけて
きて」信雄は独り暮し。ひさしぶりの会話に
声も弾む。
「実は父さん、会社が倒産して生活に困って
るんだ」
「そうか。そっちでも、そんなことがあるの
か。わかった、すぐ金を送る・・しかし、勇
一、かあちゃんが死んで二年になるぞ。あの
時は、お前の住所がわからず連絡もできんか
った」
思わず、涙声になる信雄。
「ごめん、父さん。生活のメドがついたら、
線香上げに帰るから」
「え、帰るったって、勇一、お前は交通事故
で死んで、葬式も済ませたじゃないか。いっ
たい、どこから電話してるんだ?」
 通話はコトリと切れた。
コメント
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