銀の人魚の海

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エル・スール~映画、原作本

2010-02-22 | 本、雑誌
積んでおいた本、昨日夕方から時間がとれたので、
多分2時間で読める!そうだった。

帯に「南、アンダルシアの愛の残り香」とある。

ビクトル・エリセ監督が85年に撮った映画。
これは当時の妻(今は別れている?)が書いた原作で
これをエリセが脚色した。

アデライダ・ガルシア・モラレス著。
全編、詩のような、モヤのかかったような、謎めいてもいる
中編で私好みだったから、映画も好きなのだとわかった。

今頃(09年)この本がでることが嬉しい。

大きめの活字で107ページ。
全く行間がなく少女の視点のみで書かれている。

名も違う(アドリアナ)し、ここでは父の仕事は教師、
映画では医師(バイクに乗りらしくないが)父の元恋人も女優ではない。

映画では、父がひとりで元恋人の映画を見て、手紙を書くシーンが
とても残ったが、それもない。

ただ映画へ行くことは書かれていて「ジャンヌダルク」の映画を
家政婦などと見た、とあるので、そこからヒントの映画を見るシーンだったのか?

あの映画館の建物がよかった。

少女は父から9歳頃に「~何かしたいことがあったら、結婚したり子供を
持ったりするんじゃないぞ。好きな時に死ねる自由をもつためだけでもだ」

と言われる。まして食事中に(*_*)
これは普通はないでしょう(^_^)

こんな事を小さな娘に言ってしまえる父と娘の関係を想うと
ここまで本音で言える父、それを聞ける小さな少女の個の力を感じる。

9歳の娘を大人として見ている父だと思う。
う~~ん。

映画では「幸せなんて考えた事もない」というようなセリフがあるが
10代に入った少女が言ったと思う。
これが、原作の父の言葉を受けているのか?

父が自殺し元恋人からの手紙を7通読むあたりも映画ではない。
が、手紙の内容は、ほぼ映画と同じだ。
父へ、もう、ださないでほしいとあった。

ここまで、父がもう一人の女性を想っていた。
これは普通、娘である、少女にとっては衝撃だろうが
いつか、それを知るであろう、そのために父は、
こんな生き方もあるのだ、それで、あんな言い方をしたのかもしれない。

母は鬱気味になり、少女は一人。

父が教えてくれた振り子の事があとがきにある。

1945年に著者が生まれたスペインの田舎では、
弾圧が最も激しく恐怖が常にあり、人々は迷信、奇跡、悪魔の存在を
信じていた。
当時、フランコ政権による銃殺など多く人は外へも出られない
状態だからこその、この父の振り子のシーンがあるのだと
やっとわかった。

これ、何で・・と思うもの。

著者の中では、こういうでき事は日常だったわけで、
弾圧の中での祈り、儀式の1つだった。

ガルシア・マルケスの「百年の孤独」にも出ているようだ。忘れ。

南への訪問(せビリヤ)は30ページ位書かれている。
エリセが予算の関係で撮れなかったことは残念だ。

異母兄弟は娘(映画ではそう出たような)ではなく息子だったことなど。

彼女の家まで行き会えたこと。美術品の仕事をしているらしい。

異母の少年が少女に、死んだことになっている父と母の写真を見せる箇所が
もしかしたら女優のイメージにつながったのかなと・・

仮装パーティでの二人の古い写真だったので、そこからイメージ
しての女優だった、のかもしれない。

少女エストレリャ役のイシアル・ボリャンは、その後映画監督になった。
当時、スペインで女性が働くという事の難しさもあとがきにある。

著者は大学は哲学科。映画学校で脚本を専攻。
そこで出会ったエリセと知りあう。

フランコ政権末期だが、まだ弾圧があった時代。
著者は生活のために教師、女優もやったとある。

この本は81年に1か月で完成。

作家としては90年代に最も活躍し今も書いているが翻訳は
これしかないのでは?
「セイレーンたちの沈黙」「吸血鬼の倫理」「エリサの秘密」など。
訳した野谷文昭氏によれば
「~閉鎖的空間と死、謎、ミステリーと呼ぶには無理があるが
ミステリアスな~」と書いている。

このあたりが私が好きなわけだった。
日常から離れられる、多少シュール感もあると思える
他の作品も読んでみたいと思う。

読み終わり、夕食後、「エルスール」のDVDを
久し振りに途中まで見た。

振りこのシーンが、意外に早く出てくる。

スペインの地図も見たら、広いなと思い北と南では
文化、習慣なども大きく違いそうな気もした。

まだまだ、書き足りないが
読んで、映画との関連もわかり良かった1冊だった。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
全編、映画化してもらいたかったですよね。 (ヤマ)
2010-02-23 20:51:10
 映画を観たのは遠い昔のことなのに、原作を読むと、触発されるものが、たくさん湧いてくる作品ですよね。

 映画と原作の対照を興味深く読みました。
 『マルメロの陽光』を観たきりになっているエリセですが、当地では公開されなかった『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』をいつか観る機会を得たいものだと思っています。

 御案内の『ミレニアム』もこちらでは上映目処が立っていません(とほほ)。
 
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Unknown (アリエル)
2010-02-24 11:08:16
そうですね。
映像と比較しつつ読み、とても文学的な原作でした。

つけたしですが、父が9歳の少女に言った言葉をよく考えました。
あとがきに当時、スペインでは「女性の孤立」というような事が書かれていました。

カトリシズムで女は当然、家にいる時代で仕事なんてもちろん、フランコ政権もまだまだなので、そういう中で女性が生きるためには
結婚、子供など考えていたら、自分を持てなくなるよ、という極論を小さな少女に言ってしまった父ではないかと?

あの父も過去をひきずって生きていますから、
つい、後悔をするなという事での言葉かなと感じました。

小説なので、大袈裟なセリフとなってしまったのだと思います。

生き方として、以前日本人の60代の方、何かの仕事に打ち込んで、ずっと独身。
「仕事があったので、結婚など考える時間もなかった」という言葉が浮かんできます。

確かに、今も仕事(正職員)結婚、育児を
長くすることは、まず健康、環境がないとできないので当時のスペインなら、そんな言葉が出ても、あの父からだし、まあ、ありかなと後日思いました。

「10ミニッツ」も未公開ですか?
あれはオムニバスで短いですが、彼のは良かったです。
「ミレニアム」も拡大公開になればいいのですが・・
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